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台にアニバーサリー

我輩は台である。名前は製菓用作業台1号である。
この手の冒頭で「いや名前あるんかーい」という流れはどうかと思うが、他と区別を付ける為の記号でしかないので名前という認識もおかしいか。菓子だけに。

「じいさんやかましい」

隣の3号から野次が飛ぶ。おい、誰がじじいだ、我輩ピッカピカだろうが。

「そりゃ生徒ちゃん達が一生懸命お掃除してくれとるからでしょ〜」
「冬休み前だから念入りに磨いてくれたもんねぇ」

2号と4号まで……。我々は製菓学校の調理室に設置された作業台仲間である。昨日までは生徒達がきゃらきゃらと騒がしいものだったが、本日より冬休みだ。

「本来の製菓台だったらここからが正念場だろうにな」

その通り。製菓とは日常を彩り吉事を寿ぐ為にある。日々をいたわり、より良い幸いを願い、果てしない旅路にそっと寄り添う愛である。
ーー正直、特別な日のとびっきりを作る同胞達が羨ましいと思わなくもない。
我輩の本音に同僚達の心が一つとなった。

「「「分かる」」」


こちら参加させて頂きました。二周年おめでとうございます!
台のアニバーサリーというより、アニバーサリーの台かコレ……?


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