第37回 ウェス・ピドゥンにはなれないけれど

 今まだ、奥底に暗い気持ちがずっとつづいている。
 自分自身がしてしまったことで、自分が信用できなくなったりもする。
 けれど、生活そのものはそこそこまともである。

 今、家に再びボクダンくんが来ている。マリンバやバスクラリネットといった楽器もやるし、ジャグリングもとてもうまい。そして彼は、日本語を勉強している。
 ボクダンとはなるべく日本語で話すようにしている。先月21日、つまり2週間ちょっとぐらい前に日本に着いた時は、英語で話していた。今は日本語だけでも生活の用は足りるぐらいに進歩している。すごいなぁ。まぁ、急に知識が増えた、というよりも、日本語で話す準備が整った、という感じなのだとも思う。

 外国語の習得って本当にゆっくりとしたペースでしか進まないし、もどかしいものだ。けど、しょうがないよな、とも思う。
 いくらウェス・ピドゥンに憧れるからと言って、いきなりああはなれないし、どちらかというと、ほぼ全ての人は、ああはならずに人生を終えるだろう。実際に彼にインタビューをしても、他の人に彼のことを聞いても思ったけど、練習への時間のかけ方、ジャグリングへの姿勢が根本的に違う。

 ウェスは、外国語学習者にとってのネイティブ・スピーカーのような存在だ、と思う。ある種類のジャグリングのひとつの理想だけど、それを志向をしつつも、でも、実際には、別のあり方でい続ける。
 それに、ジャグリングが少しでもできれば、ジャグリングのフェスティバルなんかを楽しめる、のと同じように、外国語は、一生磨きながら、その時々で会話というフェスティバルを楽しむために持っているのが一番いいよな、と思う。

 ウェス・ピドゥンにはなれないけれど。

参考

Wes Peden (ウェス・ピドゥン)です。


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