先週末、夜間取引では一時日経平均先物が急落した。急落といっても前日比300円程度で大きな数字ではない。（巷に急落とか暴落とかあまりに安易に使いすぎるのでそれは好ましくないと考えているのだが、ここは敢えてこの表現で）。一旦前日比100円弱の高値をつけた後に3時間程度で400円近い下落だったのでスピード的には結構速い。材料はどうもドイツ銀行らしい。金融システム不安が払拭されない中で市場はかなり敏感になっている。

さて、このことからいくつか教訓めいたものを見つけた。
まず、この時間帯で日経平均先物が「急落」することはしばしばある。ヨーロッパ時間帯で株価下落が日本の夜間取引を直撃する。下落のスピードが速いと下落幅とともにオプション価格に大きく影響を与える。夜間取引で市場参加者が限られている中で、時に異常な動きを見せる。ボラティリティが急上昇して、ファープットの価格が高騰するのである。そうすると、どうしてもある程度防御策を講じなければいけない。防御策は基本的にプットの買いかミニの売りだが、これが後々コストとして損益の悪化を招く。多くはNY時間では下落した株価は戻ることが多く、残念なことになる。しかし、ロシアンルーレットのように最悪の事態だけは避けなければいけないと考えて、コストを支払っても早めの対策を講じるのだが、教訓としては、この時間帯はやはり無視した方が良いのかもしれない。ヨーロッパ、NYと地球を一周して日本に戻った時にどうなっているのか、それで判断した方が良いように思う。本日も日経平均は何事もなかったかのように涼しい顔をして前日の水準辺りにいる。

さて、昨夜目撃したことを書く。私が見たときには日経平均先物は前日比250円安だったのだが、オプション価格は異常な動きを見せていた。建玉の含み益数十万が含み損数十万になっていた。プットの価格は25000円当たりでは前日比+100%を超えていた。現在の独自指標のプットの価格比は700円なのでプットの価格が前日比2倍になるのは日経平均が前日比700円安程度のときだ。日経平均250円安でプットの価格が2倍！異常な動きだ。材料がドイツ銀行であったり、市場が非常に不安に陥っているということである。ところが、アットザマネーのオプションの価格は+50~60%である。これはボラティリティが急上昇するときに特徴的な動きだがアットザマネーのオプションはそれほど上昇せず、下の（外側の）プットの価格がより大きく上昇するのである。値幅ではもちろん上のプットの上昇幅が大きいのだが上昇率に注目した。株価がコロナ暴落のような下落をするとファープットの価格が馬鹿みたいに上昇する。踏み上げで限度がわからなくなるくらいに上昇すると嵐の中で右も左もわからず、何かにつかまって避難するしかない状況だ。私はこれをハレーションと呼んでいる。意味が正確かどうかはわからないが、何となくピッタリとしている。プットがハレーションを起こすプロセスはすべてを把握しているわけではないが、多分こうだということを説明する。

以前にオプションは２次元であり、価格の並びに妙味があると書いた。通常時プットの価格の並びはアットザマネーから下に行くに従って対数表示で直線的に下がる。富士山の山のように。少しへこんだり出っ張ったりという変化はあるが少しだけだ。ただ富士山と同じく裾野に行けば緩やかに水平になっていく。これは何度も説明したようにファープットの価格が下方硬直性を持っているからである。また、急激に日経平均株価が上昇したときには富士山頂が右側に動くと同じで裾野の根元が固定されたままに富士山が右に動くとイメージすると山肌の角度は緩やかになる。角度が緩やか＝ボラティリティの急上昇につながる。

ハレーションを起こすプロセスはこうだ。ボラティリティが急上昇するのだが、それは山腹が水平に限りなく近づくということを意味する。しかし、ファープットの価格はすでにIVが高く、初動ではあまり上昇しない。山腹の少しへこんでいたところから持ち上げられていく。それが先週末の25000円あたりだ。山腹が持ち上げられてその後それに引っ張られて裾野が持ち上げられる。それが始まるとハレーションの第一歩である。持ち上げられ方は縄跳びの縄のようであり、ゴムのように波を作りながら変化して行く。

これは今までオプションを観察してわかったことであり、多分このような見解を持っている人は相当な専門家でもない限りいないのではないかと思う。

このように書きながらひとつオプションの売買にアイデアが思い浮かんだ。先週末のようなハレーションの入り口では+100％のプットを売って、それより外側のプットを買うのである。買い総額≒売り総額で。ハレーションが進むならば下のプットが引っ張り上げられて、より大きく上昇するだろう。。本日のように何事もなかったかのような動きに戻るならば上昇したプットだけが元に戻るだろう。

まさしく、オプションは2次元であり、価格の並びに妙味がある。