楽しいから好きへの転換

 何かをするときに「楽しい」ことは,とても重要です。では,上達するためには何が必要なのでしょうか。好きこそものの上手なれと言うように,才能を伸ばすためには,「楽しい」を超えて,「好き」な気持ちを伸ばすことが重要です。では「楽しい」と「好き」は何が違うのでしょうか?

1 好きなヒト

 何かが好きなヒトは,それを達成する(創り出す)ために努力を惜しまない人々です。

 表出の仕方は人によって異なりますので,目に見えて活発な行動である場合もあれば,物静かであっても強い意志を持って臨む場合もあります。いずれにしても,何かを「好き」で,その好きな気持にしたがって行動している人は,他人からは無駄な努力に見えたとしても,努力を惜しみません。時間がなければ時間を作り出し,知識や経験が足りなければ経験者の手を借りるべく主体的に活動していきます。こうした努力によって,人によって異なる「何か」を手に入れるのが,好きなヒトの特徴です。 

2 楽しいヒト

 何かが楽しいヒトは,その楽しさが,もっとも大事な人々です。

 楽しいヒトは,「ある行為―たとえば実験や観察―」を行うときに,とてもわかりやすく,派手な行動を示すことが多いようです。実験や観察では,ずっと何かをやり続けたり,大きなリアクションを取ったりします。一方で,楽しいヒトは,楽しさを消費することを目的としているため,楽しいこと以外には消極的です。たとえば,条件を制御し,詳細な記録を取って検討する努力してまで,良い方法を見つけたいとは思いません。偶然に頼って一喜一憂し,飽きれば次の楽しいことを探しに行きます。

3 楽しいから好きへ

 「楽しい」と「好き」は,一見似ていますが,その行動原理は本質的に異なります。なんでも最初は楽しいから入っていくものですが,「楽しい」から「好き」へと転換していかなければ,継続することは難しいでしょう。なぜなら,継続して続けるためには達成感が必要であり,達成感を得るためには努力が必要だからです

 研究では,楽しいと好きの違いは,未知を探究(新たな価値を創造)するときに現れます。未知の探究は,楽しいばかりではありません。新たな価値を創造するためには,非効率的で,無駄なつまらなさを乗り越えた「その先」に辿り着かなければなりません。たとえば,試合に勝つ,良い演奏をする,良い作品を作るためには,退屈な基礎練習をどれだけ行うかが重要であるのと同じです。このような場面で,好きなヒトは何かを達成するために努力しますが,楽しいヒトは次の楽しいことを探しはじめるのです。
 スポーツや芸術では当たり前に存在している,好きだからこそ頑張るという考え方は(程度の問題はありますが)普遍的なものです。未知の探究は,非効率的で地道な作業の連続です。あなたの期待は裏切られることの方が多いでしょう。しかし,期待を裏切る結果は,予想もし得ない成功かもしれません。手を動かさなければ何も得るものはありません。そう。結果(正解)が得られないかもしれないことへの継続した努力,それを続けることができる「好き」という気持ちこそが才能なのです。

4 ジュニアドクター育成塾の目標

 好きな人たちの探究心を導く灯台になることが人材育成の目標です。ジュニアドクター育成塾事業は,楽しいから好きへの転換,そして好きな気持ちと才能を伸ばすために,さまざまな経験を積み,自分の可能性を広げるための活動をしています。

 努力が重要であるとは述べましたが,努力すれば何でも良いわけでもありません。目標に向けて道に迷わぬよう,また新たな目標へ向かうことのできるように,正しく努力を続ける必要があります。どんなに素晴らしい才能を持っていても,それを使いこなせなければ,もっていないのと同じです。人材育成は,受講生の道行きを照らし,自分の位置を確認するための道標となることを目標としています。

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いつもより,少しだけ科学について考えて『白衣=科学』のステレオタイプを変えましょう。科学はあなたの身近にありますよ。 本サイトは,愛媛大学教育学部理科教育専攻の大橋淳史が運営者として,科学教育などについての話題を提供します。博士(理学)/准教授/科学教育

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