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陸上自衛隊指揮系統再編私案

現況解釈

旧日本陸軍末期の決号作戦の時、日本本土に初めて方面軍なる部隊単位が創設された。これは例え陸軍の参謀本部が壊滅したとしても各地の方面軍が隷下の軍及び師団を取りまとめて独立して作戦を続行し、全ての兵が死ぬまででも戦闘を継続するというものだった。
自衛隊はこれを踏襲してか、師団の上に方面隊という組織を設置しており、中規模な単位で部隊を総括することで地域ごとの指揮能力を向上させ、地域の枠内での戦略的な優位を取ろうとしているという点で、恐らく決号作戦の影響を受けているものと思われる。
しかしここから伺える、方面隊の真の役割とはつまり、(核などによって)幕僚監部が破壊されたとしても、方面隊が残存勢力を結集し戦闘を継続するものでもあるのだろう。例え日本の首都が破壊されたとしても、諸外国の思惑が絡む以上、日本においての戦闘が終わる事はないからだ。

ここで、帝国時代の編成を見てみると、方面軍隷下の師団でも「沿岸配備師団」と「機動打撃師団」の二つに大別されており、海岸線に面で配置した沿岸配備師団が敵の上陸した勢力を拘束しているうちに、戦力を集中運用する機動打撃師団を複数投入し、各個撃破していくというものだった。
自衛隊の編成でも、(近年改編された結果によるものではあるが)「地域配備師団」と「機動師団」の二つの種別の師団に分けられており、これも帝国陸軍に倣ったものであると考えられる。

しかしここで疑問がある。本当にこの配備は正しいのだろうか。

帝国末期の決号作戦の時期は、海軍戦力と空軍戦力が圧倒的に劣勢であり、連合国軍がどこから上陸してもおかしくはないという状況であった。原則として「全ての方面」を警戒する必要があった。だから各方面の部隊を統合する編成単位が必要とされたが、現在の日本の経海脅威はおよそ中国とロシアの二国に局限される。
更に、太平洋側の制海権は、例え海上自衛隊が完敗して壊滅したとしても、米海軍や英海軍の支援を受けやすい地域でもある。であれば、太平洋側からの上陸の可能性は低いと見積もれるから、東北方面隊や東部方面隊、中部方面隊が遊兵となる可能性が高くなってくる。
従って、現在の自衛隊は、日本という国土を方面軍の単位に細かく分割して中規模な指揮の優越を確保するよりは、国土を南北に大きく分割し、その枠内で戦略的な戦闘を行う能力を向上させるべきであると考えられないだろうか。

具体的には、現在の西部方面隊と北部方面隊の師団をキッパリと遅滞戦闘のみを行う部隊と定義し、東北方面隊や東部方面隊、中部方面隊らの師団を戦略予備として戦線後方に温存させ、敵侵攻部隊に大きな一撃を与えるような扱い方をする。
そのために、新たに戦略的な単位としてロシアの侵攻に対し戦略的に対処する「北方軍」と、中国の侵攻に対し戦略的に対処する「西方軍」を組織するべきではないだろうか。

編成案

本案では、戦前の決号作戦時の編成を一部参考としつつ、以下のように部隊を改変することを提案する。

陸自指揮系統再編案

陸上総隊・・・第一総軍、第二総軍に分割。総軍を跨ぐ作戦は、上級司令部となる参謀本部陸軍部がこれを行う。核ミサイルなどにより参謀本部陸軍部が壊滅した場合でも、総軍が指揮を継続する。

北部方面隊・・・対露正面戦力として、第五方面軍の名称とする。戦略的な遅滞戦闘を行い、戦略予備軍の来援を待つ。
東北方面隊・・・第二総軍隷下の第一戦略予備軍として再編し、部隊の集中運用により第五方面軍の拘束した敵を各個撃破する。
東部方面隊・・・第一総軍隷下の第二戦略予備軍として再編し、部隊の集中運用により第十六方面軍の拘束した敵を各個撃破する。
中部方面隊・・・第一総軍隷下の第三戦略予備軍として再編し、部隊の集中運用により第十六方面軍の拘束した敵を各個撃破する。
西部方面隊・・・対中正面戦力として、第十六方面軍の名称とする。戦略的な遅滞戦闘を行い、戦略予備軍の来援を待つ。

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