変わらず見ていてね。

Hello!Project presents「ソロフェス!」を見た。
ソロフェス!とは2020年の放送当時、ハロー!プロジェクト所属のアーティスト52名がソロパフォーマンスを行う企画番組…ということだそうで。

その中でもわたしが一際惹きつけられたのが、山崎愛生さん(当時モーニング娘。’20)の「チャンス!」である。
この曲はアニメ、きらりんレボリューションの主題歌として、月島きらり役の久住小春さんが歌っていた曲だそうで、わたしはこのソロフェス!で初めて聞いたのだがとにかく可愛らしさ全開の曲なので聞いたことのない方は一度聞いて見て欲しい。


山崎愛生さんは緑色のリボンのツインお団子姿で登場し、大好きな「パンダさん」グッズを傍らに歌い始める。
当時モーニング娘。15期メンバーとして新加入し、また最年少でもある彼女のあどけない表情から一変、繰り出される堂々としたパフォーマンスにまずガッと引き込まれる。楽曲の明るく楽しい雰囲気にぴったりのアイドルらしい可愛い振り付け、くるくると変わる表情、
とにかく全てがめちゃくちゃ可愛い!!!!!!
間奏中、彼女はお団子のリボンをほどきなんとツインテール姿に変身。パンダさんのステッキを手にした彼女は魔法をかけるように歌い踊りながらステッキを振る。これが多幸感だろうか。訳のわからない涙が出てきた。
普段からハロプロ楽曲に触れている私だが、その実彼女のパフォーマンスをソロでじっくり見るのは今回が初めてだったけれど、まず彼女の存在そのものが可愛すぎて驚いたというのが真っ先に出た感想だ。衝撃的なキラキラアイドル感。ちょっとした仕草全てが、計算尽くされて作られたガラス細工のように完璧なのだ。
そしてその細い体から溢れ出る歌声。楽しそうに歌う姿を見ていると心が激しく動かされた。自身にぴったりの選曲に、原曲のワンピース衣装からドレスの衣装に早変わりするシーンをオマージュしたヘアスタイルの変化。
大好きなパンダさんグッズを携えて、自己アピールもバッチリ。全体的な構成を見ても美しくまとまっており、ソロパフォーマンスとしての満足感がとにかくすごかった。

今回山崎さんが歌ったチャンス!では「チャチャChanse!~」から始まるフレーズがほとんどを占めており、何度も繰り返されるため一度聞いたら頭を離れず、気がついたらつい口ずさんでしまうようなキャッチーさもある。中でもそのフレーズの最後にある「あなたとね」という歌詞が初見では特に印象に残った。

キラキラのこの先の道を歩くわ あなたとね

付け加えるように歌われる「あなたとね」。最後にこのフレーズがくるためなんとなくだが、あなたとこの先の道を行くわと歌われるより強調されて聞こえ、なんだか嬉しくなってくる。一人にされない感覚と言ったらいいのだろうか、歩き出すときに隣にいる友人がそっと手を繋いでくれるような気持ちになる。

チャチャChanse!ムテキの勢いで
チャチャChanse!ツヨキのその意気で
今日までの AH毎日にさよならを告げるわ

チャチャChanse!どれだけ変わっても
チャチャChanse!代わりはいなくって
キラキラのこの先の道を歩くの あなたよね

チャチャChanse!ステキないでたちで
チャチャChanse!ホウセキ散りばめて
今日からの AH毎日をデコレーションするわ

チャチャChanse!うっかり迷ったら
チャチャChanse!しっかり抱きとめて
キラキラのその先の道を照らして あなたがね

チャチャChanse!どれだけ変わっても
チャチャChanse!変わらず見ていてね
キラキラのこの先の道を歩くわ あなたとね

どれだけ変わっても 変わらず見ていてね。
当時15歳の彼女が歌うことでより今現在の「山崎愛生」にフォーカスされる。
いつか彼女はモーニング娘。の末っ子で無くなる日がきて、10代ではなくなって、もう大人の女性なんだからなんて言われる日が来るのかもしれない。可愛らしいパンダさんステッキを置く日が、髪をツインテールに結ばない日が来るのかもしれない。
常に人は変化していくし、能動的な変化だけでなく自分の意思とは関係なく”変わってしまう”時が生きていれば訪れる。世間の流行りは今この瞬間も変化し、時代は流れて行く。アイドルとして生きている彼女らもまた10年後も今と同じ状況かと言われると分からない。見えるものや見られ方も、見せたい自分と求められる自分も自ずと変化して行く日がやって来るしそれを意識させられることもあるのだろう。その中で悩むこともあるかもしれない。けれども変わらないものがあるとしたら、自身が自身であること。”代わりはいなくって”なのだろう。

 また、このソロフェス!が行われた2020年はコロナウイルスの影響を大きく受けた年だ。彼女らも芸能活動も制限され、思うような活動ができなかっただろうし、社会は今尚終わりの見えないコロナ渦の閉塞感に包まれている。一変していく世界の中で苦渋の選択で終わらせなければならなかったもの、この世から淘汰されてしまったものが沢山ある。
時は残酷に過ぎ去り目まぐるしく形を変えて行く。皆が混乱する渦中で”今”を強く意識した時間でもあったと思う。今、我々にできることは、そしてこの先どのようにして生きて行くのか。ライブができない中で出したエンタメの一つの形としてこのソロフェス!のような、配信を利用したパフォーマンスがある。
観客の応援の形はこれからも形を変えていくのかもしれないけれど、声を直接届けられなくたって変わらず画面の向こうの貴方が笑顔になるように歌ってくれる彼女の姿を見られることを噛み締めていたい。今の彼女が自分の考える精一杯の”自分らしさ”を詰め込んだステージに、「チャンス!」があったことを思うと、愛しくて胸がいっぱいになった。

変化を力強く肯定し、自分の力で日々の時間をデコレーションしていく、この先へ行くと歌う彼女が、「あなたとね」と付け加えてくれること。キラキラのその先には何があるのか誰にもわからないけれど、迷ってもあなたがその先を照らして行く。大切な隣人とまだ見ぬ明日へと向かって歩いていくのだ。
山崎さんが向かうこの先の道はまだまだ分からないし、我々も同じく未来のことは分からない。それでも、この世界でわたし達は生きて行く。これからもっと辛く苦しいことがあるかもしれない。先は見えないけれど、わたし達はいつだってその先の道を歩いていくのだ。
そう、片手には魔法のステッキを携えて、ステキな出で立ちで、この瞬間しかない”今”にキラキラのホウセキを散りばめ、毎日をデコレーションしていけるのだ。

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