東大文系入試の特徴と対策方法に関して

今回は東大文系の特徴と対策方法に関して執筆していきたいと思う。
筆者が受験したのはもう十数年前なので、昔の記憶を頼りに記載したいと思う。(昔の記憶を頼りに書いているので正確性は保証できない)
最新の問題を見たところ、筆者が受験した時と殆ど変わっていなさそうである。これだけ時間がたっているのに問題が変わっておらず少し安心した。
 
東大文系の入口であるが、文科一類、二類、三類に分かれる。
当時は文一が一番難しく、合格最低点も10点近くは文二、文三と離れていたが今ではそこまで差はないみたいだ。
当時の序列は一類>二類>三類であったが聞くところによると、これは今でもそこまで大きくは変わっていないみたいだ。文科二類が文科一類に肉迫しているみたいだが、採点の厳しさも鑑みると今でも文科一類が一番である可能性は高い。実は合格者数もこの3つの科類では異なり、
文科一類→400人程度
文科二類→350人程度
文科三類→480人程度
であるため、単純に合格最低点だけで比較するのはフェアではない。
仮に文科三類の合格人数が文科一類と同じで400人程度だったとすると合格最低点は凡そ8点程度は上がるだろう。しかしそうなってしまうと最難関は文科三類ということになってしまうのだが、東大模試での分布をみても明らかに文科三類は少ないのでこれでは説明がつかない。
このことから間違いなく採点基準は科類間で異なると考えてよいと思う。筆者が受験生の時はから流れていた噂だが数学の採点基準がこの3つで異なるらしい。具体的には入学後に数学をそこまで必要としないかつ苦手な学生が多い文科三類では採点基準が甘めとのことだ。
東大には足切りがあり、そこを突破しないと2次試験に進むことは出来ない。
毎年同じ傾向とは限らないのだが、文科三類の足切り点が一番高いことが多い。背景には文科三類にはどうしても現役で合格したい学生やもうあとがない浪人生が安全パイ的な形でセンターの点数が良くともなだれ込むからだ。
逆に文科一類はそのような事情で受ける学生はいないので足切りの最低点は一番低くなりがちだ。

2次試験の最低点であるが、年度によって傾向は変わるもののセンターと2次試験合わせて350点、つまりセンターで100点、2次試験で250点取れば合格すると考えてよい。
ではこの2次試験の250点をいかに取りに行くかというところだが、実はこれが意外と難しい。
帰国子女でもなく、数学が特別得意でない場合、以下のような配分で250に達する。
英語75点
数学45点
国語60点
社会70点
いずれの点数もその科目がそこそこ得意であれば到達する点数なのであるが、逆に言うとこれでも合格最低点で、ここから少しでもミスすると不合格になってしまう。
本番の緊張感も考慮すると、受験前には以下のような点数を目標としたい。
英語80点
数学50点
国語60点
社会80点
これであれば合わせて270点になるので、合格者平均点くらいには達するが
全ての科目でそつなくこれらの点数を取るにはかなりの勉強量が必要である。
こうやって考えると東大入試はやはりかなり難しい。
以下の2パターンであれば合格はぐっと近づくがそれでも一点突破は難しい。
①   帰国子女パターン
英語90点
数学40点
国語60点
社会70点
これも合わせて260点なのでギリギリではあるが合格出来る。英語は点数がぶれにくい科目なので、実は一番安定して合格に出来る可能性が高いのはこのパターンである。
②   元理系で数学が得意なパターン
英語70点
数学60点
国語60点
社会70点
これも合計で260点に達するので例年であるばギリギリ合格出来る。ただこちらの場合はデメリットもある。それは数学の実力は必ずしも本番で発揮できるとは限らないということだ。東大文系の数学の問題は4問しかないため、結構ガチャの要素が大きいと思う。本番の強烈なプレッシャーの中で必ず60点を取れるかと言われると結構難しい気がする。なのでこのパターンは①と比較すると不合格になっても驚かない。東大文系の場合は数学が得意であれば、有利なのは間違いないのだが数学で一点突破できるほど甘くないというのが正直なところだ。そもそもそ②のパターンでは英語70、国語60、社会70を仮定しているが、これも相応に文系科目が得意でないと得点できない。
筆者の高校では、東大文系に安定的に合格するには、まずは英語で高得点を獲得できるようにすること、そして社会で高得点を取れるようにするようにと言われていた。
個人的にも科目の重要度でいえば、英語≻社会≻数学≻国語だと思う。
このように書くと国語はそこまで重要ではないように見えてしまうが、そこがそうでもなく、東大文系の問題は基本的に記述式であるため、国語力がないとそもそも論述できないので国語力は全ての科目の土台になると思う。
ありきたりな答えになってしまうのであるが、全ての科目が重要であるというのが結論だ。
一番理想的な合格の仕方は、全ての科目でバランスよく得点出来るように穴をなくすことである。
ちなみに東大文系は、地方から合格するのは理系よりも難しいと言われることがある。筆者は関西なので、そこまで不利ではなかったと思うが、それでも首都圏の生徒がうらやましいと思ったことがある。以下の点で地方出身者は不利だと思う。
①   英語が最重要科目である一方、地方には帰国子女等が少なく、幼少期から英語に触れることが出来る環境が少ないため、ビハインドを背負っている。英語のリスニング対策は独特な対策が必要であるため、東大専門塾がそろっている首都圏の方が必然的に有利になる。駿台の東大実践では昔は科目別の優秀者も掲載されていたが、英語に関しては上位層の多くを東京と神奈川が占めていた。恐らく、総合商社やメガバンク等に勤務する父親を持つ子息が上位層を占めていたのではないか。文一二のクラスには7人ほど帰国子女がいたが、ほとんどが父親は高学歴(多くは東大)で日系金融やメーカーに勤めていた。まさしく親ガチャなのであるが、嘆いても仕方ない。
②   数学でメインとなるのは、確率と整数問題である。これらは中学受験経験者の方が有利である。地方は公立高校でメインであり必然的に高校受験組が多数派になるため対策が間に合わない
③   社会に関しては、そもそも二科目を高校でやってくれるところが少ない。基本的に文系受験であれば、社会は一科目の大学がメインだからだ。筆者は世界史・日本史選択であったが、いずれの科目も論述形式がメインであり、扱われるテーマも他の大学では無視されるもしくはスキップされるような論点が多い。これらの論点を深堀して講義してくれるのは大手予備校が中心となる。またいずれも論述がメインであるため、第三者による客観的な視点が必要となるが地方ではそのような「第三者」が首都圏に比べて圧倒的に少ない。とはいっても模試の科目別上位者に首都圏の学生が占める割合は英語に比べると少ないので、地方からでも十分に勝負することも出来ると思う。
上記のような構造的な問題があるので東大文系は地方から合格するのはなかなか難しいと思う。Youtuberのあきぴで氏は富山出身とのことなので、相当地頭がよく努力も重ねたのではないか。

科目別の特徴と対策法に関しても最後に付記したいと思う。
【東大英語】
東大英語は独特でそれ専用の対策が必要になる。以下のような特徴がある。
・とにかく分量が多い。
筆者は帰国子女なので英文を読むのは早かったが、それでも時間は全く足りなかった。模試本番を含めて時間内に全てを解き切ったことはなかったと思う。
途中でリスニングがありそこで集中力が切れてしまうので、時間配分も重要になる。いつもどの順番で問題を解くのか決めるのが重要で在り、東大模試を通じて何回もシミュレーションするべきだ
・問題の形式が独特かつバラエティーに富んでいる
要約問題、不要な単語削除、エッセーのような長文問題、リスニング、短い単語数で要点をまとめて記述する作文問題等他の大学では見かけないような独特な形式の問題が多い。そのため、東大英語で得点を重ねるには東大専用の対策が必要になる。筆者の場合は自分でZ会の通信対策を取り寄せるとともに過去問を解きまくった
・単語力も重要になる
東大英語の場合は、単語力が必要でないと言われることが多い。これは半分本当で半分嘘だが、多くの凡人にとっては単語力はあるに越したことはないと思う。単語力が不要と言われるのは、そもそも単語の意味を問うような問題は出ないし、難しい単語があったとしても文脈から判断することが出来るからだ。とはいえである。そもそも分量が非常に多いため、周囲の単語から推測している時間はないし、単語力があれば途中で立ち止まる必要もないのだ。そのため筆者の場合は「速読英単語」の上級編までは終わらせていた
・リスニングがある
これが最大の特徴だと思うし、帰国子女が他の受験生に差をつけることが出来る所以である。120点満点で30点を占めるため、配点もかなり大きい。
リスニングはすぐに点数が上がるわけではないので、問題を解くのが一番良いと思う。個人的には声に出して長文を解くとリスニング力も身につくし、長文読解能力も着くので効果的な対策法だと思う。 

【東大数学】
東大数学はよく出題される範囲が割と毎年決まっている。整数問題、確率、微分は毎年出されると考えて良い。東大英語や東大社会と比較して特色は少なく、他の大学の問題を解くことも対策になるが、それでも整数問題や確率はかなり難しいので出来るだけ東大の過去問を解いた方が対策になると思う。
筆者の場合は元々理系にいたこともあり、そこまで苦労しなかったが、高校受験組であったため、確率と整数問題には苦しみ、京大と比べるとぶち抜けた点数を取ることは出来なかった。
 
【東大世界史】
600文字程度の大論述が出題されることが最大の特徴である。こちらはかなりの対策が必要になるが、第2問の小論述と第3問の一問一答形式は他の大学と同じ形式である。東大世界史は東大英語に次いで点数が安定しやすいし、努力が報われる科目である。時間をかければ点数が上がると思うので、浪人生で十分な時間を取れるのであれば必ず得点源にしたい科目である。
東大英語の80点と東大世界史の40点で合計で120点を取得できれば
残りは130点で良いのでとにかくこの2つには時間を費やしたい。(逆を言うと残りの科目においては安定してこれだけの点数を獲得できるという保証はなかなかできないのが辛いところだ)
対策法としては、まずは教科書を読んで確り歴史の流れを把握→単語を覚える→過去問を解いていく中で東大が好んで出題する論点を把握し、ノートに都度都度まとめていくという方法で学習していた。
個人的には教科書を繰り返し読むことが一番重要だと思う。
ちなみにこの時に身に着けた記述力や論証力、文章構築能力は大学時代でも役に立ったし、社会人になってからもかなり役立っている。というか東大卒が他の大学卒に一番差をつけることが出来るのは、この文書作成能力である。
【東大日本史】
こちらの科目はこれまた東大特有の問題が出る。第4問の近代史以外は、他の大学では出題されるようなテーマは出ない。経済史の問題が多いのも特徴である。
東大日本史は世界史とはまた対策法が異なってくる。正直細かい話を記憶している必要はないが、大まかな歴史の流れは把握している必要がある。東大日本史の場合は暗記よりも国語力の方が高得点を獲得する上では重要であると思う。
筆者の場合は、教科書を読む→東大対策用の参考書を読む→東大過去問を解きながら東大で重要な論点を把握する→ノートにまとめるという方法で対策していた。
ちなみに東大日本史は一定の点数までは得点は伸びるが、それ以上はセンスが必要になるうえ、点数も安定しないので筆者はそこまで対策に時間をかけなかった。35点程度取れれば御の字、東大世界史と日本史合わせて80点取ることが目標であった
尚、独学しやすい東大世界史と比較して東大日本史の場合は有名な予備校の授業を受けるほうが効果的である。自分に合った講師を見つけることが東大世界史以上に重要になるだろう。
【国語】
筆者は国語がとても苦手であり、現役時代は国語であまりにもひどい点数を取ってしまい合格にギリギリ届かなかった。そのためあまり語ることは出来ないが、弱者なりに行った対策に関して述べていきたい。
東大国語のポイントは120点満点のうち半分は古文・漢文が占めることである。古文・漢文は現代文と比較して努力が報われやすい。他の大学と比較して特色のある問題が出るわけではないので他の大学の問題も十分に対策が出来る。
筆者の場合は現代文はそこまで伸びないかつ点数も安定しないと考え、あまり時間はかけず、古文と漢文ばかり対策していた。浪人時は、古文漢文の点数がかなり伸びたことで点数が安定するようになった。文法と単語をマスターし、問題を解くことで点数を安定させていった。
正直国語力は東大文系に合格する上では土台になる科目になるのだが、一長一短には身につかない上にセンスが必要な科目だと思う。
余談だが、努力が報われやすいという観点で科目を並び替えると以下の順番になると思う。
東大世界史≻東大英語≻東大国語(古文・漢文)≻東大数学≻東大日本史≻東大国語(現代文)
自分はそこまで才能が無いのことが分かっていたので、東大日本史と東大国語(現代文)にはそこまで時間をかけなかった。
 
以上が東大文系の特徴と対策法である。こちらの記事が今後東大を受験する受験生の参考になれば幸いである。