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作家のペン

「池波正太郎真田太平記館」

2024年1月に長野県に行った。
宿でまったりしながらあれこれと興味のあることを調べているうち、上田市に池波正太郎の記念館がある事を知った。
私は、池波正太郎=「鬼平犯科帳」で、全巻読破し中村吉右衛門のTVドラマも観たその鬼平の池波だ!と急に意気込み興味津々。
(真田太平記館、と言いつつ頭の中は鬼平でいっぱい)
長野を去る日にちょっと遠回りをして立ち寄ることにした。

お目当ては、池波正太郎の使用していた万年筆の展示。
正真正銘の作家のペンなのだ。
精巧に復元したものを置いているところが多い中で、HPに堂々と遺贈された本人の愛用品だと書いてあったので、池波との強い繋がりを感じた。

月曜定休のところが多いがここは営業しており(水曜日が休館日)、ラッキーだった。
記念館は街中にあった。車で行ったが駐車場併設ではなく、隣に大きな有料駐車場があるのでそこへ駐めた。地図を見ると上田駅から徒歩12分程度の距離で、電車を使えば街中を散歩しながら行ける。ちなみに上田駅を出たところで、記念館への道と反対側へ進むと同じくらいの距離で上田城址公園に着く。何とコンパクトロケーションなのだ、真田の城下町よ。

瓦屋根の建物が真田太平記館(自分撮影)


来館者への案内から、入り口へ。
受付で事務員さんに料金を払い、案内パンフレットを渡され、強く指示された順番で館内を進む。

最初の常設展示室のど真ん中あたり、そこに池波正太郎愛用の実物万年筆が飾られていた。
たった1本のペンに目が釘付けになる。
(撮影不可なので図録を買い、その写真を載せました。ちょっと残念。)

池波正太郎真田太平記館図録から


池波正太郎真田太平記館案内パンフレット(手前)と図録(後)

愛用の万年筆。実物。
ガラスケースの中なのに、ガン見してしまうほど存在感がある。
パンフレットや図録の写真だけでもはっきり認識できる完全特注品、彫漆の万年筆。
本物の所持品のうちの1本がここにあり。
池波が握ったかと思うと、思わず口元を押さえて脳内絶叫「おおう!本物!」
ぽってりとした軸の太さで、池波正太郎の近影写真の手からすると軸が太すぎる感もあるがふわっと握るのに良さそう。また、全体を削るように彫りが入っているので、漆の滑らかさを柔らかく手にフィットさせるように見えた。名工芸品と言っても良い逸品のようだ。

そして、横にある説明書きに目が止まった。
なんと、池波正太郎は、万年筆をこまめにお手入れしていたというのだ。
仕事を終えると、とあったので、仕事終わりの切り替え作業になっていたのか…。
他の文献などで百本単位で万年筆を所持していたことを知ったのだが、それほどあるとすれば使った後にいつかわからない次に使う時までそのままにしておいたら、ペン先でインクが詰まってしまって書けなくなるだろう。
万年筆を、仕事道具として手入れしていた、のかもしれない。
図録にもあるが、仕事の過程の進み具合で万年筆を使い分けていたという。さもあらん。
鬼平犯科帳が面白く、ほとんど一気に全巻読んだ時に、同じ巻内の各話でも微妙に空気が変わる事を感じたことが多々あった。人が書くのだからな、となんとなく思ったものだ。
もしかしたらこの万年筆で鬼平の一部分が書かれていたとしたら、どの話のどんな進み具合の時に使われたのだろうか、と勝手に陶酔する。そしてそのような瞬間を想像者に届けるためは、正にお手入れありきだと思う。

ここは写真撮影不可なので、自分の手帳にメモや展示物の簡単な描写やスケッチ(と呼べるのもではないが)を書き付けた。図録も買ったが、後から手帳を見るとその時の印象に残ったことが何なのかがよくわかる。

池波正太郎の近影から万年筆を持つ手を描き出しメモを加えた手帳のページ
書き付けた手帳のページ

他にも興味のある物(使用されていた原稿用紙、生原稿、パイプの現物など)がたくさんあったが、それはまた別の機会のnoteでまとめてみたいと思う。
そして、東京に池波正太郎記念文庫がありそこには遺愛品として何本もの万年筆が展示されているので、市販の物がないものか知りたい。

池波正太郎真田太平記館滞在メモのまとめ



不思議なことに、今まで文房具好きだというのに作家が使用した実物ペンに遭遇した記憶がない。
まさか長野に出かける前日にちょっとしたヒントをいただいて、
まさか長野県上田市の真田太平記館を知ることになり、
まさか好きな作家の実物の万年筆を見ることができるというシンプルな事実に、
まさか心躍る自分がいたとは、驚きであった。まさか、まさかの連続である。
転換する方向が良い時は、どんどん展開していく。後で、は無い。後になると展開しない。
滞在は1時間ちょっとだったが、帰る頃には心も体もすっきりしていた。
本当に楽しかった。
この良い展開を大事にしよう。



池波正太郎真田太平記館HPはこちら↓

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