恋してるとか好きだとか pt.5

 昼過ぎに僕らはどちらともなく目を覚まして、当たり前のように互いの頬や額に挨拶をし、ありきたりに見える贅沢な時間を一つの大きなピローの上で過ごしていた。

「今後のことを考えましょう。」

そう聞こえたので僕は答えた。

「今日の?それとももっと先?」

 「今後」の意味するところがどちらだろうと構わないのならば、わざわざそんな質問はしなかっただろう。つまり正直なところ、この何日か・・・、いやこの何週間かの間に僕に起こっている数々のことはまったく破綻していて、少なくともここに居る二人の「もっと先」のことなどは何も考えられない状況だった。

 そしてそんな僕の質問の目的を瞬時に読み取るであろうことも計算済みで、それでも何故だか丁か半かの行方を見守るような、やけに神妙な気持ちで次の言葉を待った。 

「いいえ。コンゴよ。」

「!・・・アフリカの!?」

「そうね。現状の問題点を整理することから始めようと思うの。」

「まずは。」

「1.1.1 食料の調達。人々は空腹に苦しんでいて動くこともできないわ。」

 報告書のフォーマットに則って語られたその状況は、僕らの現状そのものだった。ただ、起き上がればまだ生きられそうだ。ここは日本なのだから。

「1.1.2 メニューの策定。冷凍庫に凍らせたパンが入ってる。ナッツとレーズンが入ったパンよ。それから卵もあるわね。卵については任せるわ。わたしは飲み物を用意しなくちゃ。」

 そうして僕は彼女の好みに合わせた二人分の半熟のサニー・サイド・アップを焼き、チェリー・トマトと共にトーストに添えた。彼女はコーヒーと蜜柑ジュースをテーブルに並べて、10分後には僕らのコンゴ問題はあっけなく消えた。

 もっとも食料の調達が済んでからも、僕らの長い今後についての問題は宙に浮いたままだったわけなのだが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?