_JUMP-j-BOOKS_note_ノベライズの作り方01

『ブラッククローバー ユノの書』を通して、Jブックス編集者にノベライズの作り方を聞いてみた。


みなさま、お疲れ様です。WEB担当のソラです。

ソラくん

WEB担当 ソラ
なぜベースを持っているのかはスタッフ紹介で。


相変わらず編集部でもないのにnoteを更新しています。

Jブックスはこれまで様々なマンガ作品の小説版を刊行してきました。
そうした小説を制作することを業界では「ノベライズ」と言います。

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数々のノベライズ…!


今回はそのノベライズが、どの様に企画され、そして作り上げられていくのか、数々の人気マンガをノベライズしてきたJブックスの編集部員に、直接伺ってみました!

今回お聞きするのは、10月4日に発売される『ブラッククローバー ユノの書』を担当したミニキャッパー周平こと、渡辺さんです。

周平くん

Jブックス編集部員・渡辺
沢山お話していただきました!


それでは早速伺ってみましょう!

企画が動き出すまで

ソラ:本日はよろしくお願いいたします!

渡辺:よろしくお願いいたします。

ソラ:それでは早速ですが、今回担当された『ブラッククローバー ユノの書』ですが、いつごろから、どの様な経緯で企画されたのでしょうか。


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ブラッククローバー ユノの書
かっこよすぎる…!


渡辺:まず、作品や巻にもよりますが、今回の『ユノの書』の企画は編集部から原作サイドにご提案する形で始まりました。
実は2冊目(『ブラッククローバー 騎士団の書』)を2017年に出してすぐ、2018年内に3冊目を刊行するのはいかがでしょうと伺ったのですが、当時は原作サイドが様々なメディア展開でお忙しかったため一旦インターバルを置くことになりました。実際に今回の3冊目が動きだしたのは、2019年2月~3月になってからです。


ソラ:今回は主人公のアスタの親友であり、ライバルでもあるユノにスポットを当てた作品となっています。

渡辺:企画をご提案した時は、ユリウス(騎士団の指導者である魔法帝)主人公でやろうかという話もあったのですが、結果的に、ユノにフォーカスを当てようということになりました。企画が進みだした2019年の3月当時は、漫画の方でユリウスの今後が明らかにされていなかった、という事情もありました。

流れとしては、1冊目は主人公であるアスタ、2冊目は主人公たちを取り巻く騎士団という組織、そして3冊目は特定のキャラクターにスポットを当てる、という企画です。

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1冊目「ブラッククローバー 暴牛の書」は単行本7巻とつながる表紙

ソラ:企画の立ち上げから出版まで、どの程度の期間を要しましたか。


渡辺:前述のとおり、今年の2月~3月くらいから動き出しだしました。
ユノがテーマで、という企画のアイデアを出したのが誰だったかは、実は正確にはわかりません。
ユノでノベライズをしたいというのは、マンガ担当が先代編集の時に一度相談していました。しかし当時は、少年漫画としては、ライバルにフォーカスを当てるのはまだ時期尚早だ、という判断になりました。
原作が巻数も増え、アニメも浸透した2019年の今なら機が熟している、ということで再度この案が浮上し、本格的に動き出しました。

ジョニー音田先生との信頼関係

ソラ:そう考えるととても長い時間を経て実現した作品とも言えますね!企画が動き出したあと、作家先生とプロット(ストーリーの構成や、流れ)を練る時は、小説やドラマでよくあるように、決まった何度も場所で打ち合わせをしたりしたのでしょうか。

渡辺:ノベライズを担当されたジョニー音田先生(以下、ジョニー先生)は、遠方に住んでいるため、直接会って、ということはありませんでした。基本的には電話でのやりとりです。

ソラ:なんと!それでは電話だけで収録されている話数のプロットをジョニー先生は作られたということですか!

渡辺:プロットは11本挙がってきました。そのなかで、担当が良いと思ったものを4つを選びました。

ソラ:11本も!選ぶのに迷ったりはされたのでしょうか。

渡辺:ボツにするか迷ったものもあります。もっとアスタがメインに関わってくるプロットもありました。が、今回はあくまでユノにスポットを当てているため、アスタが前面に出てこなくてもよいと判断いたしました。
また、迷ったものは今後つかえるかもしれないと思ってもいます(ニヤリ

ソラ:それは今後が楽しみですね!しかしそれだけの数のプロットが出てくるというのはジョニー先生は原作を相当読み込んでいるのでしょうね。

渡辺:ジョニー先生は読者に対するサービス精神が強く、読者が見たいところで見たいキャラを登場させよう、読者のイメージ通りのキャラ像で活躍させよう、と考える方です。
そのほかに、キャラクターの解釈をするとき、本当に(この解釈、展開で)大丈夫なのか、先生に逐一確認をするなど、原作に対するリスペクトが非常に強い部分も持っています。
そしてそれらを表現する筆の力があるという、信頼できる作家先生です。

非常に礼儀正しく、気遣いできる、メールの文面も丁寧な人。だから安心してシリーズを3冊任せることができました。
とても人間力の高い方です!

ソラ:おお…人間力!!
ノベライズというものが作られる中で、とても重要なポイントが伺えたような気がします!
文才も必要ですが、別の要素も重要だったりするのですね…。
そんなジョニー先生とやり取りをされる中で、書きあがってから大きな修正をした箇所はありましたか。

渡辺:えーっと…あったかなぁ(頭を抱える)今回のブラクロに関しては、原稿になったものから大幅な変更はなかったですね。
なぜなら、ジョニー先生に信頼を置いているから!

ソラ:な、なるほど…!

どうするか考えたラスト

渡辺:ただ、ラストに関しては色々考えた部分でしたね。1,2冊目はギャグっぽいムードで締めているのですが、今回はエピソードの内容的にも「もう少しシリアスに締めたい」という話し合いをしました。
時系列的には、白夜の魔眼との決戦に入る前のシーンなので、ギャグじゃないほうが、原作と結びつきが強くなると感じました。

ソラ:そうした細かい部分を、編集者と作家先生との間で詰めていくんですね!
作家との打ち合わせや、マンガ側の担当編集とのやりとりで印象的だったものはございますか。

渡辺:うーん…NGという程ではないんですけれども、ユノの、アスタに対する考え方だったり、ヴァンジャンス(ユノの在籍する魔法騎士団「金色の夜明け」の団長)が、内心どう思っているのか、という部分は、マンガの担当が相当細かくチェックしてくださりました。
いちばん大切な部分なので、大変ありがたかったなという思いです。

ソラ:そうした部分もノベライズならではの工程ですね。

渡辺:うーん…あ、あとあれですね、さっきのところに近いんですけれども、1冊、2冊めはギャグ的な締め方だったけれど、今回はシリアスにしてほしい、と伝えたところ、ジョニー先生も、今回はそのあたりを非常に気にしていたということで、むしろ指摘を喜んでくれて、方向性が一致して嬉しかったなということがありました。

ソラ:信頼関係が伺えるいい話ですね!
では、ノベライズを制作する中で、一番時間がかかる工程というのは、どのタイミングなのでしょうか?
企画立ち上げ、先生が初稿をあげるまで、校正だったり、実は装丁デザインでのやりとりだった…などお聞かせいただけますか。

渡辺:企画を立てて、企画の中身を作って、マンガ担当にOKをもらうまでが一番時間がかかりましたね。ただこれは編集者にもよると思います。(同僚であるJブックスの)添田さんはバンバンOKをもらっているイメージです。
マンガ家さんがこだわりの強い人であれば、プロットからマンガ家さん本人と直にやり取りする部分が多いケースもあります。

ちなみに今回は非常にタイトなスケジュールでした。関わった皆さんがとても頑張ってくださり、無事に出版することができました。ありがとうございました!

イラストについて

ソラ:原作の田畠先生には、表紙に描いてほしいテイストなども提案されたりするのでしょうか。

​渡辺:基本的にはご提案します。読者が見たいのはこういうシーンなんじゃないか、とか、エピソードの中身がひと目で分かるシーンを描いてほしい、といった意図で提案します。
あとは原作ではあまり描かれることがないような表情だったり格好だったりをリクエストすることが多いです。

ソラ:なるほど、それでは、イラスト以外の装丁デザインなどでも、提案などはされているのでしょうか。​​

渡辺:基本的にはカバー周りは、原作の田畠先生が指定されています。例えば、今回背表紙にベルが登場していますが、それは田畠先生の「これまで背表紙に出てきたことのないキャラで」というルールに基づいています。
カバー絵のリクエストに関しては、1冊目はコミックスとつながるように。2冊目は騎士団長の集合絵。そして今回はユノがメインになっていればOKです!とリクエストしたら、素敵な絵が上がってきました!

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渡辺さんが大好きだという「ブラッククローバー 騎士団の書」の表紙

ちなみに、2巻の表紙は個人的にお気に入りで、収録されている最後のエピソードと連動しています。団長たちの鍋パーティ、大好きな話です。大勢のキャラが出てきて全員でワイワイ会話しているのが好きなんです! こちらもぜひ読んでみてください!


ノベライズする作品との相性

ソラ:ノベライズは原作としてのマンガが既にありますが、それでも作家の持ち味などは出てくると思います。今回のノベライズでそうした面を感じたポイントなどはございますか。

渡辺:ううううんんと、そ、う、で、す、ねえ…。あるとは思・う・んですが…
あ、これはブラクロという作品自体がそうだということもあるんですが、人間を信じている、人間の前向きな部分を信じているということが、すごく出てきますね。
「ブラッククローバー」自体にもジョニー先生の作風にもそういう面があるので、「ブラッククローバー」との相性はめちゃくちゃいいと思います。

あと、これはプロットの都合なのかなと思うところもあるんですが(笑)、今回収録された3話目はシャーロットがメインで出てくる話で、それはプロット段階で分かっていたのですが、実際に原稿が上がると、2話にも4話にも出てきて、これはきっと、ジョニー先生的に描いていて楽しいキャラなんだろうなぁ…と思いました。

余談ですが、田畠先生がすごい漫画家だなと改めて思ったのは……味方陣営の、普通の漫画なら敵の噛ませ犬に使われてしまうようなキャラが、実際に戦ったら噛ませ犬とかにならず本当に強い、という描き方ができる、というのを見たときでした。
あとは、メレオレオナのキャラクター性。ああいったキャラは計算ではなかなか描けないのではないでしょうか。…そう、まさに人間の前向きな部分を全開にしたキャラですよね。…今回の小説でも多用されています(笑)

ノベライズの醍醐味

ソラ:とてもおもしろい共通点ですね!先生と作品の相性、というのは重要なんですね。キャラが出てくる頻度に関わるほどに…(笑)それでは最後に、ノベライズをするということと、オリジナルのストーリーをつくるのは​別かと思いますが、編集者として、ノベライズを制作する醍醐味などがあればお聞かせください。

渡辺:うん…やっぱあれですね…その読者の感想で本当にその、原作ファンが喜んでくれていること、原作と同じ様にキャラを見てくれて、楽しんでくれていると感じるとすごく嬉しいですね。
あとは漫画家さんから、イラストですごくいいものが挙がってきた時ですね。原作の先生もすごく楽しんでくれている、ノって描いてくれているなと感じます。
今回は、カバーイラストはカッコよさの極みですし、モノクロでは、ノエルとシャーロットとベルが買い物をするシーン、すごく可愛いです。ぜひ見てください!

ソラ:ありがとうございました!


これまであまり語られることのなかったノベライズの制作について、多くを語っていただきました。
一般的な小説や、書籍が出来上がる過程とは全く違う部分などもあるようで、その一端が伺えたような気がしました。


『ブラッククローバー ユノの書』は10月4日発売!


既刊の2冊も好評発売中!!電子版でもお読みいただけます!