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読書フェス~人の見える社会科

三度登場して,またお前かよ,too muchなんだよ!と皆さんの声が聞こえてきそうですが,僕は東京在住にも関わらず「磨け!」の対面もオンラインも参加できないので,せめて読書フェスでお力添えができれば…。


1 海嶺

ご紹介するのは三浦綾子さんの『海嶺』です。僕が小学生の時に母に薦められて読みました。現在文庫で「上・中・下巻」に分かれて販売されている大長編なので,お盆休みによろしかったら。
1832年(天保3年),知多半島から出航した遠州灘で難破した米を搬送する船。そこで生き残った岩松・久吉・音吉の3人は,1年2ヶ月後,奇跡的に北アメリカに漂着,数々の「愛」に助けられ,導かれて,ようやくマカオから日本へ帰るチャンスを得ますが…。
この話は高野長英らが弾圧され命を落とした「蛮社の獄」が起こるきっかけとなった「モリソン号事件」をモデルにしています。

1837(天保8)年に,アメリカの商船モリソン号が漂流していた日本人7名の送還と,日本との通商を求めて来航したものの,「異国船打払令」によって砲撃を受けた事件です。

「高野長英」「モリソン号事件」という事実だけを学ぶよりも,モリソン号事件で打ち払われた日本人の気持ちも一緒に考えることで,より身近な歴史学習になります。

「ジョン万次郎は日本に戻って活躍したのに…」,とその違いを考えたり,「天保の飢饉や大塩平八郎の乱による幕府への批判をかわすために,異国船という国民共通の仮想敵を作ったのではないか…」などなど。

戦国三英傑の学習が終わると,途端に文化や事実の羅列に陥りがちで,子供たちがどんどん低体温になっていきます。そこを何とか「小学校の歴史は人物学習中心なんだ,もっと血を通わせなければ」と自分に言い聞かせながら教材開発に悪戦苦闘しています。

2 塩狩峠

三浦さんのご著書でもう一つ「塩狩峠」もオススメです。これも史実に基づいています。1909年(明治42年)2月28日、官営鉄道天塩線で発生した鉄道事故がもとになっています。

結納のため,札幌に向った鉄道職員信夫の乗った列車は,北海道旭川の塩狩峠の頂上にさしかかった時,突然客車が離れて暴走。信夫は飛び降りて,自分の体を下敷きにして何とか客車を止めました。

マイケル=サンデル教授の「トロッコ理論」に似ていますが,僕は道徳の「ラッシュアワーの惨劇」とタイアップして教材化しています。

「他人の犠牲になんてなりたかない、誰だってそうさ――そうだろうか、本当に?」

命って何だろう,と子供たちと一緒に悶絶しながら考えています。

長くなってきたのでここら辺で筆を置きますが,どちらも子供たちに是非知ってもらいたい名作です。   河根 慎一_ちんぺー

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