読み終えた貴方も気づいていない!? 話題のホラー×ミステリーに隠された”最後の企み”とは!? 澤村伊智『予言の島』

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さて、いきなりですが、本日ご紹介する一冊は、澤村伊智『予言の島』。

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ホラー界きっての人気作家の作品ですし、あちこちで既にレビューが上がっています。既に買って読んだ方も多いでしょう。そこで今回は、いつもとテイストを変えて、「私は気づいたけど気づいていない人が多いっぽいから触れ回りたい!」というミーハーな気持ちでご紹介を。

天宮淳の古い友人である宗作は、東京の会社でパワハラに遭って自殺未遂を起こし、故郷に戻ってきた。同じく古くからの友人である春夫は、彼らを気晴らしの旅行に誘う。淳・宗作・春夫たちが向かったのは瀬戸内海の小島・霧久井島。90年代半ばに著名な霊能力者・宇津木幽子が訪れ、祟りによって死んでしまったといういわくつきの島であった。更に、幽子は亡くなる前に、“二〇年後の八月二十五日から二十六日の未明にかけて、島で六人が死ぬ”という予言を残していた。淳たちは、興味本位から、死の予言の日が迫る中で島に上陸しようとしていたのだ。やがて、島の民宿に泊まったメンバーの中から予言通りに死者が出始めるが、不気味な守り神の像を信仰する島の人々は、よそ者を拒絶し、むしろよそ者の死を望むような発言さえ始める……。

横溝正史テイストを漂わせ、オカルトブーム時代のモチーフを散りばめつつ、怪奇現象や超能力に対して推理によって謎を解こうとする。ミステリの論理にすべてが回収されるのか、ホラーの超常にすべてが飲み込まれてしまうのか、そんなせめぎあいのうちに明かされていく、怨霊の恐るべき起源と、物語全体に充満する狂気の正体に2度驚かされる作品です。

しかし、です。私が本書を読んで最も震えたのは、上記2つの驚きに襲われた瞬間ではありません。

物語のあとに、巻末に参考文献や引用資料を示した2ページがあるのですが、その中のある部分を見て、私はもう一度強い衝撃を受けました。その記述を見た瞬間に、「『予言の島』という本のものすごく目立つ箇所に、大胆にも物語の大仕掛けを暗示……というか、ほぼ回答を示すに近い伏線が置いてあったこと」に気づいて、愕然としたのです。

恐らく、作者としては「わかる人にだけ意味を分かってもらえればいい」と仕込んだネタだったのでしょう。私が分かったのは、「と学会」の本などで、オカルト・疑似科学ネタに親しんでいたからです。“それ”の意味が分かるのはたぶん日本中で数千人、多くて数万人くらいであり、『予言の島』読者の中でもきっと高い比率ではないと思います。周りの読了者数名に聞きましたが誰も気づいていませんでした。

既に『予言の島』を読み終わっていて、この伏線に気づいていらっしゃない方は、319ページの※印の一行目に書いてある文言”××××ד(五文字伏せます)をググってみて下さい。恐らく1番上にWikipediaの記事が出てきます。たぶん何番目かにニコニコ大百科の記事も出てきます。その辺りを読めばたちどころに、澤村伊智が大胆に配置した、初見時99.9%以上の確率で見破れないであろうこの伏線が、いかにこの物語そのものを的確に表しているか――大仕掛けや、オカルトを信じる/信じないことによって見える世界が変わるか――についても理解できると思います。この作品のために、”これ”を選んでここに置きながらも、「分かる読者にだけ分かってもらえばいい」とあえて詳しい種明かしはしなかった――そのことが、私にとって何より凄味を感じさせました。もちろん、未読の方は読み終わった後にググッてみて下さいね。


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