カードゲームが好きで、定期的に紙をしばかないと禁断症状が出る体になってしまった話をしよう。

紙をしばく:カードゲームオタクが、対戦することを自嘲気味に言うときに使う言葉。

小学生ぼくとポケカなる概念

 他の連中のことなんかは知らないけど、僕なんかはカードゲームで育った人間だと言ってもいい。ゲームボーイを買ってもらえない僕は、カセットの代わりにカードを買ってクラスの話題についていくのだ。当時消費税は5パーセントで、まだポケカの拡張パックが、エネルギー1枚位入りで315円の時代のポケモンカードだ。

 カードの封入率なんか覚えていないけど、お小遣いで買えるのは月に1〜2パックが限度だった。もちろん、簡単にレアカードなんか当たらない。だから、初めて当たった「ゴウカザルLv.X」は、僕にとって特別なカードだった。

 エネルギーたったの二枚で150ダメージ。今のインフレしまくった環境ではどうか分からないけど、当時、この威力は破格だった。一番HPの高いポケモンでも180とかの時代だ。ただ条件が少し厳しくて、トラッシュにエネルギーが8枚も必要だった。

 トラッシュを増やすカードとか、進化を早くするカードとか、色々カードを考えて、組み合わせて、デッキを作った。ゴウカザルの進化ラインは構築済みデッキで手に入ったから、意外と簡単にデッキは作れたのだ。

 僕はたちまち「ポケモンカードが強い小学生」になっていた。けれど、小学生の流行はまるで漣のごとく移り変わるもの。クラスではデュエル・マスターズが流行り出した。

小学生の通過儀礼、それすなわちデュエル・マスターズ

 コロコロコミックもMTGもよく知らない僕が、その流行に乗れたのか、と言うとそんなわけはない。そんな僕がデュエル・マスターズを始めたのは、クラスで仲の良かったT君が、僕にジャンクカードの束を渡してくれたのがきっかけだった。当時デュエル・マスターズは悪名高き「不死鳥編」が終わったあたりだった気がする。けど、レインボーカードだらけの環境は、始めたての僕にはやりやすい環境だった。五色デッキは、どんな色の切り札だって入れられる。パックで当たったSRカードを、簡単に入れることができたのだ。

 紆余曲折あって、「スーパーデッキ」なんかを買ったりした僕が最後に行き着いたのは、ヘブンズゲートデッキだった。アクア・スーパーエメラルでヘブンズゲートを仕込んで、アクアンとロードリエスで手札を増やして、シリウスとアルカディアスで止めを刺す、カウンターデッキだった。

 バジュラズ・ソウルとか、青単速攻とか、そういうデッキを使ってる奴がヒーローになれた時代だったから、その辺に天門でカウンターできるこのデッキは、今考えてみるとちびっこ環境での地雷デッキだった。クラスの強い連中とも普通に戦えた。当時はそんなこと全然考えてなかったけど、結果的にデュエル・マスターズも戦えるようになっていた。

 いや、デュエル・マスターズ。このカードゲームはすごいカードゲームだと思う。贔屓目もあるかもしれないけど、ルールのシンプルさがとても良い。ライフの概念を「シールド」にしたことで、計算なんてしなくても相手と自分の勝ち負けがわかりやすいし、これがカードであることによって「シールドトリガー」という逆転要素も生まれている。何より、攻撃されればされるほど手札が増えて、リソース面で有利になる。MTGで発生した「土地事故」だって、「マナ」の概念によって解決した。しかもこの概念は「切り札級のカードほど出しづらい」という要素を、小学生にもわかりやすく教えてくれる。しかもこれらの基本ルールが、驚くほどわかりやすい!

 しかも、これらが(今でこそ超次元だのGRゾーンだのが存在するが)カード40枚のデッキさえあれば、いつでもできると言うのだって魅力だろう。トークンもカードゲームの魅力かもしれないけど、遊び回る子供達にとって、必要な道具が少ないのは重要なことだ。

 まあ、そんな話はどうでも良いのだ。中学生になるとカードゲームとも離れ、お年玉で買ったDSiで普通にゲームのポケモンをやり出すようになる。ここで厳選とかもし出すのだが、まあ、昔から勝負事が好きなのかもしれない。

クソガキぼく、紙オタクになる。

 高校生になった。今思えば、これが僕の人生の転機と言える。高校の部活の先輩が、とんでもない紙オタクだったのだ。

紙オタク:カードゲームオタクが、自分たちを自嘲して使う言葉。

 この先輩がかなりの頭脳派で、どんくらいかっていうとカツキングのデッキが発表された翌日にはコンコルドとベルセルクのループを考案していたり、世間様がオプティマスループで騒いでいるときにディスマジシャンループを考案し、(公式大会で結果を残し、有名になる2年も前の話である)しかも使用していたと言うクソデッカーなのだ。シャチホコカイザーが出たらファルピエロやらピュアキャットと組み合わせたソフトロックデッキを組むし、もう普通に天才である。

 もっとも、入部したての私はそんなことを知る由もない。「デュエマやってる?」と聞かれた私は小学生のときに使っていたデッキがあることを思い出し、「はい。やってます」と一言。翌日の部活に例の天門デッキを持っていくと、当然のように無双教皇ガラムタにぶん殴られて負けた。

無双教皇ガラムタ:単騎ラフルルなる概念が存在せず、呪紋の化身も殿堂入りしていた時代のシールドトリガー・ケア。当然ながら普通に強い。

 ちょうどその頃、クラスの友人がまたデュエマガチ勢だった。保育園が一緒で、その後別れ、高校で再会したいわゆる幼馴染というやつだ(ただし同性である。少女漫画的展開は一切ない)。そいつと、そいつの小中の友人というのがまたデュエマをやり込んでおり、結果的に僕は高校生活という貴重な青春を、紙をしばくことに費やすことになったのだ。

 高校に入って久々にデュエマをやった僕は、競技シーンのデュエマ、という概念を初めて理解することになる。当時の僕は、強いデッキに共通する概念を三つ理解した。それは、「マナ加速は強い」ということと、「ボード取れるのは強い」ということ、そして「確定除去は最強」ということだった。それらを理解した僕は、自分のカードプールにある「悪魔神ドルバロム」がめちゃくちゃ強そうに感じるようになったのである。そうして、僕の人生で初めて「連デモ」なるそれなりのガチデッキが作られたのである。

連デモ:連続デーモンコマンドの略。ベル・ヘル・デ・ガウルとエメラルド・バベルを利用して、相手のクリーチャーを破壊しまくって自分の盤面を広げ、ドルバロムを投げて勝つ派手なデッキ。楽しいが、実際のところ競技シーン向けではない。

 ハマったらあとは早かった。僕が通っていた学校というのが、田舎では一番有名な進学校、というよくあるポジションのアレで、落伍者の僕を除くと皆一様に頭が良い。皆さんはご存知か分からないが、実はカードゲームというのは賢い奴がプレイすると強いのだ。学習能力に優れた僕らは、その辺の大会の準決勝で同士討ちするくらいには強くなっていた。

 そのとき僕が使っていたのは今でも愛用者の多い五色コントロールだ。5cコン、などと呼ばれて親しまれていると思う。僕が初めてデュエマをやった時も五色デッキだった。そして、受けとコントロールのデッキであるこのデッキは、どうも僕の性格にマッチしていたらしい。それ以来、ずっと使うことになる。

 で、大学生になった。大学でもデュエマやってる奴はいると思っていたのだが、なんか不思議なことにいなかった。本当に不思議だ。ここで問題になるのは、カードゲームには相手が必要だということである。しかも片田舎の大学に進学したのが良くなく、なんとカードショップは近くに存在していない。これじゃあ同士を見つけるのも一苦労である。昔はあったらしいが、潰れたらしい。南無三。とはいえ、カードショップはご存知の通り、なんか異様な匂いのするオタクが多数生息する場所でもあるので、できれば同士は清潔感あふれる大学生の中から探したいところ。

 こうなってくると、僕の胸中にはある気持ちがムクムクと頭をもたげ出すことになる。その感情はすなわち。

「紙を、しばきたい!」

 しばきたいのである。紙を。戦いたいのである。紙で。なんかもう、カードゲームにハマったことのない御仁にはついぞ理解など及ばぬだろうが、僕ら紙オタクという生き物は、紙をしばいてアドバンテージを取り合い、相手の裏をかき、相手に裏をかかれ、シャカパチし、「負けたー!」だの「対戦ありがとうございました」だの「ひっかかったな馬鹿め!」だのと喚き続けねば死んでしまうか弱い生命体なのである。そんなこんなでモヤモヤとした毎日を送っていた頃、ついに現れたのは何だったろうか。そんな時、救いの手を差し伸べてくれたのは誰だったろうか。

 そう。

 はじめしゃちょーである。

ありがとう、はじめしゃちょー。ありがとう、500円。 

 ポケカブーム。そう呼ぶほかあるまい。ポケモンカードゲームを開発するクリーチャーズが世に送り出したのは、「500円デッキ」なる、文字通りマジでたった500円でデッキが買えるセットだった。しかもこれを、全タイプぶん出した。このセットが革命だったのは間違いない。なにせ、カードゲームといえば資産ゲー。強いデッキに使われるカードは高騰し、たとえレアカードだろうと、大したことがなければストレージで二束三文で買い叩かれる地獄じみた世界だ。カードは実質株、などとも言われるが実際そんな感じで、カード業界の新規参入はそれなりに壁が高い。

 だが、これはどうだ。500円デッキはどれも同じくらいの強さであり、戦ってみると普通に盛り上がる。ポケカは「ダメージカウンター」などのトークンが必要なゲームではあるが、それも全部入っているので対戦に支障はない。ちょっと飲み会なんかの終わりに「うわ、懐かしい!」なんて言いながら友達と一緒に購入し、飲み直し〜などと言いながら宅飲みする不埒で不出来な我々大学生でも、すっとワンコインで楽しめてしまうのだ。

 これだけでも結構なムーブメントになったのだが、何よりヤベーのはYouTuberとかいうこの世全てのインフルエンサーじみた連中だ。ご存知はじめしゃちょーが、あろうことかポケモンカードゲームを動画で紹介してしまったのだ!

 その結果はいうまでもない。2018年11月のポケカの売上をご存知だろうか。「前年比1153%」である。4桁である。普通に言っても十倍強である。桁間違えてるとかではなく、大マジもマジである。すげえ。

 そんだけポケカが流行ったということは、当然「ちょっとポケカやってみたいな」という連中が出現するのも当然で、僕はそこに目をつけた。紙をしばくなら今しかない。もう一度、ポケカを始めるのだ!

 友人や知人を誘ってポケカを初めてみると、じわじわと面白さは浸透していったようで、特にゲームが得意な人なんかはプレイングの上達も早い。僕だってポケカのブランクは10年くらいあるけれど、それにしても昔取った杵柄というのは存在するようで、そこそこ戦えるはずなのだが普通に負かされたりもする。これもまた楽しい。

 そうして僕は、ポケカを再び始めることになる。そんでもってこれがめちゃくちゃ楽しい。紙をしばくってのはかなり楽しいのだ。直接顔を突き合わせて、「うわー!やられた!」とか「うまい!」とか「そうきたかー!」とか「これは勝ったわ」とか言いながら紙をしばくことの何と楽しいことか。この楽しさからは、しばらく逃げようもない。この楽しさをもう一度与えてくれたポケモンには感謝の念しかない。

 ありがとう、はじめしゃちょー。

 ありがとう。ポケモンカード。

 ありがとう、デュエル・マスターズ。

 ありがとう。全世界の紙オタク。

 今日も僕は、元気に紙をしばいています。

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上善如水

筆名は老師の言葉から。お酒も好き。劇団平成ぽこの脚本家とかやってます。 ここは駄文とイデオローグの墓場です。

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