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“プライマリ・ケア2024年春号”使える論文My Top5

日本プライマリ・ケア連合学会の実践誌、”プライマリ・ケア”の『使える論文My Top5』は若手医師部門 病院総合医チームが紹介しているリレー連載です。

2024年春号は、『外来診療 編』と題して、東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療科の齊藤が担当し、若手医師をメインターゲットに外来診療で役に立つ5つの論文を紹介しました。

1. 降圧薬内服のタイミング


Cardiovascular outcomes in adults with hypertension with evening versus morning dosing of usual antihypertensives in the UK (TIME study): a prospective, randomised, open-label, blinded-endpoint clinical trial.(Lancet.2022 Oct 22;400(10361):1417-1425.PMID:36240838)
 
Hygia studyとMAPEC studyという2つの先行研究が有名です。これらの研究では、夜内服した方が、朝内服したときよりも心血管イベントが少なく、死亡率も低いと結論付けられていました。
 
今回紹介するTIME studyは、少なくとも1剤の降圧薬を内服している高血圧患者21,104人に対して行われた大規模RCTです。
複合アウトカム(心血管疾患死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中による入院)は、夜内服群3.4%(362例)と朝内服群3.7%(390例)でHR 0.95[95%CI 0.83-1.10]と有意差はなく、安全性の懸念も認められませんでした。

 
2. 余命の限られた高齢者でのスタチン内服


Safety and benefit of discontinuing statin therapy in the setting of advanced, life-limiting illness: a randomized clinical trial.(JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):691-700.PMID:25798575)
 
高齢者を診ることが多い総合内科では、この薬いつまで続けなければいけないのか、という問題は常に話題になり、スタチンは代表例ですね。
 
紹介する研究は、推定余命が1ヶ月から1年で、3ヶ月以上心血管疾患の一次予防または二次予防のためスタチン内服をしている、最近の身体機能低下や心血管イベントのない患者を対象とし、スタチン内服を中止する群と継続する群とで1年間観察したRCTです。60日以内の死亡率に有意差はなく(中止群vs継続群、23.8% vs 20.3% ;90%CI -3.5%-10.5%、p=0.36 )、QOLに関しては中止群の方が良かったという結果でした。

3.モヌルピラビルVSニルマトレルビル/リトナビル

 
Real-life comparison of mortality in patients with SARS-CoV-2 infection at risk for clinical progression treated with molnupiravir or nirmatrelvir plus ritonavir during the Omicron era in Italy: a nationwide, cohort study.(Lancet Reg Health Eur. 2023 Jul 14:31:100684.PMID:37547273)
 
COVID -19オミクロン株以降のイタリアにおける、モヌルピラビルで治療を受けた17,977人とニルマトレルビル/リトナビルで治療を受けた11,576人を分析したコホート研究です。28日目までの全死因死亡率は、モヌルピラビル投与群と比較して、ニルマトレルビル/リトナビル投与群で有意な低下を認めました。
 
外来で治療可能な軽症例に関しては、ニルマトレルビル/リトナビルを使用すれば良さそうですが、併用注意薬が多いことに気をつけなければなりませんね。

4.Frank’s Sign


The relationship of diagonal earlobe crease (Frank's sign) and obstructive coronary artery disease in patients undergoing coronary angiography.(Wien Klin Wochenschr.2023 Oct 30.PMID:37902857)
 
最後2つは身体所見に関する論文です。
耳たぶの斜めのシワ(Frank’s SignやDiagonal Earlobe Crease(DELC)と呼ばれる)が冠動脈疾患と関連しているという話は聞いたことがあるでしょうか。1973年のNew England Journal of MedicineでAural Sign of Coronary-Artery Diseaseとして、耳たぶのシワと冠動脈疾患との関連を報告したことが最初と言われています。
 
今回紹介するこの論文では、急性期または慢性期冠動脈疾患疑いで冠動脈造影検査が施行された1,377人に対して、DELCがあるか両耳たぶを目視検査した前向き研究です。DELCの中でも特に両側性DELCは閉塞性冠動脈疾患と有意に関連があったとのことです(p=0.022)。

5.高齢者の足の爪


Foot Examination for Older Adults.(Am J Med.2021 Jan;134(1):30-35.PMID:32805226)
 
高齢者を診療していると、爪の長い人をよく見かけます。この論文は、高齢者の爪に焦点を当てたレビューで、足の爪を切るには、体を屈める能力、十分な視力、微細な運動能力が必要です。そのため、足の爪が伸びていることは、高齢者の身体機能低下、または介護者のケアが行き届いていないことの指標となる可能性があるとのことです。次に高齢者を診察するときは、ぜひ足先まで注意深く観察してみて下さい。

本記事の内容については、会員の方はお手元の雑誌をご覧ください。
今後もリレー形式で続いていきますのでお楽しみに。

文責:齊藤 琢真(東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療科)

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