インパール作戦などの戦争資料と平田さん

平和の担い手へ―どう伝える 戦争の歴史―〈3〉 上越市の「平和展」事業

◇時勢にあったテーマ設定 大半は個人所有物

 太平洋戦争当時の上越市の様子を、当時の資料や遺品などで伝えている「平和展」。広島平和記念式典派遣事業と同じく平成8年から、映画鑑賞会と平和に関するポスター展として始まり、同20年から平和展に名称変更。同28年からは出征や当時の遊びなど、テーマを決めて展示を行っている。

 市共生まちづくり課の古川浩子共生係長は、「興味を持ってもらうため、時勢に合った内容を考えている。展示内容、展示物はなるべく上越市に関係あるものを選び、戦争体験者の講話なども取り入れている」と工夫を語る。ただ市での戦争関連資料の収集には限界があり、個人の所有物が展示の大半を占めているのが現状だ。「戦争に関する遺物を処分するのであれば、市で受け取りたい」と呼び掛ける。

◇展示品が語る戦争の記憶

 板倉区の浄光寺住職、平田真義さん(67)は平和展に所蔵品を貸し出している一人だ。太平洋戦争をはじめ日本の戦争に関する遺物を収集し、その数は5000点を超える。父で平成20年に亡くなった端然さんは、太平洋戦争中のインパール作戦から生還。真義さんは子どもの頃にその体験を聞き、自分で聞いたことを後世に伝えるための資料として遺物収集を始めた。

 平田さんは元教員。「平和教育の在り方が問われているが、戦争を話題にしてこなかった環境にも問題があるのでは。親が伝えず、勉強でも現代の戦争を伝えない」と懸念する。各地で講演し、命の大切さについていつもこう伝えている。「自分は両親や祖父母など、多くの命のリレーがあって、ここに存在する。その中の一人でも欠けたら、自分は生まれていない。あなたの命はあなただけのものではない。戦争はそれを、無理やり奪ってしまう」

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