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ジャパレゲ

ジャパレゲ。
それは、日本で発展したレゲエ音楽を意味し、ジャパニーズレゲエを略した言葉らしい。(参照Wikipedia)

この言葉を知ったのは中2の時であった。
お昼休みの時間帯。
私は個室トイレに籠っていた。(余談だが、和式トイレを愛用していた)
トイレでリラックスタイムを過ごしていたところ、
一軍女子の集団が入ってきた。
私と同じクラスの2年6組の生徒、隣のクラスの5組、4組の生徒で構成された
わりと大きなグループであった。
そのグループの中には、性格が優しい子もいたのだが、
たまたまその時は、嫌いなメンバーしかおらず、私は個室から出れなかったため、彼女たちの会話を盗み聞きすることに決めた。

鏡の前を占領し、ペチャクチャとお喋りを始めた。
5組の社長の孫を名乗る生徒がこういった。
「R子が今朝、LINEグループで送ってくれた曲めちゃくちゃ良かった~!」
6組の生徒がこう返す。
「やろ?『ジャパレゲ』って調べたらああいう曲いっぱい出てくるから
調べてみて~」
4組のヤンキーにも真面目にもなり切れない中途半端な子が出遅れて
「私も聞いた。めちゃくちゃ良かった~
R子曲探すのうますぎ」
こう言った。

個室で息を潜めていた私は、『ジャパレゲ』という聞きなれない言葉と薄っぺらい会話にゾワゾワした。
何て息苦しい会話をしているんだろう。
対等であるはずの友達なのに、なぜ1人の子を持ち上げているんだろう。
この会話文からは読み取れない独特の雰囲気があったのである。
私は、どこのグループにも所属しておらず、友人関係については
自由な学生であったため、余計にこの雰囲気を窮屈に感じた。

彼女たちはその学生生活を望んでいたのだろうと思うし、
否定する気はさらさらない。
だけど、だけれども
グループの中で、立場の優劣は間違いなく存在していて、
『ジャパレゲ』というジャンルを知っているだけで
おだてなければならない。
彼女たちには信頼できる友達はいたのだろうかと
考えてしまう。

この数日後、グループの1人に年上の彼氏ができたとか
釣り合わないだとかで陰口をたたいているのをまたトイレで聞いた。
大きなグループに所属して、お互いの顔色を伺いながら
その都度つるむメンバーによって会話を変える。
中学時代は彼女たちの行動を馬鹿馬鹿しいと思っていたが、
彼女たちなりに上手く学校生活を生き抜くために必死で、
ある意味では真面目だったのだろうと思う。

こんな偉そうなことを言っているが、
中学時代の歪んだ私は
この雰囲気をちょっと面白いと思ってしまった。
『ジャパレゲ』の会話をきっかけにトイレに入ったときは
グループの出現を待つようになった。
社会人となった今、私の職場では
こんなオモロイ会話を聞かせてくれるグループは存在しない。
中学時代のあの独特の空気感を感じることがないと思うと
少し寂しい。

思い出に浸りたい気分だ。
今日は人気のジャパレゲ、三木道山の「Lifetime Respect」でも聞くとするか。




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