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八戸~奥入瀬~十和田湖の旅日記

 旅日記です。前に書いたものです。

 きっと、もう一度奥入瀬へ
東京生まれ、東京育ちの私にとって「青森」というと「りんご」という単純なイメージしかありませんでした。今年になって二十年来の友人が八戸に嫁いで出産をしたのでお祝いを兼ねて私たち夫婦は九月七日~十日まで八戸へ旅立ちました。ちょうどJRの「カップルチケット」(大宮から青森県のJR四日間で乗り放題)というかなりお得な乗車券をにぎって…。そんなことでもなければ、一生青森県には旅行しなかったでしょう。
八戸に着いたときの第一印象は、まさしく「空気」でした。空気がしんと、肌にささってきました。それと同時にはじめて空気を吸った胎児のような、体中に酸素が送られるような感触を覚えたのです。「なんか、空気が違うね!」思わず夫に言いました。夫も同じように感じていました。それから、八戸に住む友人の家を訪ね、仕入れておいてくれた「十和田牛」を思う存分ご馳走になりました。久しぶりに会った友達が昔と全然変わっていないこと、かわいい赤ちゃんが生まれていることで私はとても幸せになってそして感動しました。今思えばあの空気や澄んだ水、あの景色の中で彼女は毎日心が汚れることなく洗われているのでしょう。
二日目はレンタカーで奥入瀬渓流、八甲田山へ。奥入瀬渓流の景色は、まるで絵葉書のようでした。いいえ、あの景色は木々の緑を目で見るだけでなく、川や滝の音を耳で感じ、そして澄んだ空気を肌で感じるという、人間の五感全てに魅入るものでした。
三日目は十和田湖へ。なんという美しい場所でしょう。湖だと思ったのでもっと小さい規模を想像していました。でも十和田湖はそこに海のように広く美しく、そして青々と存在していました。人も少なく、そしてひっそりとした砂浜。何時間でも何日でもそこに座って眺めていたい気分でした。私は今まで奥入瀬の景色や十和田湖の景色を見たことがないはずなのに、どこかすべて懐かしくて、そして私を心の底から慰めてくれました。人間は自然の中の一部である、そして自然はいつも何年もそこにある、と。去年病気をして、精神的にまいっていた私を思いがけなく奥入瀬の川や十和田湖の広さが救ってくれたのでした。それは、私に「もう何も考えなくていい、もう大丈夫だよ。」と言ってくれている気がしたのです。
日本人に生まれたなら、絶対に一生に一度は訪れて欲しい場所だと思います。あれからというもの毎日奥入瀬の景色を思い出しています。それは、日を経るごとに「憧れ」に変わりつつあります。たった四日間でしたが、私の悲しみや苦しみを楽にしてくれてゼロに近づけてくれた東北のあの景色。また、人生につまずいたり悩んだりしたら、私は迷わずきっと新幹線「はやて」に乗り、奥入瀬の滝の音を聞きに行くことでしょう。「もう何も考えなくていいよ」という声を聞きに。

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