6月1日 なんて日だっ!

今日2023.6.1より新たな職場に着任しました。ひとまずボスは出張で不在。
この ’Note’ はこれからの症例における治療と手術の勉強のためスーパーマンになるため、ただただメモとして使うことにしました。

下顎臼歯部顎骨腫瘍・・・すでに歯牙種の診断あり

前置き、、、、
歯原性腫瘍 (エナメル器、歯乳頭、歯小嚢に由来)→もちろん顎口腔領域に特異的
誘導現象の有無で分類:①純上皮性、②外胚葉性間葉組織の誘導を伴う上皮性、③外胚葉性間葉性

「特徴・頻度」は、Amero、keratoに次ぐ3位(keratoがOKCになったので昇格)歯牙腫、臼歯部に多く、前歯部はまれ。上顎より下顎旧歯部に多い。若者に多い。

歯牙腫は、歯胚(しはい:歯の芽)の形成異常から生ずる組織の形態異常で、厳密には真の腫瘍とはいえません。一般に集合性歯牙腫と複雑性歯牙腫とに分類しますが、いずれも腫瘍のなかに歯の組織を含んでいるのが特徴です。無症状なために、エックス線検査で偶然発見されることが多いようです。腫瘍はゆっくり発育しますが、大きくなると顎骨が膨隆したり、歯の位置が異常になったりします。治療として摘出術を行います。(https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_ryosei/)

Case: 中年女性 
15年前より右下56間の歯牙種の存在は知っていた。6のPerで痛みが出て来院抗菌薬の処方は1回受けた事ある。ちなみに67は中等度Pで動揺あり、排膿・出血はなしPPDは6mmくらい。7はVital、6はNon-Vitalで67間にFistalあり。歯牙腫はオトガイ孔に近接、65┓間に存在し、6┓近心根周囲骨欠損と連続している。根との直接の接触はなし。

既往:大きなもの無しで経過のみ。
方針:CBCTにて上記結果。Perの感染は歯牙腫に波及していることが予想される。6┓抜歯、腫瘍摘出(底部での下歯槽神経血管束は温存、オトガイ孔は明示)
57┓根切(7┓はかかりつけで根充まで)MTAセメントあれば。
縦切開は45┓、先に6┓抜歯して7┓遠心まで切開。7┓は外科てにP処理。必ず一層周囲骨削合。オトガイ神経は移設も考える。閉鎖創でドレーン留置(2日間)か開放創でテルダーミスか。カンファ次第。

+α コメント
腫瘍(悪性)を否定するため造影CTと生検はMustとのこと。追加オーダーとして、カンファはCTの結果後で、、、、

骨折(上下顎)

骨折の治療は難しい。パターンによって色々、施設によって色々、、、、
基本は外科処置だが「どこまで保存にするか」「どこを切るか」「どのプレートを使うか」「2回目(抜釘)はいつ行うか」などなど悩みは尽きない、、、

とりあえず大まかにまとめると。

全てに先立ってまず、、、
命に関わる重傷が隠れていないか(顔面骨折以外に)!?これを精査する
:気道の確保が可能か?
:頸椎・頸髄の損傷はないか?
:頭蓋内の損傷はないか? (髄液漏に鼻腔タンポナーデは禁忌です)
:眼球の損傷はないか?
視診・触診・問診が重要!!!

顔面の知覚鈍麻と予想される骨折部位
前頭骨・蝶形骨 骨折→上眼瞼・前額部 知覚異常→前頭神経 損傷

e-Anatomy イメージングアトラスより

頰骨 骨折 → 頰骨・側頭部 知覚異常→頰骨神経 損傷

Visual Anatomy 視覚解剖学より

頰骨・眼窩底・Le Fort II/Ⅲ 骨折 →上口唇・尾翼 知覚異常→眼窩下神経 損傷

下顎骨角部・体部 骨折 →下口唇 知覚異常→オトガイ神経 損傷

Le Fort型・頰骨 骨折 →上顎歯牙 知覚異常→上歯槽神経 損傷

さて今回の体験と復習です。
症例は左側上顎・頰骨重骨折、右側下顎関節突起骨折
上顎骨は眼窩下で伏線骨折、上顎洞前壁の複雑骨折、歯槽骨後方に至る(蝶形骨はIntact)頰骨上顎縫合部骨折(偏位なし)、頰骨前頭骨骨折(偏位なし)
右側下顎骨関節突起は突起基部で斜めに骨折、で、パカっと頭部が内外に2分割してしまっている。。。

頰骨骨折整復
下眼瞼切開(睫毛下切開)
下眼瞼から2mmくらい下に眼瞼に並行に切開し外眼角外下方に7mm程度伸ばす。その時ピオクタニンでマークしておくと縫合が楽になる。粘膜切開をし眼輪筋筋膜に到達。鈍的に眼輪筋を分けて、入り眼輪筋と眼窩隔膜を分けていき骨面に到達したら眼窩下縁より数mm下で骨膜を切開し骨折部を明示する。この時可能であれば眼窩下神経も明示しておく。骨折部は洗浄し、復位できない骨は除去、マイクロプレート、ミニプレートで骨片固定(吸収性もあり)3~4mmのスクリューで骨片固定。眼窩下縁(Upper Transverse maxillary buttress)は確実に固定する。可能なら骨膜・眼輪筋そして表皮で縫合すべき。
眉毛外側切開で前頭頰骨縫合部明示しプレート固定。特記なし。口腔前庭切開する。まずは粘膜切開し切開部を指で広げる。そして骨面に垂直に骨膜切開し骨折線が見えるまで剥離する。後は復位してマイクロプレートまたはミニプレートで固定する。水平・垂直buttressを意識して固定する。


https://www.zenniti.com/asset/errata/pe0180.pdf
https://www.jsoms.or.jp/pdf/trauma_2_20150501.pdf


さてさて、次がメインです。関節突起骨折に対する耳前切開→関節包切開、、、、


Al-Kayat-Bramley 切開 (疑問符状切開線)
有髪境界部付近より始まり,側頭部,耳 介最上付着部 か ら耳前部に まわ り,耳 珠に至る疑 問符状 の側頭筋膜上 にいたる深さの皮膚切開を加える(浅側頭動脈の頭頂分枝 は結 紮切断)。頭筋膜下 に存在す る中側頭 静脈 に遭遇す ることにな るので注意。とりあえず下の論文読むと詳しい術式は載っている。

今井智章,若林 健,竹下彰範,太田嘉幸:経咬筋前耳下腺法(Transmasseteric anteroparotid approach)による下顎骨関節突起骨折手術の経験. 口科誌 66:289-297, 2017.
Imai T, Nakazawa M, Uzawa N: Four-step chart of percutaneous approaches to the mandibular condyle: A proposal of a visualized system for intuitive comprehension. J Oral Maxillofac Surg 77: 238-239, 2019.
Imai T, Nakazawa M, Uzawa N: Advanced model of a four-step chart for percutaneous approaches to condylar fractures: A tool tocomprehend trends in classification based on the dissection route. J Oral Maxillofac Surg 77: 1962-1964, 2019.
Imai T, Fujita Y, Motoki A, Takaoka H, Kanesaki T, Ota Y, Iwai S, Chisoku H, Ohmae M, Sumi T, Nakazawa M, Uzawa N: Surgical approaches for condylar fractures related to facial nerve injury: deep versus superficial dissection. Int J Oral Maxillofac Surg 48:1227-1234, 2019.
Imai T, Fujita Y, Takaoka H, Motoki A, Kanesaki T, Ota Y, Chisoku H, Ohmae M, Sumi T, Nakazawa M, Uzawa N: Longitudinal study of risk for facial nerve injury in mandibular condyle fracture surgery: Marginal mandibular branch-traversing classification of percutaneous approaches. Clin Oral Investig 24:1445–1454, 2020
Kubota S, Imai T, Nakazawa M, Uzawa N: Risk stratification against inferior alveolar nerve injury after lower third molar extraction by scoring on cone-beam computed tomography image. Odontology 108:124-132, 2020.


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