_ブログ用_文字なし_ぺるそな_ハイドアンドシーク

【小説(サンプル)】『ぺるそな@ハイドアンドシーク』プロローグ かくれんぼ@もういいかい

(サンプルは第6章までとなります。第7章以降を含めた全文は有料記事として公開します)


◆ プロローグ かくれんぼ@もういいかい


 いつもの夢だった。

 幼い頃の記憶。
 何年前だったかは定かじゃないけど、まだかくれんぼという遊びを必死になって楽しめていた頃だ。

「もういいかい」
「もういいよ」
 遠くで、誰かのはしゃぐ声が聞こえる。

 家から少し離れたところにある公園だった。空には太陽が高く上っていた。
 鬼は誰で、一緒に遊んでいたのは誰で、どういう経緯でかくれんぼをすることになったんだっけ。
 いつも考えてはみるけど、思い出せない。これが実際にあったことなのか、それとも単なる空想の出来事をただ夢として見ているだけなのか、それさえ曖昧だ。
 まあ、そんなのはどうでもいい。
 かくれんぼなら、鬼に見つからなければいいだけだ。

「みいつけた」
 また遠くで声が聞こえた。
 まだ私が見つかる気配はない。

 昔から、かくれんぼには自信があった。
 隠れることも、隠すことも得意だった。
 声を出さないように。音を立てないように。絶対に見つからないように。改めて細心の注意を払う。
 どれくらい時間が経っただろう。日が傾きかけていた。
 いつの間にか、一緒に遊んでいた友達の声はおろか、足跡すらも聞こえなくなっていた。

 かくれんぼは、鬼から見つからないように身を隠すゲームだ。逃げ続けて、隠れ続けられる人が強い。
 このままずっと隠れていれば私の勝ち。下手に物音を立てなければ誰にも見つからない。そう思っていた。
 けど、ふと疑問が浮かんだ。
「勝ち」って何? 鬼は全員見つければ「勝ち」なのかもしれないけど、隠れるほうには「勝ち」ってあるの?
 そうして隠れ続けた結果、私は一人、公園に取り残されていた。

 そう、私は気づいちゃったんだ。
 誰にも見つからなかったら、ひとりぼっちになっちゃうことに。

 ──私の夢は、いつもここで終わる。


-----------

次 → 『ぺるそな@ハイドアンドシーク』第1章 朝夕@スイッチング