(後編)帰国子女が帰国してからの話

記事の長さ:6分。

かつてないほどに国際社会になり、英語を教えたい・海外で子供を育ててみたいと思う親御さんは多いのではないでしょうか?でも実際に帰国子女や海外で育つ子供ってどのように感じ、考え、育つのだろうかということを考える方が少ないように感じます。おこがましいですが、1帰国子女として、考え・感じたことを共有させて頂きたいと思います。

前回は英語ができるまでの話でしたが、今回は帰国してからについて書きたいと思います。

前回もお伝えしましたが、私は15年程度米国で育ちました。子供のころから社会人までがっつりアメリカンな生活を送ったものの、故郷へのあこがれを抑えきれず日本に帰国しました。

ずっと夢見てきてた日本。ずっと制服を着て学校に通ってみたかった。部活の帰りにラーメンとか牛丼とか友達と食べてみたかった。ちょっと大人になってからになってしまったけど、あこがれがついに現実となる日がついに来ます。

帰国ハイ

渡米した時は、周りの方々が白人、黒人、アジア人、人種を問わずまるで「るつぼ」のようだったことにショックを覚えた記憶があります。何言ってるかわからないし、食べ物・飲み物はえげつない色とサイズだしおいしくないし、色々と驚きの連続でした。

生まれは日本である私は、日本に戻れば水を得た魚のように何不自由なく暮らせると思い込んでいました。

とりあえず日本に帰って感動した点は、コンビニで買うツナマヨのおにぎり、吉野家の牛丼、ラーメン花月嵐、チェーン店ですら味が神の領域だったことですね。モスバーガーがあることにテンションが上がっていたあの頃が懐かしい。

お店に行けば、まるで自分を神様のように扱ってくださり、しかもチップがいらないという意味不明さ。これが海外だったら15%どころじゃなく、20~30%もらえるレベルのサービスです。

テレビも面白い番組ばかりで、CMですらも面白い。とりあえず何もかもが新鮮で、かつ懐かしくもあり、帰国したては観光客気分もあり、最高でした。

でも、少し経つと違和感が出始めました。

逆カルチャーショック

※ちなみに以下は別に日本をディスってるわけではありません。あくまで自分が感じた米国と日本との差であって、あって当然の差ですが、ずーーーっと米国にいたのであれば感じるであろう違和感、という感覚でお読みください。どちらかが優れている、というわけで一切ありません。

テクノロジー後進国?
まず、テクノロジーで最先端であると思っていたはずの日本が、異常なまでにマニュアルなこと。当時は支払いもカード払いなどが主流でなく、現金支払いが多いなど、細かいことですが、少し戸惑いました。

他にも申請書類がネット上でできず、手書きで提出しないといけなかったり、ハンコという謎ルールがあったり、あれ?と思うことが出てきます。それに21世紀にファックスて・・・

でもこれはアニメのせいなのかもしれません。アニメ大国である日本は当たり前のようにガンダムや攻殻機動隊が歩行している、的なイメージを植え付けられていただけなのかもしれません・・・

痛勤電車
通勤電車。これはもはや人間が耐えられる代物ではありません。車での通勤に慣れていた私は、これが何よりもしんどかったです。というか日本の方はこんなにもパーソナルスペースを侵害されてよく平気だな、と感心したくらいです。

そして帰国したのが晩夏でしたが、それでもまだ残暑厳しき時。電車があまりにも暑く、周りには人、人、人。近いから体温を感じるし、互いが互いに体温を上昇させあい、汗がしたたり落ちているのに、皆さん我慢しながら電車に乗ってらっしゃる。日本の会社員すげえな、と思いつつも、当面の間は自分は耐えられなかったので、定期的に下車して空調機の前で汗が引くまでうずくまってました。

正直今でも通勤電車は嫌なので、会社まで自転車で行くことにしています。

無関心
米国は正義感に対する教育がえげつないため、何かおかしいことがあるとすぐ声をあげます。もちろん、全員が全員そうではないですが、必ずおっちゃんかおばちゃんが何か理不尽なことがあると顔を突っ込んできます(大阪はそうかもしれません)。

でも日本では本当にそれが皆無に等しいほど、他人に無関心な方が多い印象を受けました。一部の心優しい方や強い方はいらっしゃいますが、統計的に野次馬化して何もしない方が多くいると感じました。

例えばですが、たまに高圧的にウェイターさんに接する方がいますが、米国ではやめろやと声をかける方が結構います。

他にも、とある空港で日本人ご夫婦が海外旅行中に喧嘩をしてしまい、男性が少し高圧的に怒鳴り散らしていたところ、アメ人のおっちゃんが「いい加減にしろ、女性には優しく接しろ!」とすごみ、男性がしょぼんとなってしまったのを覚えています。

女性に対する敬意がなさすぎる
そもそもおかしいのが、会社の飲み会で何故女性がお酌をしたり、料理を取り分けないといけないのか。いやいや、全部自分でできるでしょ、と強く思いました。

重たい荷物を持っている女性に、手伝いましょうかと声をかけているところを見たこともないし、ドアを開けてあげたりもない。ジェントルマンシップがないな、とショックを受けました。

逆に、私がそれをやっていると、当たり前のことなのに何故か賞賛される。ジェントルマンだねーと小ばかにもされました。いや、お前もやれし。

上下関係
もちろん上下関係は外せません。先ほどの女性のお酌同様、タイミングよく次のお酒の注文を聞いたり、先輩や上司の顔を立てないと行けなかったり、空気を読まないと行けなかったり、何かと日本ではいらない気を使わないと生きていけないことを知りました。

もともと知識としてはあったので、立ち振る舞いは無難にこなせていたと思いますが、それでもあまりにも違う文化にショックを受けました。会社の役員がふらっと私の部屋に立ち寄って、「あれ、今日は一人?ランチいく?」と気軽に聞いてくれるような文化にいた身としては、上司と話すことが恐れ多いという感覚は・・・おそらく未だに備わっていない気がします。

無個性
米国にいると、肌の色、髪の色、目の色、服の色、もう何もかもがカラフルで自由で色とりどりでした。私はそれが好きでした。何を着たって何をしたって、自分を表現する。自分自身はこうなんだと世界に主張できる。

でも、日本に帰って驚いたのが、ほぼ全員同じ肌の色に、同じような髪形に髪色、着ている服でさえ黒いスーツや茶色いトレンチコートなど同じものばかりで、こういってはあれですが、最初に見たときは量産されたロボットのように見えてしまいました・・・(ごめんなさい)。いや、私もその一部になったんですがね。

帰国子女が抱える心の悩み - アイデンティティ1.5

さてそんな違和感満載になっていく日々を送ってしばらくたつと、いや、もっと前か、米国に住んでいた時からも感じていたことではありますが、日本に帰って最後の一撃を食らいます。

米国でも疎外感。日本でも疎外感。

自分はいったい何人で、どこが自分のいるべき場所なんだろう?

これですね、帰国子女がほぼ100%陥るアイデンティティ1.5問題です。自分の生まれ故郷(第1国)と育った国(第2国)のどちらにも属することもできず、中途半端な場所にいる状態です。

自分は日本人です、とも言えないし(アメリカ人かぶれですしね)、米国人です、とも言えない(文化も言語も吸収しきれていない)。すごく気持ちの悪い感覚です。

周りからも別に歓迎されている気もしない。

大したことないと思われるかもしれませんが、実はこれすごく精神を不安定な状態にさせてしまいます。いわば帰る場所がない家無し子になった気分です。

実際に私はこれについて悩み、家族の前で帰る家がない、とぼろ泣きしたこともあります。今では吹っ切れてますが、それはそこで家族が放った言葉のおかげです。

「お前の帰る場所は家でも国でもない。家族がいる場所だろ?」

帰国子女に関する勘違い

私帰国子女ですと名乗る帰国子女って案外少ない気がします。何故って?見世物パンダになることが多いからですし、すぐにレッテルを張られるからです。

・海外に住んでたなんてすごい決断だね
・英語できるし頭よさそう
・お家ってお金持ち?
・パーティー好きなんでしょ?
・元カノってやっぱ白人だった?
・海外の方が上みたいに思ってない?

全員が全員そうじゃないからぁぁぁ!!!!笑

そもそも自分の意志で海外に行ったわけではないし、英語力は頭の良さと比例しないし、家は普通のサラリーマン一家ですし、パーティーというか人が嫌いですし、じゃあ君の元カノってやっぱ日本人だった?と言いたくなります。笑
海外と日本を比べちゃうのもしょうがないことです。先ほども書きましたが、文化の差を言って何が悪いのか。他の文化で学ぶべきところは学ぶべきで、ディス・イズ・ジャパニーズ・ウェイだけでは成長できないのでは・・・?

他にも
・英語で喋ってみて
・英文の契約書の査閲お願い
・通訳をお願い
・などなど・・・

帰国子女=万能ではありません!!!!汗

通訳は本当に次元が違う技術が必要な行為ですし、英文の契約書は法務部に見てもらってください。それに、間接的に他の職業の方を侮辱するような発言は辞めましょう。そんな簡単な話じゃないです。

まあ、そのおかげで通訳の技術は頑張って習得して、今のYoutube配信につながってはいるので、一概に悪かったとも言い切れませんが・・・

帰国子女に対する評価

お仕事をしていると、いやでも周りから評価され続ける運命にありますが、お仕事をそれなりに頑張っているにも関わらず、英語力しか目立たないことが度々ありました。

実際に仕事で成果を上げて、本当に評価されていたとしても、周りからはどうせ英語喋れるからでしょ、と言われたり。英語できるからって評価されてるけど、それだけじゃんとか好き勝手言われました。・・・全部一緒に仕事したことない人たちに。

あと、敬語ができるだけで、カタカナ英語の発音ができるだけで、すごい!と言われることにも違和感が・・・。いや、ですから私日本人ですよー(届いてますかー、この想い)。

前編でも書いた、「そりゃ海外で育ったら有利だよね」、「環境に恵まれただけじゃん」という発言がいかに無責任か、というところで本シリーズは着地させていただきます。

最後に

・・・とまぁ、9割がた愚痴になっちゃいましたね、すみません。でもあなたの周りにもし帰国子女がいたら、平気そうな強そうな立ち振る舞いをしているかもしれませんが、意外とメンタルがギリギリな方もいるかもしれませんので、優しく悩みを聞いてあげてください。

みんなのあこがれる英語力。一朝一夕では得られません。ペラペラしゃべってる方は、あなたの思っている以上にどこかで頑張ったり、苦しんだりしたんだと思います。

でも言い換えれば、誰でもがんばれば得られる力でもあります。苦しくある必要はありません。楽しく、継続的に学ばれてくださいね。

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では、また来週。

- JumpE

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