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誰もが同じ

人間は生まれたときから歳を取っていく。

誰も同じ。

若い人を見るとこのごろやけに清潔感を感じるようになった。


高校生の頃、父が入院した。かなりの大病で、80kgの体重が60kgまで落ちて

みるからにおじいさんのようになった。

驚いた。驚きすぎて、もう見たくない、と思った。

ふらふらと病院内を歩いている。あれが、ぱぱ?と思ったら気分が悪くなった。

それから、体調は回復して、元に戻って家に帰ってくるまで私はお見舞いに行かなかった。見たくなかったからだ。

ひどい娘だと思うだろう。その時、考えたのは、もしも父が亡くなっても、

死に顔は絶対に見るのを止めようと、心に決めた。

あの、ふらふら歩いている父の抜け殻はずっと脳裏に焼き付いてしまったからだ。

その時は、必要なものを母と一緒にもっていった。

女子校に通っていて、制服のまま父の所に荷物を置いて何も話さないでいた。早く帰りたい、と思っていた。特にやることもなかったから。


すると、隣に入院していたおじさんが、私に話しかけてきた。

「お嬢さん、若いって良いね、清潔感があるね、ほんとうに、綺麗だ、目の保養だ」と。

驚いて、見た。何の話かわからなかった。

すると、よれよれの父が、「娘に話しかけるな!」と弱いけれど怒った。

そして私に「知らない人だから話さなくて良いから、もう、帰っていいよ」と言った。

隣に寝ている人だから挨拶しなければ、と思っていたのに、父が怒ったから驚いた。

清潔感?どういう意味だろうって。

若い=清潔感、それがずっと疑問だったが、年齢を重ねていくと、その意味がわかってきた。

中学生や高校生の女の子、今の私には、眩しい。

そして、誰もが年を取るのに、年を取ると汚くなっていくような気がしてきた。

汚くなる前に死にたいと、思うようになった。

母も姉も美人だ。私は美人顔ではない。童顔の外人の赤ちゃんのような顔だ。

よく言われる。ただ、童顔がそのまま年を取るのがとてもいやだ。

美人は、子供のころは大人に見られ、年を越しても、美人のままだ。

姉は27歳ぐらいから若く見られるようになった。逆転したのだ。

私はまだ童顔のまま。

丸い目が離れているせいだ。


父が病気でやつれた顔、母が年を取ったな、って感じるとき、とても嫌な気分になる。

そして、絶対に、死に顔は見ない、誰の顔も見ない、と決めた。

去年、父は亡くなった。

そう、私は通夜にはいったが、すぐに帰ってきた。

頑として死に顔を見なかった。母も姉も号泣。私の夫もかわいがってもらっていたので、ほろほろと泣いていた。一緒に釣りに行ったり(これは父の趣味を押し付けられて)、息子ができて優しくて、かっこよい(私の手柄だ)から、自慢の息子になった。

他人から、本当の親子に見られると、父も夫も大喜びしていた。

私は、父の無法人生を知っていたので、父が絶対に賛成しない人と結婚してやろうと、思っていたが、やはり反面教師でとてもきちんとした真面目で優しく、優秀でおこらない、天使のような男性と運命の出会い、よくある初対面で「あ、この人と結婚するかも??」という勘が働いて結婚した。

何も考えないうちに、「好きだから結婚を前提にお付き合いさせてください」と家に挨拶に来たのだ。なんて律儀。この世の中に。

パパとは真逆。親のすねをかじったり、マザコンで浮気など死んでもしない自立した人。料理も掃除も何でもできる。出木杉君だ。

そして、父も母も姉も、大賛成。「こんな素敵な人とどこで出会ったの?」ってね。

ちくちょう、私の見る目が良かった、こんなはずじゃなかった。

父のことを喜ばせたくなかった。それは、姉に対するお礼の気持ち。姉が父の素行について、はっきりと物申していたそのお礼に、私がアホみたいな男と結婚してやれば、吠え面かくだろう、とおもっていたからだ。

バカじゃなくても、屁理屈男、モラハラ男、なんかいいんじゃないかと思ったけれど、そんな奴とはくそ我儘な私が付き合えるわけがなかろう。

父のような人は優しいが、酒が飲めない。

よく常連で言っていた寿司屋の大将が、「男は酒を飲む人が良いよ、飲まない人は女に走る」と言った。まさに、その通り。なるほどね。

私の夫はお酒が好きだ。私は下戸だ。飲めない。

でも、彼は自分の健康管理をきちんとしていて、太らないように、筋トレ、散歩、ストレッチをしている。毎日リモートになってからは少し増やしていて結婚した当初と何も変わらない。頑固なのだ。

私より、長生きしてほしい。私は生きている意味は、彼がいることだからだ。家族はもうどうでもよい。好き勝手生きている人たち。

彼が先に旅立ったら、ぶっ殺してやる。

母性溢れる人は、御主人を滞りなく、見送って、一人で生きていく、らしい。

私は無理。できない。自分のためにご飯食べる意味も分からない。

彼が死にそうになったら、一日でも早く死んでやる。

これから、どんどん年取って、汚くなっていくからだ。

抗う、少し。エステも行っている。汚いおばあさんは、倒れていても誰も助けてくれないだろうと思うからだ。

まだまだ先だけれど、できるだけ、綺麗な格好をして外に出る。

なぜ歳をとって人は死ぬのか。

しかし、地球の人口の0.4%の人は死なないDNAを持っているらしい。

どこかで何百年も生きている人がいるってこと。面白いでしょ?

小説家書こうかしら。


題名は、「死ねない恐怖」いかがでしょう。

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