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虎吉の毎月note  季語、春の宵に思う事

岩絵の具のひと

首をかしげて諦めと絶望のなかにいるひと

  •  岩絵の具のひとは、絵画教室を経営していた、お互いの心がはなれてしまった今はどうなのか知らないけど。

  • 幼児向けのお教室から大人になって美術を学びたい人向けの講座、美大に行きたい高校生向けの講座まで幅広く教えていた。といってもけっして収入がいいとか売り上げがいいというわけでもない。美大を目指す高校生も地方では徐々に減っていくのだろう・・・そういう見方をしていた。

シングルマザーという一種の人種、それが悪いとか良いとかそういうことではないです

  • 幼児向けのお教室で、ある時母子家庭の男の子が入ってきた。・・・子どもが絵を習いに行っている間、母親は彼氏と逢瀬を重ねているという。子どもとの会話から、この前、新お父さんに会ったんだ!と平気で言う。その度に彼はとても悲しんでいた。私は、お母様は彼氏の存在をなぜ子どもに隠すことはできないのか不思議に思っていると、いや、女の人の中には彼氏が出来たらすぐに子どもに会わせる人種がいるんだよね、という。20歳以上の人は性格は変えることができないというように、子どもに彼氏を会わせない、という選択肢は無いなのだろう。個人的な勘だけれどこの彼氏間違いなくこの母親とは結婚しない、と思った。それでもこの母親は寂しさを紛らわせる事が優先、きっと寂しくてしょうがないのだろう。肉体関係を持ってその時は気持ちよくてもそれは今だけ。未来永劫続くものではない、それをこの母親も分かっていても関係を止められないのだろう。

雑記感

  • 彼は若い頃は個展を開いていたと語っていた。もちろんそんなんでご飯を食べていけるわけでなく、次第に人に教えることで日銭を稼ぐようになって行った。若い頃に様々な美大へ挑戦したこともあり、どの美大がどんな絵を好むのか、彼は良くわかっているようだった。

 奥さんはどんな人なのか、聞いたら、驚く事を教えてくれた。付き合ってすぐに結婚したそうだ。とても楽しく、2人で佐賀のどこかの海で洋服のまま泳いでずぶ濡れで帰ったこと、美味しい食べ物をいろんなとこに行って食べに行った事、その車の中で笑い転げたこと。
 え、私、夫と付き合っている頃、恋の浦に行ったことあるよ、と言った。2人の思い出の地に近いところに私も行った事があると思うと、なんだかくすぐったい。
 でも彼と奥さんの新婚生活もすぐに破綻した。なんと統合失調症であり、小さい頃、和服を着た男のが目の前に迫ってきて気絶し、その後今の今まで時折男の子が現れるのだとういう。そのたびに、叫んだり一人でぶつぶつ言ったり、医師から処方された薬を飲まないと大変なんだそうだ。なんで統合失調症を黙っていた、奥さんにも奥さんのご両親にも厳しく迫ったという。奥さんのご両親は娘にはどんな人であろうと結婚して欲しいと思っていたからと言ったそうだ。両親もいずれ年を取る。そうすると娘の世話をしてくれる人がいない。そんな不安を覚えていた時に娘に彼氏が出来たからとても安心したのだという。
 彼の稼ぎでは、二人の男の子をを養うにはきつく、就学援助をうけていると話していた。そして、学校の事務の先生をはじめ、教員は嫌いだと話していた。保護者の足元を見、そして上から目線で話していて、心の根底では人をバカにしているように感じると言っていた。だから私のような人間が学校に勤めているという事に驚いていた。

ムサビ、油絵

  • 高校生の男の子が美大にすすみたいといって数年ぶりに絵画教室に入ってきた。最初の油絵は荒々しく、デッサンからやり直さないといけないと思ったと話していた。時が経てばそれなりに絵も完成してくる。ムサビの油絵科?はとにかくきれいで完成させてないと受からないという。なので細微まで気を遣い丁寧に絵を仕上げた。入試も2日がかりでとても体力も気力も奪われるという。彼はこの高校生が受かるとは思わなかったそうだ。途中、投げだしそうになったり、不貞腐れたり、精神もバランスを崩す事が増えて行ったそうだ。でも最後は人が変わったように絵を描き始めたと話していた。 

  • この子も母子家庭だったのにどうやってムサビの学費を捻出したのかきいてみた。それについては彼はお母様にも尋ねたことがなく、その後ちゃんとムサビに通っているとお母様が話していたのでお金には困っていないようだったと話してくれた。受験の時からおばあちゃんの話しが時々出ていたので、ひょっとしたらおばあちゃんが出してくれたのかもしれないと話していた。今みたいに、非課税世帯に私大70万の給付型奨学金もなく、毎月8万弱の給付もなかった時代の話で、お金がある所にはあるのだと改めて思ったw

  • 私は、ピカソの若い頃の自画像が好きだと言ってみた。背景の青色が好きだと話してみた。すると当時は岩絵の具で絵が描かれており、この背景の青は沢山つくられていたのだという。というかこの青色がつくりやすかったからという理由だそうだ。このピカソの絵を見る度、耳がキーンと鳴る感じがする。とても鋭い。ピカソが後世まで語り継がれる事を表した一枚だと私は思う。

  • あのとき、なぜ私は彼に身をゆだねなかったのだろうと今でも時々考える時がある。なにか、大きく決断できなかった。お互い結婚していたし、子どももいる。お互い違う県に住んでいる。だから尚更一期一会で、本当は本能のまま向き合うべきではなかったか・・・彼は多分、人生後半とても苦しかったに違いない、私以上に報われない人生、それでも奥さんと別れず、かわいい息子2人を懸命に育てていた。お子さんはもういい年、結婚だってしていておかしくない。でも支援学級のお子さんだったから、どうだろう・・・尚更自立は難しいかもしれない。でもあのまま二人ともむさぼり合うように体を重ねても、多分、何も変わらない。いずれフェードアウトしていくような気がする。人を愛するとはどんなことだろうか、この時期になると時々ふと考えてしまう。

こころの電波届いてますか 
罪びとたちの ハートステーション
神様だけが知っている
I miss you

ハートステーション 宇多田

#虎吉の毎月note

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