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セックスアンドロイドが心をもつ小説12

ココロ

12

 二〇七九年。
 月面に住んで十年になる。
 月から見る地球は、漆黒の宇宙に浮かぶ瑠璃色のラピスラズリのようだ。
 月面の引力は、地球の六分の一ほどである。筋力が衰えないように、日々の運動は欠かせない。
 かなり前、DNAが解明され、予防医学が発達したため、人の平均寿命は百二十歳になった。
 月面で暮らす人の約五割は月の資源の採掘をする人々である。約三割は科学者である。残りの二割は、裕福な人である。私は、最後の人間である。
 そのため、かなり広いスペースの家に住んでいる。部屋は、日本の古民家のようにしている。食事は、完成されたものを解凍して食べている。

 私が月面で暮らすようになったのは、アンドロイドによって、人類が絶滅の危機にさられていることから、そのアンドロイドをつくった人間として、アンドロイド反対派の過激派からテロの対象にされているからである。
 ただ、月面にも、アンドロイド反対派がいることから、私がここにいることは、誰にもわからないようにしている。
 ここにいることがわかれば、殺される可能性がある。
 私の家は、一番近い人が住むところから百キロ以上離れている。周囲には何もない。そして、十キロごとにボットが監視している。近づけば、阻止する。戦車に対抗できるだけのボットが用意されている。
 また、真上からミサイルやレーザーのようなもので狙われても平気なように、家は地下にある。核兵器の直撃にも耐えられるシェルターである。

 アンドロイド反対派の要求は、アンドロイドの削減や廃止である。
 しかし、今や、アンドロイドがなければ、人間の生活は成立しない。
 ナンセンスだ。
 削減した分の仕事ができる人間がいないのである。

 ただ、私も、人類が絶滅してほしいとは思っていない。
 そのため、人工授精、代理母、卵子と精子の凍結保存を慈善事業としておこなっている。

 他に、人間のクローンも選択肢だが、法律が許さない。

 また、Qに心らしきものをもたせてから、私とQの子供が欲しくなった。
 Qの遺伝子をもった卵子をつくることはできないだろうか。
 ちょっと考えただけで、不可能だとわかる。
 しかし、ブレードランナーでは、アンドロイド同士で子供をつくっていた。
 思いついた。卵子をつくるのではなく、ボットで子供をつくればいいのである。そして、その子が人間と同じように成長するように設定すればいいのだ。
 これなら、すぐにできる。
 楽しみだ。


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