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【いまさら訊けない中学受験】いまさらだけど、これって本当に子どものためになるの?誰にも訊けなかった肝心なところをちゃんと知りたい 【その5】

公開模試は「受験校選び」ではなく「受験生をやる気にさせる」ために使う!


笠:笠原 紗由香 (「親子のための中等教育研究所」所員)
長:長さん(同研究所エグゼクティブアドバイザー)
宮:宮本さおり(「親子のための中等教育研究所」所員)

笠:前回【その4】で、偏差値で学校を選ぶのは間違いだし、学校によってはその学校の合格可能性と模試の結果との相関が薄い、じゃあ模試を受ける意味ってなに?という話でしたね。

宮:うちは通っていた塾の方針もあり、模試を一度も受けなかったクチなのですが、これだとさすがに自分の子どもの実力がどのくらいなのかが全く分からず、不安になったことがありました。本人の現状確認の意味でも模試は1度は受けさせればよかったなと、振り返ってみると思います。

長:そうかもしれないけど、学校によってはその学校の合格可能性と模試の結果との相関が薄いってことは前回も話した通りです。

模試を受ける意味。それは、受ける時期によってちょっと違ってきます。

笠:模試って1年間に何回もあるの?

長:主な実施時期は、夏休み前の7月。そして9月から12月まで毎月1回。このほかに、最難関校受験者対象とか、公立一貫校受検者対象とか、いろいろな模試があります。

まずは7月の模試を受ける意味について。夏休み前のこの時期に模試を受けることで、苦手教科や単元のどの部分がどの程度できていないのかが、わかる。それをもとに、夏休み中に克服するべき課題がピンポイントで見えてくる。

9月から模試を受ける意味は、得点力を上げるためのチェックができること。ついでに志望校合格可能性の判定も見るって感じかな。入りたい学校があるならば、やみくもにただ一生懸命やっているより目安がつけやすい。偏差値も、志望校合格までの距離がどのくらいあるかの目安として使うってことだね。

笠:んー……志望校合格可能性の判定ってなんか意味ありますか?

ようするに自分の偏差値が志望校の偏差値とどれくらい離れてるかってことじゃないの?

だったら、とにかく志望校の偏差値に到達するまで偏差値を上げればいいんじゃないんですか?

長:模試が終わると、採点結果と志望校の合格判定、そして解答・解説も一緒に送られてきます。そこには、1問ごとに正答率が示されています。ちょっと極端な例だけど、その問題の正答率が80%となっていれば、模試を受けた受験生全体の80%が正答したということです。

もし、その問題に正答できなかったとしたら、入試では不利ですよね。なぜなら、入試では得点という相対評価で入学者が判断されるわけですから。

逆に、正答率が10%というような問題は、みんなができなかった問題ということ。

正答率の低い問題ができるようになるよりも、みんなができている問題を落とさないようにしていくことが合格への道と言えます。

笠:受験生の多くが正解できているのに自分は何で間違えたんだろうと自己分析させるんですね。それに、みんなができているのなら、自分にだってできるはずだと思える。

「80%もの人ができている問題を正答できるようにしよう」という目標なら、それほど高いハードルって感じもしないですね。

長:そのとき大切なのは、それが得点できるようになると、点数が何点上がり、偏差値がいくつ上がるかを教えてあげること。

目の前の小さい目標と、達成したときの成果を示してあげることが、やる気につながっていくのです。そうやって模試を継続的に受けていけば、得点の伸びを実感できます。

それから模試には、入試のシミュレーションという意味もあります。会場校へ足を運び、知らない同学年の生徒たちに囲まれて試験を受ける。試験時間内にどうやって得点していくのかを考える練習になるんだ。

1問目から順番に解いていきたがる子どもも多いですが、効率的な解き方とはいえません。まず、確実に得点できる問題から解いていくほうがいい。試験の目的を頭において臨んでいくトレーニングともいえます。

それからもう一つ。

模試は合格可能性との相関が薄い学校もあるという話を冒頭でしましたが、偏差値以外の独自の指標を用いることで、志望校の問題傾向を分析し、志望校の合格に向けてどの部分を強化すればいいのかをより具体的に、明確にする工夫をしている模試もあります。

「首都圏模試センター」では「思考コード」という概念を導入することで、志望校の問題傾向を分析しています。

笠:「思考コード」?なんかまためんどくさそうな響きだなあ。それってなんですか?

長:詳しくは首都圏模試センターのホームページでみることができますよ。

https://www.syutoken-mosi.co.jp/column/entry/entry000668.php

笠:サビエル?…ふーん。思考コードの図って見た目もだいぶ偏差値とは違いますね。でも、そもそもなんでこんなのを模試に取り入れたんだろう。

長:ここ数年、中学入試では、従来型の4教科の知識をもとにした「思考力」を評価していこうという新しいタイプの入試が生まれてきていることが、背景にあります。

笠:ああ、最近よく見かける「思考力入試」とか「表現力入試」とかそういうやつですね。よくわからない名称のものもあるけど、なんだかおもしろそう。そもそもそういう新タイプの入試ってなんで増えてきているだろう?

長:では次回は、中学入試で増えている「新タイプ入試」について見ていこうか。

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