見出し画像

王国の泥臭さ 〜北京五輪 スキージャンプ 団体戦〜

シナリオの一つにはあった、オーストリアの勝利。

今季W杯覇者が3人と今大会の銀メダリストという布陣。

吹き乱れ、荒れる風の中

一人一人が、何かを起こそうと泥臭く繋ぎ、勝利を射止めました。

_______________

シナリオにはあったけど、大きな声で言えるものではありませんでした。

荒れた風、混沌とした状況、ある意味オーストリアの勝ちパターンだったのかもしれません。

金メダル、オーストリア

Fettnerは今大会絶好調。

Kraftは調子が良いながらも、どこか「持っていない」「空回り気味」

HuberとHoerlは渋い。。。

普通のチームであれば、金メダルは取れません。

でもこのチームは王国オーストリア。普通では推し計れません。

団体戦において、普通じゃない試合を何度も見せています。


いきなりKraftが出遅れ、メダルに黄色信号が点灯しかけましたが

渋いと言われ続けていたHuber、Hoerlがしっかりつなぐと

大失敗したLindvikの隙をついてFettnerが順位を上げて2位で折り返しました。

___________

2本目は決めてきたKraftが順位を押し上げると

分が悪いHuberは意地でC,Prevcに食い下がり

Hoerlは会心の一撃を決め,トップでFettnerに繋ぎました。

個人的に勝負あったなと思いました。

この人の勝負強さは,小林陵侑を相手しても一歩も引きません。

エース属性を持っています。

#そしてエースになる

王国の選手たちがうずくまって,点数が出るのを祈る姿は

かつて,圧倒的な競技力で支配した国の姿ではありませんでしたが

得点を開いてみれば8.3点差。

超絶エリート集団ではなく

苦労し,最後まで混沌とした代表争いを泥臭く勝利し

叩き上げてきた4人には感情が入り,感動しました。

銀メダル,スロベニア

圧倒的優位だったはずのスロベニア。

不安定な条件に,チームとしての若さが出たようにも見えました。

この日は終始不安定だったZajc,2本目に粘りきれなかったKos。

Fettnerに敗れたP.Prevc。

どこか,あと一歩踏ん張りきれなかった感が出ていました。

直近の優勝経験の差だったのかもしれません。。。

銅メダル,ドイツ

オーストリア同様に,可能性を信じて粘り続けたドイツ。

ノルウェーのダブルエースのブレーキ。

Eisenbchlerの爆発によって,銅メダル奪取に成功しました。

ドイツと4位ノルウェーの差は8本飛んで,わずか0.8点。

この0.8点が天国と地獄です。

張家口に入って絶望的だったチームが

日を追うごとに戦えるチームに変わっていき,最後にチームでメダルを掴み取る姿は

苦しさと執念,両方を垣間見ることができ,こちらも感動しました。

地力があるとはいえ,まさかノルウェーを食ってしまうとは夢にも思いませんでした。

_______________

ノルウェーは金メダルに向けた滑り出しは良かったのですが

1本目にLidvikが大失敗をかましてしまい,メダル争いに転落

2本目はGranerudが踏ん張れず,逆転をかけたLindvikも大人しいジャンプに終わって

ドイツに後塵を拝しました。

悪条件を引き,厳しい戦いではありましたが

彼らの技術なら,ある程度まとめてこれたはず

経験値の差か,若さゆえのメンタルコントロールか。

こういうのを糧に,またパワーアップすると思うと先が恐ろしいです。

そしてエースになった

Fettner.
昨シーズンはワールドカップへのスポット参戦

そこでトップ10入り,チームを表彰台に導く活躍を見せながらも

今夏は再び2軍暮らし。

今夏の2軍の最終ピリオドで,1軍への道を拓いたFettner(36歳)

ワールドカップでは中位をキープし,なんとか1軍に残り続けたものの

疲労からか,精細を欠き始めました。

しかし,五輪の最終選考となるオーストリアシリーズでチーム内上位を獲得

団体戦メンバーにも選ばれ,優勝を果たすと

2大会連続の五輪出場を果たしました。

__________________

張家口に現地入りしてからは絶好調。

ノーマルヒルで個人銀メダル。

そして昨日の団体戦はエースとしてチームを鼓舞し勝利に導きました。

これ以上の下克上はないでしょう。

日本のジャンプ,コンバインド選手はこれくらい傑出していなければ

天井を破ることはできません。

国やナショナルチーム制,さまざまなルールが違うとはいえ

10年前に引退していてもおかしくない年齢のベテランのこの姿

夢物語としてはよくありますが,現実にやってのけるとは

信じられません。。。

ロン毛に髭,たくさんのピアス,全身タトゥーと個人的に好きな選手ではありませんでしたが

その歩んできた道には,脱帽し感動しました。

なお,今は短髪で髭がありません。どうしたんでしょうね。。。

日本チーム

条件が悪い中での戦いになり

メダル争いには絡んで行けませんでした。

各国が五輪に向けて調子を上げてきているのに対して

地の不利で下がり調子。

調子が上がることなく

パワー不足が露呈してしまいました。。。

彼らより強い選手は,今の日本にいません。紛れもなく最強チームがあの立ち位置。

小林陵侑が突出しているだけで,チーム力は上がりつつも中々

強豪国の壁を突き破らせてはくれません。

私自身も,もっと頑張りたいのは山々ですが

正直,ギリギリで一杯一杯でした。

連盟としても遠征費が捻出できず,五輪後のBチーム遠征は消滅。

そんなチームが小林陵侑のマンパワーによってメダル2つ獲得する。

ある意味異常事態とともに。

スキージャンプを支える企業の凄さを,目の当たりにすることになりました。

土屋ホームさんと雪印メグミルクさんは世界1のチームですが

それだけでは,ここらへんが精一杯なのかもしれません。。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?