平和展を見る中学生

平和の担い手へ―どう伝える 戦争の歴史―〈2〉 上越ゆかりの識者に聞く

 太平洋戦争を実体験した世代が高齢となり、当時をリアルに知ることは難しくなってきた。次世代の平和の担い手を育てる教育現場では、体験者の孫世代が教壇に立つようになり、戦争は遠いものになりつつある。

◇議論・熟議の場が必要

 上越教育大大学院の中平一義准教授(社会科教育)は、平和教育について「平和をどう守るか、について子どもたちの議論・熟議の場が必要」と話す。

 子どもと太平洋戦争は時間的に大きく隔たりがあり、イメージしにくいだけでなく、平和を守る手段は複数存在するためだ。「互いの意見がどこまで一緒で、どこから違うかを整理することが必要」と説く。

 学びの場を広げることも一つの手段だ。「学校全体で戦争について考える日があってもいい。将来の平和な社会をいかに構築するのか熟議できる場、その際に過去の戦争の事実が踏まえられるような内容、それが両方存在するのは学校教育だ」と話した。

 同大学院で学んだ経歴を持つ都留文科大の西尾理教授(平和教育)は「太平洋戦争だけに依拠して今後も平和教育を続けていくのには、限界がある」と指摘する。「戦争体験者がいなくなることでリアリティーが薄れ、今後その重さはどんどん変わる」

◇今後必要なのは「平和構築」

 西尾教授は、戦後日本が一度も戦争の当事国とならなかったのは「戦後平和教育の成果」と評価するが、今後必要な平和教育は「平和構築」だとする。

 「戦争や平和の問題をある程度コアにして、シリアやアフリカ諸国など現在起きている紛争を扱う必要がある。紛争後の平和維持、次の紛争を生まないための教育。そこに貢献している日本人は多くいる。不戦や過去の悲惨な経験を知るだけでなく、今後必要になるはずだ」とした。

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