性別による進学率

 「誰でも使える統計オープンデータ」の勉強の一環で,e-Statを使って政府統計データの分析を行っています。今回は性別による進学率を分析してみましょう。

1 在籍数から見る大学進学率

 高等学校在籍者数と大学在籍者数を比較すると,男子の進学率の高さと女子の進学率の低さが明確です。高等学校と大学では在籍年数の違いがありますので,単純に比較はできませんが,年次推計データの最新(2015年)では男子高校生と男子大学生の在籍者数はほぼ同数になっており,女子学生は男子学生より24%少ないことが示されています(図1)。

図1 在籍者数年次推移(出典:学校基本調査)

 高等学校の在籍者数は男女ともに1989年をピークに減少傾向にある一方で,女子の大学在籍者数は一貫した上昇傾向にあります。一方で,男子は1995年あたりからほぼ横ばいで,律速段階にあるようです。そのため,今後徐々に大学在籍者数の性別による差は縮小していくと推測されます。

 また,高等学校の在籍数から団塊世代と団塊ジュニア世代で2度の人口増加があったあと,団塊ジュニア世代による人口増加が起こっていないこと,急速な人口減少が起こっていることも明確です。米国では,ミレニアル世代とよばれる人口が多い世代が消費を牽引しているので,日本の経済低迷は人口減少にあることも見えてきそうです。

2 同一世代の推移から伸び率を比較する

 同一世代を中学校1年生から大学1年生まで比較すると,大学進学で性別による差が8%以上開くことが示されます。2018年に大学1年生になった世代を遡って,中学校1年生からの実数を比較してみましょう。男女ともに高等学校から徐々に減少傾向がはじまり,大学進学で減少幅が大きくなる傾向があります(図2)。

図2 同一世代の在籍者数推移(出典:学校基本調査)

 実数比較では,高等学校の3カ年で性別による差が小さくなっているように見えます。そこで,性別の違いをわかりやすくするために,男子の実数から女子の実数を引いて,男女の全数で割った,性別比率を算出してみましょう(図3)。

図3 同一世代の性別間比較(中学校1年から大学1年まで)

 2015年が高等学校進学(緑色),2018年が大学進学(青色)にあたります。性別による人数の差は,中学校から高等学校への進学で約1%縮まりますが,大学進学では8.5%まで開きます。中学校から高等学校にかけて,性別による実数差が縮まっていることから,女性は男性よりも卒業に向けた準備ができているようです。今後は,こうした女子生徒が,意欲に応じて新たな目標(大学進学)に向けて準備できるような支援が必要なのだと思います。

3 女性への就学支援が必要になる

 女性が将来の目標に向けて大学進学を志す基礎は整ってきています。一方で,女性が大学進学を希望する場合,支援が必要とされる部分も残っています。本年10月の朝日新聞では「「女が大学なんて」進学させぬ風潮、背景にある経済格差」とする記事が掲載されています。出産で退職すると再就職が難しい日本は,女性が大学に行く経済的なメリットが薄いと考えられているようです。記事内で紹介されている,ベネッセ教育総合研究所のアンケート結果でも,親は息子に対しては大学卒業を希望していますが,娘の場合にはその割合が下がることが示されています。

母親3200人へのアンケート「子どもの進学への期待」
”4年生大学を卒業してほしい”
 男子 79.7%
 女子 66.9%
「幼児の生活アンケート」ベネッセ教育総合研究所2015

 親の収入から2人の子どもを大学に進学させるのが難しいとき,娘は息子より大学への進学が難しくなる傾向があると言われています。高い意欲を持ちながら,さまざまな理由で進学を諦める可能性は男性より女性が高いのです。しかし,この格差は,女性の就学支援の充実で解消が可能です。そして,支援によって,才能ある女性が社会で活躍できる多様な人材,多様な価値観が許容される社会の構築は,女性だけでなく,男性にとっても働きやすい社会の構築に繋がるでしょう。

 情けは人の為ならずと言います。意欲を持つ誰もが活躍できる社会,多様な人材が,相互に補い合う堅牢な社会の構築に向けて,女性への支援の必要性が統計データから見えてきそうです。

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