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ロイロノート・スクールを活用しよう!


ロイロノート・スクールは,子どもにもっとも必要な「自分の考えをアウトプットする」資料を簡単に作成し,共有できるICT教育ツールです。ジュニアドクター育成塾で活用してきましたが,先日の大幅なアップデートで発表機能が大きく向上して使い勝手が良くなりました。そこで,ロイロノート・スクールを使ってアウトプットするための資料を作る方法について簡単に解説したいと思います。

アウトプットが重要

 アイディアは,アウトプットすることではじめて曖昧な点が見えてきます。また,アイディアは他者と共有してはじめて価値を持ちます。激動の現代において,何かが起きるのを待つのではなく,自分が何かを実現するためには,かならずアイディアをアウトプットして多くの支援を受けなければなりません。早くからアウトプットする経験を積み,その重要性を理解することが今後,大事になっていくでしょう。
 また,学習理論においても,他人に教えるというアウトプット経験がもっとも理解を促進し,記憶に定着しやすいとされています。それは,解き方を教えるためには答えに至る思考過程を,誰にでもわかるようにアウトプットしなければならないからです。

 自分の考えを伝えるアウトプットをしよう。

ロイロノート・スクールとは

 ICT教育ツール,ロイロノート・スクール(以下,ロイロノートとします)は大幅アップデートで,とても便利になりました。ICT教育ツールには様々なものがありますが,ロイロノートの特徴は低コストで,操作が簡単でありながら,いろいろな使い方ができる点です。コストは1ユーザー月40円(タブレット共用プラン)であり,また先生は無料なので,たとえば職員会議資料をペーパーレス化することも可能です。

 使い方は簡単で,基本的にカードに書き込みつなげるだけです。カメラ,動画,Web情報などもすべてカード単位で管理しています。以下に基本画面を示します。

 作ったカードは,左下の資料箱で保存したり,提出箱で先生や他の児童・生徒と共有することができます。また左下の送るで,特定の人に送信することもできます。先生側は生徒間通信操作画面のON/OFF管理や参加名簿のチェックをすることもできますので点呼はいらなくなります。今回は説明しませんがシンキングツールを使うことも可能です。

 今回はロイロノートを使って,以下のような発表資料をつくるためのカードの作り方を解説したいと思います。

カード・オン・カード機能

 カード・オン・カード機能は,今回のアップデートの目玉機能のひとつでカードの上にカードを配置できる機能です。この機能を活用することで,多様なデザインのスライドを生み出すことができます。以下に一例を示します。以下のカードは最少8枚のカードで作成できます。私は2枚増やして10枚で作成しました。

 面倒に見えるかもしれませんが,カードを重ねるだけでよいため,とくに初学者には使いやすいです。また,カードを重ねるとカード内で階層構造ができるため,重ね順やカードの使い方次第で凝ったデザインもつくれます。

 上の画像は,紺色のカードの上に白色のカードを載せて,紺色の枠としています。カードや図形をどう使うかで,児童生徒の創意工夫が発揮されます。

色使い

 基本となるカラーを決め,1枚のカードで利用する色は2色程度に収めましょう。たくさんの色を使うと、カードの視認性が落ちます。基本色は濃い目の色が良いです。たとえば,今回のカードは基本色を紺色としています。

ベースとなるカード

 ベースとなるカード(ベースカードとします)は,カード全体を管理するためのカードです。このカードの上にさまざまなカードや画像を置いていくことになります。ベースカードは背景になりますので白色がよいと思います。ベースシートを有色にすると、文字や画像が背景に埋もれやすくなるためです。

 カードの色は上の10色から選べます。

キャプションとなるカード

 キャプション(タイトル)を目立たせる場合は,キャプションとなるカード(キャプションカードとします)を使いましょう。こうするとカードの内容が一目でわかります。ここでは紺色カードに白抜き文字を使っていますが、一般的に背景を濃く文字を白系にすると目立ちます。

文字を入力するカード

 文字を入力するためのカード(文字カード)は,小タイトル文章(箇条書き),まとめの3種類を使っています。テクニカルライティングの基本はトップヘビーと言われています。最初にもっとも重要な結論を述べ,次にその内容を説明する方法です。この方法の利点は,話し手と聴衆でもっとも大事な情報(結論)を共有して話を進めることができる点です。
 たとえば,上の課題カードでは,対比する2つの内容について、トップヘビー(小タイトル)でなに(高等教育と中等教育)を比較するのかを示し,つぎに具体的な比較内容を示し,最後にまとめて対比関係を整理しています。
 これらはまとめ1つとしてもいいのですが,デザインの自由度を上げるために,小タイトル,文章,まとめを3つのカードで構成しています。

※以下はロイロノート経験者向け※
 さらに高等教育,中等教育全体をまとめるためのベースカードを作り,ベースカード上にそれぞれのカードを組み込みました。こうすることで画面表示のときに、高等教育、中等教育を一覧でまとめることができます。

カードで提示する情報の取捨選択

 カードは一目で議論したい内容を視認できるように情報を取捨選択する必要があります。たとえば,このカードは研究の背景,つまりなぜこの研究が必要なのかを示すことを目的としています。

 上のカードの内容をすべて文字で起こすと以下のようになります。

 結晶構造の扱いは、高等教育と中等教育で異なっており、せっかく学校で習ったことを大学で活かせない場合があることに課題があります。高等教育において結晶構造の学習が重要なのは、原子や分子の空間的配置の概念が化学のさまざまな場面で必要とされるからです。たとえば、有機化学における反応理論でも置換基の嵩高さ(空間的配置)を考える必要があります。そのため、原子の空間的配置のもっとも基礎となる結晶構造は、入試問題でもよく出題されます。一方で、後期中等教育では、この単元は単純な幾何学問題や暗記問題として扱われることが多いようです。これは授業時数が2時限(愛媛県の公立校)と少ないことも関係があるのでしょう。いずれにしても高等教育と中等教育での学習の扱いには大きな差があります。そこで、少ない授業時数で原子の空間的配置を理解できる教育手法があると良いと考えました。

 以上の内容がカードにびっしりかきこんであっても,当然誰も読みません。そこで,ここから必要な情報を書き出してカードにしていきます。

 発表資料づくりの詳細は以下の動画を参照してください。

文字の大きさを変えて、注意を向ける

 文字で説明するときのコツは,大事な(注目してほしい)部分の文字を大きくすることです。厳密な規定はありませんが,10 pt程度大きくすると文字の大きさの違いが明確になります。課題のカードでは高等教育と中等教育の扱いの違いと,それが情報の重要度の違いであるという2点を議論したいと考えています。そのための情報の抜き出しをしましたが,文字の大きさが全部同じだと聞き手には情報の軽重が伝わりません。そこで文字の大きさを大きくすると,読み手の視線は大きな文字に誘導されます。これによって,話の内容が完全に理解できなくても,等と等教育,重要性を比較していることはわかります。また,授業時数が少ないことを示すためにアラビア数字も大きくしています。

文字の色を変えるときの注意

 基本カラーと異なる色使いは極力避けましょう。一般に強調色は赤色などの暖色系が使われますが,寒色系の基本カラーに暖色系の強調色を使うとカードの統一性が落ちて,わかりやすさが低下する可能性があります。

カードを組み合わせて発表資料を作ろう

 カードの組み合わせるときはデザインを変えることでカードの役割を明示できます。今回のカードはGoogleスライドのデフォルト設定を真似て作成しました。白色のベースカードに,紺色の基本カラーでキャプションカードを入れています。そしてキャプションカードのなかで,具体的な内容のカードは,キャプションを縦にして色を入れ替えています。デザインを変えることで示されている内容が他とは異なることが明示されます。

手書きの活用

 ロイロノートの手書き機能を活用することで,複雑な表現も可能になります。グラフィックレコーディング などを活用するためにも,手書き機能は活用したいところです。ロイロノートの手書き機能は,ペンの種類,太さ,色を選ぶことができます。

 手書き機能を利用する際の注意点は,手書きは常に一番上に表示されるため,手書きの上にカードを重ねることができないことです。手書きは全体の調整が終わってから、最後に行うのが良いでしょう。

書き出し機能を使う

 ロイロノートで作ったスライドはpdfか動画で書き出すことができます。

 右上のメニューから書き出すことができます。ちょっとした動画を作りたい場合は良いのですが,動画書き出しはカードの表示時間が5秒/枚に固定されていますので,カードによって時間を長くしたり短くしたりといった調整はできません。
 そこで,解説動画ではpdfで書き出したファイルを画像ファイルに変換して他の動画作成アプリを使って動画を作成することになります。私はPowtoonPremiere Proを利用しています。Premiere Proはとても便利ですが,お値段もそこそこですし,使い方にコツがありますので,無料でも利用できるPowtoonを使って解説動画を作る方法を次回にご紹介したいと思います。

いつもより,少しだけ科学について考えて『白衣=科学』のステレオタイプを変えましょう。科学はあなたの身近にありますよ。 本サイトは,愛媛大学教育学部理科教育専攻の大橋淳史が運営者として,科学教育などについての話題を提供します。博士(理学)/准教授/科学教育