大学院生数の地域特性

 今回はe-statから,就業構造基本調査のデータを使って,全国の大学院生の人数について,Tableauで視覚化してみました。

1 就業構造基本調査とは

 5カ年ごとに行われる調査で,ちょうど2017年に調査が行われたところです。標本規模は約45万世帯で,15歳以上の約100万人を対象に就業状況を調査しています。状況は,5歳ごとの年齢区分で分類されますので,15〜19歳,20〜24歳,25〜29歳,……という形で,職種などの種々の情報が整理されています。今回は,大学院の在学者数について調べてみます。

2 都道府県ごとの大学院在学者数の男女比は?

 博士課程進学者を含む年齢階級(25〜29歳)の大学院生数には,都道府県による人数の偏りがあります。
 就業構造基本調査では,学校種ではなく年齢区分でデータが集計されますので,「大学院生」より詳細な区分はありません。そこで,修士課程修了(24歳)以降になる25~29歳区分の大学院生数でデータを抽出し,縦軸を女性在学者,横軸を男性在学者とした相関図を作成しました(図1)。

図1 都道府県別の大学院在学者数の男女相関(出典:就業構造基本調査2017年)

 図1の斜め線より上に来るのが,25~29歳での大学院生の女性の在学者数が多い地域になります。目立つのは上から順に福岡県大阪府京都府兵庫県です。これらの地域は,女性の大学院生が多いと言えるでしょう。では,女性の大学院生が多い理由は何なのでしょうか。もしかして,大学の設置数が多いことに関係しているのでしょうか。

3 大学設置数と女性の大学院在学者数は比例しない

 全国の大学設置数は,文部科学省の学校基本調査から調べることができます。こちらもe-statを使って,平成28年度の設置数を国公私立合わせて集計しました。

全国の大学設置数(国公私立を含む)
東京都(137校),大阪府(55校),愛知県(50校),北海道(37校),兵庫県(37校),京都府(34校),福岡県(34校),神奈川県(31校),埼玉県(28校),千葉県(27校)…… 全777校,平成28年度学校基本調査

 全大学数(777校)のうち137校(約18%)が東京都に集中していますので,東京に大学が極めて多いことがわかります。図1でも東京都の在学者数が突出して多いですね。一方で,女性の大学院生が多い地域は,大阪府(2位),兵庫県(4位),京都府・福岡県(6位)ですから,大学設置数の順と女性の大学院生在学者数の順は一致しません。大学の設置数が多いから,女性の大学院生が多いというわけではなさそうです。では,女性の大学院生が多い理由は何なのでしょうか。

4 女性の大学院生が多い府県の要因は

 女性の大学院在学者数が多い府県には,2つの要因がありそうです。ひとつは女子大学,もうひとつは女性が活躍する分野に強い大学です。
 図1のデータを,もう少し詳しく分析してみましょう。単純な人数だと都道府県人口が結果に大きく影響します。そこで,25~29歳の男女それぞれの人口で,大学院在学者数を割って,人口比に直しました。これによって,各都道府県人口とは関係なく,それぞれの地域の大学院在学者数の相関を比較できます(図2)。

図2 大学院在学者数を同都道府県同性の人口比で比較(出典:就業構造基本調査2017年)

 先ほどとは若干違った傾向がありますね。男女ともに京都府が突出して高い傾向を示しました。「京都は学生のまち」と言われることがありますが,大学院在学者数からも,その事実が証明できそうです。
 さて,人口比に補正すると,女性の割合が高い県として,新潟県と茨城県,奈良県,徳島県が目立ってきます。女性の割合が高い順に並べると以下のようになります。

京都府,福岡県,兵庫県,新潟県,茨城県,奈良県,徳島県,大阪府(※)
 ※名称が表示されていませんが奈良県の下になります。

 これらの府県の特徴は以下に分けることができると思います。

4-1 女子大学が強い地域

 25~29歳の女性大学院生の在学者数が多い府県,大阪府,京都府,奈良県,兵庫県,福岡県の5府県は,奈良県の奈良女子大学を筆頭に,女子大学が充実しています。例に上げた奈良女子大学は,化学領域では有名な大学のひとつであり,地域の教育を女子大学が担っている面があるのが,これらの地域です。

4-2 女性が活躍できる分野に強い大学

 茨城県,徳島県,新潟県は,茨城キリスト教大学(文学,看護,生活科学),徳島文理大学(薬学,保健福祉,音楽,人間生活),新潟県立大学(国際地域,人間生活)などのように女性が活躍する分野が強い共学の大学があります。大学名の後のカッコ内の学部は,女性の割合が高い学部です。女性が活躍できる学部が多いため,大学院在学者数が多くなるようです。

学部と研究者養成については,以下の記事が参考になると思います。

女性研究者の比率は増えている?【学校基本調査編 part2】
”専門性がもっとも高まる博士課程においても,工学部(2.2%)は女性比率の上昇が認められます。もっとも高いのは薬学部(3%)で,新薬の開発や既存の医薬品の改良のために薬学研究者を目指す女性が少しずつ増えているようです。(中略)。もともと女性が多い分野での女性比率の下降は認められますが,それは研究者を志望する女性が幅広い分野へ進出していることの裏返しかもしれません。”

5 就業構造基本調査から見えるもの

 就業構造基本調査から,25~29歳の大学院生在学者数は,女性が多い地域と男性が多い地域があることがわかります。このように就業構造基本調査を分析することで,その地域の特性がわかりますので,使いこなすと大変便利なデータです。こうしたデータが無料で利用できるのは,大変素晴らしいことですし,総務省統計局のe-statは,グラフ機能や地図を使った集計もできますので,ぜひ利用してみては如何かと思います。

 使い方がわからないと不安な人は,「誰でも使える統計オープンデータ」などがオススメです。無料で学習できる,総務省統計局のオンライン学習講座です。私も勉強中で,この記事はちょうど労働力調査や就業構造基本調査について学んだので復習のために分析した結果です。

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小中学生を対象にした人材育成事業から,学力非依存の能力伸長評価の分析について紹介していきます。学術論文として執筆中の部分もありますので,あまり詳細な情報が載っていない場合もあります。
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