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全文書き起こし!『デジタル・トランスフォーメーション時代の"人"』②

イベント概要
e-learning award2019
ヒューマン・デジタル・トランスフォーメーショントラック

2019年11月13日(水)16:15~18:00
『デジタル・トランスフォーメーション時代の"人"』
デジタライゼーションが完遂され、以後の社会はDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代と言われております。テクノロジドリブンの時代にあって、"人"はどうすべきか。キャリアデザイン・人材育成・組織管理・クリエイター、様々なHR業界の知見者にお集まり頂きそのあるべき姿を追いかけます。

登壇者

TANREN株式会社 佐藤勝彦(企画発案者・モデレーター)
株式会社ウェイウェイ 代表取締役 伊藤 羊一 氏
法政大学キャリアデザイン学部 教授 田中 研之輔 氏
株式会社 固 代表取締役 前田 鎌利 氏
株式会社morich 代表取締役 森本 千賀子 氏 ※順不同

ポイント
今、問われる『ヒューマン・デジタル・トランスフォーメーション』の在り方。/テクノロジー進化に伴い、人財育成、教育の世界はこれからどうなる!?/人財育成領域におけるデジタル・トランスフォーメーション成功事例
>>全文書き起こし!『デジタルトランスフォーメーション時代の"人"』①
>>全文書き起こし!『デジタルトランスフォーメーション時代の"人"』③

▼議論テーマについて

では、本題に移りたいと思います。

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まず一つ目のテーマですが、アナログが大事なのか、デジタルが大事なのか、一体全体どっちなんだと。

二つ目が、課題解決。実はIT側の長けてる方々との討議会を行うと、「もう日本は周回遅れだよ、いまさら何頑張るの?」という声も聞こえてくるわけですが、何からやればいいんだというようなところの課題解決を、少し触れていきます。

そして三つ目、核論ですが、これからが個の時代であることは、間違いない。パラレルキャリアなんていう言葉があります。これからの時代をどう渡り歩いていくか。そこにおけるバイタリティとアイデンティティの保ち方というのを、皆様のお話の共通項でまとめていきます。いろんなところに飛び火したものが、伊藤羊一さんの『1分で話せ』、皆さんどうでしょう、持ってるんだという方、手を挙げてもらっていいでしょうか。いらっしゃいますね。さすがベストセラー。

伊藤:まだまだ潜在顧客の方が、いっぱいいらっしゃいますね。ありがとうございます。

伊藤:買ってくださいとは言いません。もし万が一面白かったら、立ち読みぐらいはしていただいたら。

佐藤:羊一さん、これ、1分で説明してもらいたいんですけど、どこがポイントですか。

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伊藤:要は、「結論出そうね」ということと、「結論には必ず根拠あるよね」とその根拠。根拠を三つぐらい並べるんですけど、そこにはそれを説明する事実が必要だということで、結論、根拠、事実、いわゆるロジカルシンキングでいうところのピラミッドストラクチャー、これをちゃんとつくりながら仕事してますか?ということを、僕は本で言っていて、下から積み上げようとすると結構大変なんだけど、上から結論ありきで、理由を後付けでやって、あとからそこに見合う事実とかを当てはめていけば、もう驚くほど簡単にピラミッドストラクチャーはつくれる。それを皆さん、仕事の場でやってみたらどうかな。そんなことを僕は提唱しております。

▼①アナログ大事?デジタルが大事?その、どちらも?

佐藤:一つ目の議題から行きたいと思います。まずアナログとデジタルどちらが大事なのか、どちらもなのか。

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やはり書家であり、アナログな志を重要視しているお一人目、鎌利さんから、アナログの重要性というのを説いていただきたいんですけど。

前田:今日はアナログの立場に立っているんですけど、使い分けが大事だなと。

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例えば、名古屋の高校で「去年1年間、どんな1年でしたか」と、手書きの漢字一文字でつくってもらったんですね。「すごく伸びた1年です」「それ書いてみて」と言うと、むちゃくちゃ縦棒長く引っ張って、出してきたりする。表現をするときに、アナログの世界ではバリエーションも広くカスタマイズできて、アイデンティティも出せる。そういう意味で表現の幅が広いのがアナログ。デジタルは、ある程度画一的で、誰も見間違えないし誤差も少ないという利便性がある。なので使い分けが大事かなと思います。

佐藤:創造性を広げるというところがポイントですね。私は20年営業畑で、誠心誠意込めて鍛錬だということをプレゼンしたら、「私、応援する」と言ってくれたのが森本さんです。森本さん、営業というフィールドをかなり見てらっしゃる中で、アナログで行う営業とデジタルで行う営業、まさに今、両局面あると思うんですがいかがでしょう。

森本:ちょっとプチ自慢しちゃいますと、例えばMVPとか、営業畑でのトロフィーが30個ぐらいあります。リクルートで外資系の某コンサルティングファームが私の行動履歴を1カ月間追いかけてみた結果、結論としてやっぱりアナログ。特に営業の場合は、直接対峙をして、目の前のお客さまがご自身でも気付いてないような課題を、いかに伴走しながら見つけてあげるかが、求められたりしている。

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当然のことながらツールは大いに使うべきで、業務時間の短縮や、業務プロセスの見直しというの必要なんですけど、相手も気付いてないような課題やニーズを引き出すのは、おそらく温度や息遣いとかからじゃないと見えないのかなと思っておりまして、営業の、ヒラメ筋を使いながら足で接点を持ちながらリレーションを紡いでいくようなところは絶対になくならないと感じてます。

デジタルとアナログは融合する運命

佐藤:羊一さん、そこの辺りは、まさにデジタルで、ヤフーで何千人ぐらいの方を見てらっしゃるんでしたっけ?

伊藤:社員は7,000人ですけど、僕がやってるYahoo!アカデミアは毎年100人ぐらいの受講生を受け入れるので、人数的には全然多くないです。ただ、データはいろいろありますよね。

佐藤:そのデータで切っていくという観点だと。

伊藤:ヤフーという話も後でしたいのですが、FiNC Technologiesってご存じです?スマホで受けるダイエットサービスで、2カ月で結構お金を払って、スマホでやり取りするんですけど、デジタルとアナログが超シンクロしてるんですね。無料版はデジタルのボットが色々言ってくれる。「やったね、羊一さん、3000歩歩けたね」とか、急に8000歩歩いたりすると、「急に歩き過ぎだからストレッチしたほうがいいよ」って、デジタルがアドバイスしてくれる。

で、有料版は、栄養士さんがつく。毎食食べた写真をあげると、AIが画像診断してカロリー計算するのと併せて、栄養士さんがアドバイスをくれるわけです。「このバランスは素敵ですね」「これはちょっと塩分多いですね」という感じで、すごくジーンと来るわけです。頑張ろうって。

FiNCをやってると、デジタルとアナログって、融合する運命にあるんだなっていうのは、非常に強く痛感します。

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もう一つ申し上げたいのは、要するに今この瞬間にあるデジタルとアナログを議論してては、絶対駄目で、ここから先どう変わっていくのといったときに、デジタルってこれまで以上に、どんどん私たちの生活に入ってくるというベースで考えなきゃいけなくて、IoT、Internet of Thingsというとよく分からないんだけど、Internet of Everythingと、全てのものがインターネットと繋がるとなると、生活が激変するに決まってる。

皆さん方が持ってるスマホとか、当然インターネットにつながってますよ。でも座ってる椅子は、インターネットにつながってない。これ、つながると何が起きるかというと、「そこのゾーン、二酸化炭素が少ないからか、集中力がなくなってきてるぞ」みたいな情報があって、「じゃあ、こっちに向かって話そうか」という、そういうシグナルを得られるかもしれない。そういうふうになってくると、今のわれわれが考えてるレベルのデジタルの活用じゃない、これまで得られなかったデータが色々得られる時代になってくるので、そういう話で考えていくと、間違いなく今よりデジタルをどう活用していくのか、考えていかざるを得ないと思う。

ちょっと想像してほしいんですけど、インターネットの中にあるデータって、2010年から2020年にかけて、倍。ドカーンと40倍に増えているんです。2020年以降は、さらに増えていく。そこの中で、われわれ仕事したり生活することになる。そこを前提にデジタルの活用を考えないと…アナログは絶対なくならないけど、デジタルどうやって活用していくの?は、われわれみんなが考えなきゃいけないことなのかなと思いますね。

佐藤:その世界観を正しく現場に伝えていく工夫というのは、どうされてるんですか。

伊藤:分からないですよ。だってInternet of Everythingと言ったところで、椅子に全部センサーでインターネットにつながってくるんだっていう世界、誰も今まで経験してない。分からないからこそ、全員にチャンス。今まで考えてもいなかったようなデータの活用が、できるようになるんだと。ここはゼロからスクラッチで考えられることなので、「みんなも分からないっていうのを前提にしようぜ」という話をよく言ってます。

佐藤:社会人に問い掛けるのと、学生に問い掛けるのとでは、またちょっと違うのかな?と、そのあたりタナケンさんのコメント欲しいんですけど、どうなんですか。

田中:ちょっと一回戻りますよ。アナログとデジタル、何が違うのかをちゃんと理解しなきゃいけなくて、僕自身の理解は、アナログというのは、「連続する時間と空間」なんですね。この身体を介して今ここにいる。つまり、アナログというのは連続性です。デジタルはこれを積極的に破壊していくんです。ここにいなくても、この空間とつながれる。ここにいながら他の人ともつながれるとか。身体を介して「非連続であるような時間と空間」をつくり出す。その上でデジタルとアナログの関係をやるときに、僕自身がベンチャー企業の顧問をやる中で、社長に言うのは、「本当にそれつくりたいの?」という問い。

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例えばテクノロジー的には、今、羊一さんが言ったように、本当に皆さんがこの話をどれぐらい理解しているか、どこに興味があるかなんていうのを、例えば、セミナーを開催して事後のアンケートで取るなんて、結構アナログなやり方な訳で

伊藤:リアルタイムで取りたい。

田中:例えばslidoは、相互コミュニケーションを生む。皆さんとわれわれが共有しなきゃいけない問いは?みたいなことを、1週間ごとにレポートにされてももったいないわけじゃないですか。

だから、デジタルというのは常にアナログの、前田さんの言葉で言うと、アナログの連続性の空間の可能性を、どこまでも際限なく広げていってくれなければ駄目なんだけど、目先の細かな連続的な可能性のある空間を逆戻しのように、限定しちゃうようなデジタルサービスが多くて、こんなの要る?というのを、問題意識として持ってますね。

クリエイターとしての創造性を引き出すためのデジタル

佐藤:クリエイターとして必要なものの判断、森本さんとか鎌利さんにお聞きしたいんですけど、取捨選択する上で大事にしてるものはなんですか。これ、人に使われるものなのか、要るものなのか、創造する側の視点はどこに着目してるのかなと。

前田:クリエイターという立ち位置で言うと、自分が作りたいものをちゃんと作れるかというのは、まずある。そのとき参考にするものは過去の作品だったり、名画だったり、そういったものを学んだ上で、自分にしか出せないものを生み出す。これは相当「たのしんどい」んですね。その「たのしんどい」は、すごく大事。例えば海を見たときに、「海」って書こうと思う僕もいれば、輝く水面を見て「輝」という字を書く人もいる。そこがアナログの持ってる深みの部分ですかね。AIで統計的に「この海辺に立った8割の人が「海」と書いてる」というデータがあったとしても、僕が「海」を書きたいかどうかは別。

田中:書家の鎌利さんの感性。これまで書き続けてきたから形にできるんだけど、この前田さんの感性を伸ばすために、デジタルのサービスが入り込んで、前田さんのこの能力を高めていけるものなのか。究極的な話なんだけど。

前田:お習字って不思議なもので、絵と違ってサンプル少ないでしょ。ラッセンの絵って言われたら頭に浮かぶじゃない?でも日下部鳴鶴の書が好きって言っても、誰よそれってなる。絵はいっぱい見てるから、好き嫌いがすぐ出てくる。でも書って、左に置いてあるものを、とりあえず上手に書いたら赤い丸がもらえて、ちょっとでも違ったらバツをもらっちゃう。

感性を伸ばすという観点で言うと、僕らはサンプルをどう増やすかというところで、今までは美術館に行くしかなかった。でも、デジタルなら全部見れるわけ。これはすごく大きな変化だったなと。

伊藤:それは多分、将棋とかもそうだと思うんですね。将棋もデジタルがない頃は、棋譜を自分で書いたり、見たものしか得られなかったんだけど、デジタルがあるからいろんなもの見れますよね。

多分デジタルというのは、ベースの部分をめちゃくちゃ豊かにして、そのベースがあるからこそ感性が育つ素地は育てられるというか、そういうことかなと。そこから先は個人ですよ、という世界は変わらないんだけど、見た数だけやっぱり感性が育つ素地は育てられる。おそらく、教育において皆そうだと思っていて、最初から感性と言ったところで、サンプルなしにできますかって。できるわけない部分が、デジタルに頼ると、相当なレベルでガーッと増幅される。

前田:本当そうで。井上有一という書家がいて、サンプルで幼稚園の子が書いた字をいっぱい集めたんです。書家が見てもどれもこれもユニークで、造形も素晴らしいというものがコンスタントに出てくるわけじゃない。偶発的だけど出てきて、いいもの、面白いものがあるというのをピックアップしていくと、それなりのフォントができちゃうわけです。それを恒常的に再現性をもってやるというのは、幼稚園児は無理。自分の中で「これ好き、嫌い」という軸を持つ過程では、やっぱりサンプルは必要になる。

デジタルを基盤にした学習環境、人材育成へのチャレンジ

佐藤:その辺、母の顔でもお聞きしたいんですけど、森本さん的には、子育てにもそういう観点ってあるんですか。

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森本:次男が生まれたときには、デジタルが結構当たり前で、小さなときからiPadを遊び道具に与えていたんですけど…クレヨンのいろんな色を混ぜるということをアプリで小さい頃から試してるから、この色とこの色を併せたらこうなるというのを自然と学習していることもあって。長男と、色使いが全く違うんですよ。すごく彩りが豊かな絵を描くようになったので、小さなころに無意識の中にインプットされてるがゆえに、そういうチャレンジをしてみようということに、繋がってるのかなと思いますね。

佐藤:デジタルが基盤にあると、知の才覚はもっと広がるはずだということで、デジタルを否定してる側面は、ほとんどなさそうですよね。

田中:解けない問題が一つあって。教育業界、僕も娘がいるので授業見に行くとタブレットが入ってて、学習環境が良くなってるんですよ。けど例えば都道府県別とかの学力、統計で見たときに、過去10年間の間に、東京都の中二の平均学力が上がってるかといったら、上がってないんですよね。ここがあやしくて。DXは、加速度的に進んでいて、各分野においてそういうのはかなりこう、あえて言うと、つまみ食いはしてるんだけど、バーッとやり出して、それ昔なかったわけだから、天才児みたいなのが出てきてるんだけど。平均的、集合的なところでは、上がってないような気がして、それはなぜ?みたいな。

伊藤:今のDXって、教育の現場も、今われわれが仕事の中でやってるものも、アナログでやってたことをデジタルに変えるということを、忠実にやってるわけ。そうすると、コストダウンにはなるんだけど、新しいことやらなきゃ、そりゃ学力は伸びませんよねと。例えば通信なんかにしても、うちの小学校がフィンランドの小学校とつなぎますみたいなことを、今までできなかったわけですね。それをやれたら、間違いなく、「フィンランド、こうなんだ!」みたいな驚きは生まれるわけで、その辺新しいことやれば多分変わるけど、今は置き換えてる状態ですよね。

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森本:教科書が単にiPadになるという程度。

伊藤:で、コストダウンはコストダウンですごく大事で、ソフトバンクは、就活のエントリーシートをIBMのAIエンジン、ワトソンに読ませて判断してるわけです。これでコストダウンがすごくできてるわけです。なんでかと言うと、ワトソンに全部判断を任せるじゃなくて、要は正答率7割ぐらいなんです、統計でやってるから。それをどうするか。ワトソンが「OK」と出した人は、3割ぐらいいまいちな人がいるんだけど、全通しする。ワトソンが「駄目よ」と言ったとこだけ、その中にいい人がいるから、全部人が見る。

田中:そんなとこは、すごいあります。あえて今、羊一さんのワトソンに付け足していくと、じゃあ、ソフトバンクは、これだけのグローバルリーディングカンパニーなんだから、そこに受けに来てくれた就活生のフィードバックを、彼らの育成につながるような形で、もう一歩踏み込んで欲しい。採用から育成へと。それがDXができる可能性じゃないか。コストダウンプラスアルファのところまで踏み込んでくれないと、もったいない気がします。

伊藤:そこは多分、誰がどうやったらいいか、誰も分からないわけです。何やるかっていうのが大事で、今までないデータとか、今までないとことつながるとかというところを、どうやって生かすかという話なので。逆に言うと難しいんだけど、横一線の勝負なんだろうと思う。

田中:そこがDX。

佐藤:非常に過熱してきてますので、ちょっと羊一さん、ここで1分でまとめてください。まず一つ目のところを、結論から言うとどうでしょう。

伊藤:結論としては、デジタルのデータ量はどんどん増えてるし、みんなつながっていくので、われわれの仕事する上でも、生活する上でも欠かせないものである。ただ、アナログにはアナログにしかないものがあるというのは、皆さんご承知のとおり。そのうえで、今までのものを単にデジタルに置き換えるだけではなく、アイディア次第で、新しいものをどうつくっていくか、「デジタルで何ができるんだっけ?」「俺たち、何がしたいんだっけ?」と思いながら、新しいものに果敢にチャレンジしていくのが重要だと思います。

佐藤:素晴らしい、まとまりました。そんな体でやっていきたいと思います。二つ目の議論に移ります。

▼②DX対策、すでに周回遅れ!どうすれば米中に対抗できる?

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DX対策ということで、ITに得意な方々は、GAFABATH、BATHは知らないという方は、ぜひ調べていただきたいんですけれども、BaiduAlibabaTencentHuawei。特にゲームとかやってる方はTencentはおなじみですね。翻訳機などはBaiduのエンジンがすごいと聞きます。そして記憶に新しいのは、Huaweiの台頭ですね。そういったところから、すでにアメリカに頼らずとも、中国だけでもとんでもない企業体ができようとしている。GAFA、BATHも含めると、日本は周回遅れだよと。特にわれわれのようなスタートアップが、ベンチャーキャピタルと話すと、こういうお話になりがちなんですね。

そんなものご縁もないよ、知らないよ、そんなことどうでもいいよという観点もあるんじゃないかなと思っております。この辺、どうでしょう。一番近しいのは、スタートアップメンターをやられている羊一さんとか、森本さんとか、どうですか。

人事データの3大病、バラバラ病・グチャグチャ病・マチマチ病とは

伊藤:People Analytics Labの話をしたいと思いますけど、人事っていろんなデータあるじゃないですか。採用のときの面接、評価とか、それ以外にも日々の勤怠のデータとか、社食で何食べてるかというデータも取ってるんですよ。

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そうすると、一社員を一レコードとして、入社から退社までデータ取ったら、すごいことが起きるんじゃないか。そういうことやりたいと思って、People Analytics Labをつくったんです。いろいろ分析し始めたんです。ところが、1年で「これは駄目だ」っていうことで。

なんでかと言うと、人事データの三大疾病と呼んでるんですけど、バラバラ病、グチャグチャ病、マチマチ病。

バラバラ病。要するに、勤怠、労務、評価のデータと、皆さん多分同じところにないんですよ。こっちはエクセル、あっちはアクセス、これは基幹データみたいなことで。SmartHRとか使うと、そこら辺がある程度カバーできるんですけど、使っていないとどうしてもバラバラにデータを保管している。

そしてグチャグチャ病。例えば男性を、男と書いてあったり、Mと書いてあったり、それ合わせるだけで気が狂いそうになる。Yahooでデータサイエンティスト、人事専門に1人配置して色々分析してもらおうと思ったんですけど、データのクレンジングだけで一苦労。

マチマチ病は何かと言うと、人事評価なんかそうなんですけど、今まではAとBとCの項目をやってたんだけど、Cの項目やめてDにしようとやった瞬間、連続性なくなるんですよ。

ということで人事データをそのまま分析しようと言っても、無理じゃんとなった。

とにかくデータベースを1年かけて構築して、今、Yahooのデータが、ようやく一つの場所にどんどん入るようになりました。

本題はここからで、それをあるセミナーで恥を忍んで申し上げたんですね。そしたら、「伊藤さん、うれしいこと言ってくれました」と言って、大企業の人たちがみんなその三大疾病に悩んでる。でもそこを一元的に管理しないかぎり無理なんだというのが今の日本のHR、特にデータ関連の現状なんです。
でも逆に言うと、ほとんどの会社がこうですから、データをちゃんとため始めたもの勝ちなんですよ。そうすると、まずはデータをしっかりとためて活用すれば、日本の中では優位に立てるチャンスかなと、言えると思いますね。

「ここでどれだけ次の世界観、未来図を描けるか」

佐藤:データを統合させるところの苦しみというのは、教育の現場も一緒なんだと思うんですけど、タナケンさんのところもそうなんですか?

田中:大学もそうだですね。この前面白かったのは、大阪大学の佐久間洋司さんと登壇してて、「AIとかIoT系、特にAIエンジニアで優秀な人はどこ行ったらいいですか。」とフロアの方に聞かれた際、「データをしっかり取ってる会社に行け。」と。

AIエンジニアなんて、データがなかったら全然力を発揮できなくて。どこが取れてるのかが問いになってて、今の話につながるんですけど、GAFAと日本は周回遅れという話。

データを取る話もそうだし、プラットフォーム型のグローバル事業というのが、この10年で時価総額で言うと、ガーッと変わったわけです。その間に周回遅れになったというのは、世論としてはあるんだけど、次の目で、DXというのは、羊一さんがこれだけ繰り返して言ってるように、横一線だと。

そのときに、ここでどれだけ次の世界観、未来図を描けるか。本当の意味でのデザインシンキングができる経営者なり会社が、どれだけ生まれてくるのかなというのは、すごい感じていて。大学の中にいると次世代育成というのが結構メイントピックなので、常にそういうことを言ってますけど、なんか見てると、本人たちの可能性、自己の能力がどこまで破壊的に伸びていくかということが、特に今の学生は、ほとんど分からないよね。もっと言うと、ブレーキをかけちゃうみたいな。僕、私はそんなのできないから、箱があるところに入って、分かりやすいサービスをやりますみたいな。

佐藤:そもそも世界観が狭い?グローバルに行ってない?

田中:狭い広いというか、次の世界に行かなきゃいけないので。やっぱりその点、孫さんは尊敬できるのは、あの人、そこは考えてる。目に見えてる世界とは違う世界で、なおかつ今の世界の不満をどう解決するのかというのを、われわれは多分ずっと問い続けなきゃいけなくて、それをやらないんだったら、別にDXなんか要らないわけです。そこを問い続けられるかどうかというのは、ポイントで。

伊藤:少なくともeラーニング関連で言うと、リーダー開発、人材開発という側面で言ったら、どこも何もできてないですよ。世界中の会社が横一線だと思ってて。

佐藤:そこ、重要ですよね。

伊藤:多分、データをためた者勝ちだと思いますよ。誰もできてないんだもん。人事全体と言うと、育成ということに関して、アイデアの前にデータためるっていう、地道なことができるかどうか。

佐藤:グランドデザインが重要であるってことですよね。

伊藤:いきなりためろって言われても、よく分からないので、何やりたいの?というところから…

森本:違う観点で言うと、私もスタートアップの支援をさせていただいて。さっき田中先生がおっしゃったんですけど、今のスタートアップの若き経営者って、デジタルを手段として使わなきゃとか、サブスクモデルをやらなきゃとか、そういうことにとらわれていて。

本来の日本人の持ち味のおもてなし、要はお客さまが本当に何を求めてるのかという、そもそも何のために起業するのかみたいなところが、抜けている起業家が少なくないなという印象があります。

佐藤:鎌利さん的にはどうですか。もともと孫さんの”感情を揺るがす”プレゼン資料つくらないといけないから、まさにその”世界観を見せるヒト”の懐刀として作ってたわけじゃないですか。

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前田:ここのテーマ周回遅れだということを前提として、米中に本当に対抗するかどうかなんですけど、そもそも国家としてデジタルを、どこまで担ぐかというのが、まず一個あって。今回の電子マネーもそうですけど、ここまでワーッと仕切ってても、僕は小銭を持ち歩きたいわけですよ。

佐藤:小銭を持ち歩きたい派なんですね。

前田:僕は小銭入れを絶えず持って、チャリッと払うシチュエーションを求めたいんですね。おそらくこれからのネイティブな子たちって、お金は全部、硬貨見なくて育っちゃうわけでしょ。そうすると、5円玉の価値って、今、お賽銭もチャリーンでしょ。そうなってくるとお金って、教育の中でどう位置付けていくのか。

何が言いたいかと言うと、僕ら日本が対抗するとき、軸をどこに持ちたいかというのがすごく大事で、そもそも何をやりたいのかというところがないといけない。日本が戦うと言ったとき、GAFAと比べて何を軸にして勝った負けたを言うか。DXの日本の土俵の話はここなんだよ、だから別にGAFAでもない、BATHでもない、われわれはここなんだ。それで勝ち抜ければいいんじゃないかなと。

佐藤:さっきの羊一さんの軸足の部分と近しくて、日本が何で勝てるかの定義がちゃんと先にされていることが重要。

佐藤:これで結論見えてきたと思うので、二つ目の結論と根拠と事実を、伊藤さん。

伊藤:何をやるのかが大事で、メディアとかは、GAFAと比べてどうだとかなんとか、言うんだけど、別にそんなのどうでもよくて、「自分たちが何をするねん」ということが何より大事。ビジョン描いて、戦略つくり、それを実行していく。とは言え、海外と比べると日本の企業というのは弱いところがあって、ちゃんとそれやろうよと。今の皆さんの話をプラスアルファ解釈して言うと、そういうところが何より大事で、デジタルの活用もその流れの一環なのかなと、そんな感じがします。

▼③これからは個の時代、バイタリティとアイデンティの保ち方

佐藤:主体性とか、アイデンティティみたいなものが入るので、そうなると三つ目のスライドでつながってきますよね。これから個の時代なので、バイタリティとかアイデンティティとかそういったところの話になってくるんだろうなと考えていて。ここで書籍『プロティアン』、という名称で、まさに個の時代が来るぞと、パラレルキャリアなんていう言葉が、最近人事畑のところでも出てきてると思いますし、採用ではあえて外に広告打つんじゃなくて、仲間から紹介を受けてもらうリファラルということも、商流としては出てきました。個がフォーカスされている時代にあって、タナケンさんまさに『プロティアン』、プロテインとどう違うのかを、ぜひ語っていただきたいんですが。(苦笑)

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田中:キャリアの理論で、僕が3年前ぐらいからこれだと思って集中的に英文を読み込んだのが、プロティアンというキャリア論です。社会変化に対して、今の羊一さんの話じゃないですけど、自分たちが変幻自在に、ニーズにシフトしていく、成長していくというキャリアの概念。今までのキャリア論って、本人の時間軸がスポッと抜けてた。トランジッション、横移動みたいな話でしたが、そうじゃなくて人生100年時代の時間軸の中で、どのシチュエーションでどう成長していくかをとらえたもの。

佐藤:なるほど。では、お題は[集合]でやるべきか?[個]に最適化していくべきか?議論になります。

田中:僕は、佐藤さんからこれをお話し頂いて面白いなと思った。「DXと前の時代で何が違うか。」DXにやってほしいことがあって。例えば大学の授業で300人に90分マイク1本で教えるじゃないですか。その授業を受ける前と後で、どれぐらい能力開発できたかを考えるんですよ。そうすると、集中してない学生、携帯使ってなんかやる学生もいるとなって、そこでDX何かできないかなみたいな。今やれてるのは、例えば出席を取るとか、slidoでコメントを出すみたいなこと。それってさっきの話に戻りますけど、表面的なことしかやってなくて、便利にさせただけみたいな。

それって、300人紙に書かせてワーッとやってた頃のほうが能力上がってたりしたとか、声のいい先生が朗読してくれたら琴線に触れて、90分前と後で全然世界観変わったみたいなことがあるんだけど、今ってそれより劣ってるんじゃないかって、デジタルで何をやってるかと言ったら、均一化とか統制なんですよ。

例えば、今の英語の混乱しちゃってる4技能もそうなんですけど、同じ問題を出して、外注させて、同じ問題解かせて、それを大学の受験に入れる入れないみたいな話をしてるのは、デジタル時代の話じゃないですか。だけどDXになったら、もっと本質的なことを議論しなきゃいけなくて、その英語を受けたAさんが、受けたことによって、次の3カ月までに何を伸ばすか。そこに向かっていかなきゃいけないのに、個の時代だと言いながらも、デジタルの中でまだ止まってるなと思いますね。均一化、効率化、画一化までのテクノロジーの利用でしかない。

伊藤:今、それチャレンジし始めてるの。Yahoo!アカデミアで、何やってるかというとめっちゃプリミティブで、紹介するのも恥ずかしいんですけど、要するに全セッションにおける振り返りや学びの言語化したものを、ずっと時系列で取り続けることをやっていて、本当に成長したかどうかを見たいじゃないですか。まだ有為な相関は出てないですけど、全振り返り、セッションだけじゃなくて、日々の日記みたいなことまでとにかくずっと記録して並べてるんです。言葉がどう変わっていくかということ見る。まずはテキスト、言葉としてため続けるということをやり始めてる。

田中:すごい興味あります。

伊藤:やっぱり成長している人間は、ちゃんと振り返りをしてる。それは明らかに有為に相関してる。要するに、さぼってるやつは成長しない。ちゃんとやってると、どんどん成長していく。社会人の成長はどうするといいかっていうと、行動して、学んで、振り返って、ハッと気付いて、それをまた行動してということの繰り返しのみ。

田中:プロティアンで言うと、成長を促すとき、個々人に戻ったときには、その成長のスピードはバラバラでいいと思ってるんですよ。デジタル時代は、横一線でよーいドン!だからジャッジしたときに、なんでもそうだけど、売り上げ未達、達成したみたいな話のとき、そこは成長は、これはぶつかるかもしれないけど、ビジネスシーンではそんなぬるいこと言ってられないですけど、教育の現場には、それは合ってます。大学4年間のうち、この学生は2年の後半に伸びてくる子と、4年の前半に伸びてくる子とバラバラなんです。でも先ほどのサイクルは伸ばさなきゃいけないから、いかに教育という現場で画一指導が無駄かというのは、誰もが問わなきゃいけない。

森本:私の息子は、ライザップゴルフに入りまして、まったくの素人としてゼロからスタートして短期間でスコアを90切るまでに成長しました。仕組みをよくよくのぞいていたら、まさにサイクルが個別に対応されていて、リアルのアナログの部分とデジタルの部分をものすごく上手に使っていて、その人のペースに合わせたラーニングのプログラムが組まれていました。それをちゃんとチェックする機能がある。それに対しての指導が入っていて、まさにPDCAサイクルが秀逸でした。

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佐藤:データ基盤の中で、しっかりと個別最適な教育プログラムが完成されていた?

森本:完成されてる。

佐藤:さっきのFiNCもそうですよね。TANRENもすごい細かいデータから育成する観点で同一ですね。

森本:そこに欠かさずあるのは、インセンティブなんです。本人が頑張るその掛け声、励ましなどタイミングよく備わっているのが、非常に優れてるなと思います。

佐藤:そうすると、メソッドって画一的にできあがってきてますよね。

伊藤:方法としては、そうだと思いますよ。方法論は、振り返って、気付いて、行動してというPDCAを回していく、これをいかに高速にするかということと、エンパワーするためにデジタルが活用されていくという結果としての成長というのは、今タナケンが言ったみたいにずれていくっていうのは、全然ありで。同じ方向目指すんじゃなくて、スタート変えて回すところが、FiNCとかは確立してきてるので、あとは日々の仕事でもできてくるっていうことなんでしょうね。

個別最適化の基盤たるデータ活用のグランドデザイン

佐藤:スライドで言う成果というところが、データの鍵を握るのかなというところで、成果をもとに成長の過程に定点観測のデータがあるから、個別指導プログラムが走っていくんじゃないかと。ちょうど今その中間点に、日本はいるんじゃないか。

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伊藤:FiNCで確立してきているということは、「研修の世界は横一線だよ」って僕言ってたんですけど、そこを(データ)活用すれば…コーチングそのものですよね?!

森本:まさにコーチングです。その技術をちゃんと…

伊藤:企業の研修でも、もっともっと活用してもいいですよね。

森本:そう思いました。個別指導重要ですね。

佐藤:三つ目の最後のところ、テーマの区切りとして、個の時代、バイタリティ、アイデンティティ。

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今のお話を見ると、やはりデータの基盤を吸い上げるというのが、まず結論として重要ですよねと。ただそれのグランドデザインみたいなものが描けてないと駄目じゃん。なぜならばと言われれば、結局バラバラで、使いこなせなくなっちゃうから、先にデータ統合を意識したやり取りが重要だし、個のメソッドで言えば、いいモデルがライザップとかFiNCとか出てるんだから、そういう個別最適できるところまで来てるんだから、教育も同じである、そんな観点でよろしいですか。

伊藤:あともう一個追加で言うと、結果としての成長のスピードとか、どういうふうに成長していくかというのは、人それぞれでいいというところを…要は、提供側が許容するって大事だと思う。

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Special thanks !! @Mayumi Kamio

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