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令和の世で田村潔司の愛弟子二人が魅せた俺達のU-STYLE !【2021.9.6九州プロレス 福岡・西鉄ホール大会 佐々木日田丸VS中村大介/プロレス影の名勝負シアター】


あまりクローズアップされていない名勝負を考察する「プロレス影の名勝負シアター」2回目はUWFルールで行われた激闘!













プロレスは答えのないジャンルである。

なのでプロレスに対する見方や考え方は千差万別であり、多種多様である。

プロレスには誰でも注目するタイトルマッチやビッグマッチだけではなく、何かテーマがあって組まれたわけではない試合、あまりクローズアップされていない試合もいざ深掘りしてみると実は興味深いドラマが潜んでいたりするものだ。  

そんな隠れた名勝負を独自目線とこれまで当事者同士のレスラーストーリーを振り返りながらドラマチックに考察する「プロレス影の名勝負シアター」。

  

今回は、2021年9月6日九州プロレス・西鉄ホール大会で行われた佐々木日田丸VS中村大介を取り上げたい。

この試合は、九州プロレスの佐々木日田丸がプロデュースのHITAMAR-U-STYLE『STARLANE(スターレーン)』 という全試合UWFルールという興行のメインイベントとして組まれた。

佐々木日田丸とは?

佐々木日田丸は1979年10月17日大分県日田市出身の41歳(中村戦当時)。172cm 80kg。大分の蹴撃手という異名を持つ。格闘技ファンならば、本名の佐々木恭介という名前の方が馴染みがあるかもしれない。小学生の頃からプロレスラーになることが夢だった。学生時代は柔道で汗を流し、二段の腕前を持つ。田村潔司率いるU-FILE CAMPに入門。第4回 全日本コンバットレスリングオープン選手権 -85kg級 準優勝(2000年)、第7回 コンバットレスリング全日本選手権大会 -85kg級 3位(2001年)、第1回 KOKリミテッド 90kg級 優勝、第1回 全日本総合格闘技オープントーナメント 82kg級 ベスト4といった格闘技実績を経て、 2001年5月13日 パンクラス後楽園ホール 大会の 伊藤崇文戦でデビュー(グラップリングルール)。

その後はパンクラス、リングス、DEEPやDEMOLITION、PRIDE武士道、Cage Rage(イギリスのMMA団体)といったバトルフィールドを転戦し、強さを磨いていった。また所属するU-FILE CAMPがプロデュースしていたU-STYLEというUWFルール興行にも参戦していた。

格闘技経験が豊富で、プロレス畑で育ったわけではない佐々木だが、自身はずっとプロレスラーとして生きてきた。2005年12月にパンクラスで佐藤光留との一戦を終えた彼はコメントでプロレスラー魂を爆発させた。

「俺はもうプロレスラーだっていう、そのことだけ今日はとにかく言いたかったっていうのと、やっぱりこういう格闘技の世界っていうのは、プロレスラーっていう人種を馬鹿にしてる人間もいますんで。まあ、全員が全員じゃないですけど、そういう人もいますし。ただ、僕は今日、今日もそうだし、他のバーリトゥードって言われるリングに上がる時でも普段と同じ『U-STYLE』、そして、普段と同じプロレスをしているつもりなんで。誰が何と言おうと、俺はプロレスラーだと。(中略)これはもう何でも、プロレスやるにして、総合をやるにしても、自分の感情とか生き様を見せるつもりでやってますんで」

2007年に佐々木はU-FILE CAMPを退団し、元格闘探偵団バトラーツで活躍した池田大輔が率いるフーテン・プロモーションに入団。バチバチと呼ばれたバトラーツスタイルを主にするフーテンで、UWFとバチバチ道を追い求めていった。

だが2009年3月にフーテンを退団し、その後はフリーとしてあらゆるインディー団体を転戦。U-STYLE無差別級王座やWMWインターナショナルスーパーミドル級王座を獲得し、やがてたどり着いたのは地元・九州プロレスだった。ウォーターマン日田丸というマスクマンで以前から参戦していた佐々木だったが、マスクを脱ぎ、2015年10月に佐々木日田丸のリングネームで九州プロレスに入団する。佐々木は「子供の頃プロレスから元気や勇気そして夢を貰いました。約3年間フリーとして参戦していく中でプロレスで“九州ば元気にするバイ!”という九州プロレスさんの活動を自分も一緒にやって行きたいと思うようになりそんな時、筑前さんに声をかけて頂き入団を決めました」とコメントしている。

平日は格闘技教室を開き、子どもたちに格闘技を教えて、後進の指導を行ってきた。また新日本プロレスで”ジュニアのカリスマ”と呼ばれた金本浩二との抗争で、評価を上げた。

中村大介とは?

中村大介は1980年6月10日東京都足立区出身の41歳(佐々木戦当時)。176cm 78kg。腕十字の天才、Uの後継者という異名を持つ。大学時代に田村潔司率いるU-FILE CAMPに入門し格闘技を学び、2002年7月20日、総合格闘技PRIDEの登龍門として開催されたイベント「THE BEST Vol.2」で、かつてPRIDEで桜庭和志と対戦した経歴を持つシャノン・"ザ・キャノン"・リッチを相手に1R腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを果たす。これが総合格闘技初陣だった。

その後、総合格闘技ではDEEPやPRIDE武士道、Cage Rage(イギリスのMMA団体)、HERO'Sに参戦し、中量級戦線で活躍していく。またU-FILE CAMPが主催するU-STYLEというUWFルール興行で経験を積んだ。

UWFスタイルを愛する中村は総合格闘技の舞台でも、UWFルールでもいつも黒のショートタイツとレガースでリングに上がることにこだわり、UWFの試合で見られる回転体と呼ばれるグラウンドの流れる攻防を得意にしている。まさに”黒いパンツの頑固者”である。これまで得意の腕十字で多くの対戦相手をタップアウトさせてきた。

そんな彼が脚光を浴びるようになったのは2008年の総合格闘技DREAM参戦から。チョン・ブギョン、アンディ・オロゴン、所英男(Dynamite!! 〜勇気のチカラ2008〜)を次々と撃破していった。

2012年6月15日、DEEP 58 IMPACTのDEEPライト級王者決定戦で岸本泰昭と対戦し、5-0の判定勝ちを収めプロ10年目で初の王座獲得している。

現在は、総合格闘技DEEP、組み技QUINTETといった格闘技の世界だけではなく、UWFルールのハードヒット、純プロレスのプロレスリング・ノアに参戦するなど多岐にわたり活躍している。また地元足立区で総合格闘技ジムの夕月堂本舗を設立し、自ら代表を務めている。

U-FILE CAMPとは?



佐々木日田丸と中村大介。二人のファイターが育ったジム…それがU-FILE CAMPである。

U-FILE CAMPは1997年の設立。"赤いパンツの頑固者"田村潔司がUWF、UWFインターナショナル、リングスといったリングでプロ格闘技選手としての活動で培った技術を集約した格闘技ジムである。

UWFの遺伝子を継ぐ男・田村はこれまで、U-FILE CAMPで佐々木や中村だけではなく、多くのファイターを育ててきた。

上山龍紀、長南亮、大久保一樹、西内太志朗、柴田正人、竹田誠志、那須晃太郎、田村和宏…。

田村はU-FILE CAMPがプロデュースする興行で、U-STYLE(UWFルール)
MMA、STYLE-G(グラップリング)、STYLE-S(キックボクシング)、STYLE-E(プロレス)といったスタイルを展開してきた。

その中で、PRIDEやDEEPとタッグを組む形で発展させようと試みたのがU-STYLEだった。UWFルールを行う団体はいなくなった21世紀において、田村はUの灯を守るため、己のアイデンティティも示すためにU-STYLEの興行を展開させた。だが最終的には活動停止に追い込まれる。2000年代、あの頃はよりリアルな闘いが求められていたのかもしれない。

パンクラス出身の佐藤光留が主催するハードヒット、田村がプロデュースするLIDET UWFといった現在進行形のUが誕生している令和のマット界。そんな今だからこそ、田村の愛弟子である佐々木は自身がプロデュースするUWFルールの大会開催に動いたのだ。

佐々木日田丸プロデュースUWFルール大会 HITAMAR-U-STYLE『STARLANE(スターレーン)』



2021年7月、佐々木は自身の原点であるUWFルールの興行HITAMAR-U-STYLE『STARLANE(スターレーン)』設立を発表。イベント名である「STARLANE」はUWFの「西の聖地」として伝説となり、2019年に解体された試合会場「博多スターレーン」の名を引き継いだものである。

佐々木がメインイベンターとして対戦相手に指名したのが、同じくU-FILE CAMP出身の中村だった。「あいつとなら、自分がやりたいUWFができる」と自信をもってマッチメイクした。

「今からちょうど22年前の9月。赤いパンツの頑固者の試合に魅了され田舎から上京しU-FILECAMPに入門。その同じ日に入門したのが大学生の中村大介。このSTARLANES第1回を開催することになり僕の頭の中に浮かんだ相手は彼しかなかった。同じ赤いパンツからのUの血が流れている2人が22年積み上げてきた最高のUスタイルを九州の地で魅せたい。それが出来るのがこの中村大介という男、そしてそんな男をこのSTARLANESで倒したいと」

対戦相手に指名された中村は8月19日に自身のTwitterで「コリャまた刺激的なカード!佐々木さんは、たまたま同じ日にU -FILEに入会した、運命の男。(中略)このタイミングで佐々木さんと戦るのも、運命。それぞれの道に分かれてからの、答え合わせ。負けねぇッスよ」とツイートしている。

U-FILE CAMPというジムで生まれ育った二人。このジムから多くの猛者が誕生してはやがて去っていった。引退したU-FILE CAMP出身の選手も多い中で、未だに格闘技としてのUWFにこだわり、強さという刀を磨きプロレスラーとしてリングに上がり活躍しているのが佐々木と中村ではないだろうか。原点は一緒でも歩んだ道は少し違う二人のUWF魂と技術が詰まった一騎打ちは、「これぞ!UWF」という激闘となった。

四方に礼、試合前の張り手に見える田村潔司の息吹

プロレスファンやUWF信者が胸躍るサウンド「UWFのテーマ」が流れる中で入場式、Uのレジェンドレスラーである藤原喜明、垣原賢人、中野巽耀からの熱きメッセージに康応するように緊張感あふれる試合が続く。

ただ試合のレベルに関してはハードヒット、LIDET UWFに比べると課題が多い。要はまだ試合が純プロレスでUWFになりきっていないのだ。そこは純プロレスの要素を強化するのか、UWF化するのか、それともまた違った道を選ぶのか。あらゆる試行錯誤を繰り返して、九州発UWF「STARLANE」の特色を見つけるしかない。実行しようとしていることは実に意義のあることであり、そのチャレンジには敬意を表したい。

そしてメインイベントへ。試合前の煽りVTRでは、二人の師匠・田村潔司のテーマ曲「Flame of Mind」が流れる。佐々木は「無理かもしれないけどこの試合を師匠にも見てほしい」と語ったのが印象的だった。
試合は20分1本勝負のUWF特別ルールの5ロストポイント制。一回ロープエスケープもしくはダウンを喫した場合はロストポイント1となり、5回ポイントを失うとTKO負けとなる。また時間切れの場合はロストポイントの差で勝敗が決まる。

先に入場した中村はリングインするとまるで田村潔司のように四方に一礼。二人がリングで向かうあう。佐々木は中邑の握手に応じず張り手を見舞う。これもUWFインターナショナルやリングスで田村潔司が対戦相手を挑発するために行っていた手段。そこに田村がいなくても、二人は試合前の行動から師匠の息吹を出していた。 

目まぐるしくグラウンドで動き続ける二人のU戦士

ゴングがなった。オーソドックスだがガードを固めない中村とサウスポーでアップライトに構える佐々木。構えひとつでも二人のスタイルが分かる。中村は桜庭和志のような「柳に風」で自然体でリングで闘うのが特徴。佐々木のサウスポースタイルには師匠・田村譲りなのかもしれない。ただ佐々木は元々、剛で柔を制すスタイルだ。

片足タックルを仕掛ける佐々木に対し、中村は動じず。ならば佐々木は素早くバックに回る。すると中村は背後から腕を取る。
バックを取った相手を腕を取り、アームロックを極めるのは桜庭など多くのUWF戦士が得意にしているムーブ。

だがパッと取られた腕を離して、互いが正面で組み合う。
上手投げでテイクダウンを奪った中村はサイドポジションからアームロックを狙う。だが反転してディフェンスする佐々木は逆にアンクルホールドを仕掛けるも中村はそうはさせない。

さらにポジションも目まぐるしく攻守が変わる。これぞUWFの試合でよく見られる回転体。実はこの動きも「STARLANE」だけではなく、ハードヒット、LIDET UWFでもあまり見受けられないスタイル。
そこには田村が育ったものをリングを表現しようとしている二人の心意気を感じる。

あの技も、この技も…UWFの歴史を試合で表現する二人

中村はスリーパーから得意の腕十字を仕掛ける。クラッチしてディフェンスする佐々木。
すると中村はサイドポジションからクルック・ヘッドシザースをかけようとする。
クルック・ヘッドシザースはUWFの試合から有名になった技。
だが佐々木もディフェンスしても逆に腕十字を狙うも、中村は極めさせず、その場を一旦離れる。

息が詰まるグラウンドの攻防に場内は厳かなムードが流れ、拍手が起こる。
左ミドルキックで牽制する佐々木に対し、中村は前蹴りで応戦。互いの主導権争いも面白い。

組み合った二人。首投げでテイクダウンを奪った佐々木。だが反転して上になった中村はケサ固めに狙うも、ヘッドシザースで切り返すようにディフェンスして、上になる佐々木はアームロックを狙うも、中村はそのまま起き上がりスタンドに戻して、コブラツイスト狙うも、佐々木はディフェンスしてバックを取ると中村は腕を取ってグラウンドに持ち込む。
そこからダブルリストロック。だが佐々木は両足を中邑の右足に絡めてディフェンス。ベストポジションでの腕極めはさせない。そこから佐々木はグラウンドコブラツイスト。中村が反転してサイドポジションを取り、ニー・オン・ザ・ベリーからマウントポジションから掌底、ボディーへのパンチ。これはグラウンドでの打撃で決める目的ではない。打撃をコツコツ当てて、自身の関節技を極める態勢に持ち込むためのエサである。

すると佐々木は態勢を変えて上になるも、中村はガードポジション。だが佐々木はボディーにパンチを連打してからアキレス腱固めに持ち込む。痛がる中村は一瞬ロープに逃れようとするも、逆にアキレス腱固めで極めることで阻止。アキレス腱固めを極められながらも佐々木が「こいよ!」と挑発すると中村が張り手を見舞う。アキレス腱固めの応酬では意地の張り合いとなる。思えば、1980年~1990年代のUWFの試合ではアキレス腱固めの掛け合いはよく見たものである。

ここで中村は一瞬ヒールホールドを狙おうとするが、この大会のUWFルールでは反則となるので、再びアキレス腱固めに戻す中村。
すると佐々木はヒザ固めを狙う。だが中村はディフェンス。両者はここで離れる。
ここで注目するべきポイントは両者ロープエスケープを選ばずに、互いの関節技を逃れていること。いかにグラウンドの攻守に自信があり、卓越した技術を所有していることがよく分かる。

まだ互いにロストポイントはない。虚々実々の駆け引きが続く中で、中村の腕十字。
クラッチする手を離された佐々木は中村の足を両足で絡ませるようにディフェンスしてからヒザ十字固めを狙う。ヒザ十字が決まらないとみるとアームロックを狙う佐々木に対し、」前転するようにポジションを奪うと腕十字が極まる。
佐々木は悲鳴を上がてもがいてから逃れる。さらに下から三角絞めを狙う中村。ディフェンスしようとする佐々木の動きを読み、オモプラッタで狙うも、佐々木は阻止。すかさずバックマウントを取る佐々木。
胴絞めスリーパーホールドを狙う佐々木だが、中村はレッグロックで切り返す。だが佐々木は中村の顎を手でわしつかみしてから反転、そこからグラウンドでフェースロックから腹固めに移行。腹固めといえば、藤原喜明が得意としている関節技のひとつ。だが中村は腹固めを反転してディフェンスしてヒザ十字から、足を4の字にしてからの変形ヒザ十字。まさに一進一退。

互いに手の内が分かり切っている。デビュー前から幾度もスパーリングしてきた間柄だからこそできる攻防である。そしてこれは意図的か偶然かわからないが、互いにUWFの歴史を試合で表現しているように思えた。

佐々木がワキ固めを極めようするも、前転して逃れた中村はヒザ十字を仕掛けるもディフェンスした佐々木は片逆エビ固め。かつて第二次UWFの博多スターレーン大会で中野巽耀(当時は中野龍雄)が内藤恒仁戦で見せた「しゃちほこ固め」を彷彿とさせる。だが中村はディフェンスして態勢を崩すと、アキレス腱固めからSTFに移行。ここでようやく佐々木がロープエスケープを選んだ。
これで佐々木はロストポイント1。このまま時間切れ判定に突入するとロストポイントがない中村の勝利となる。互角の攻防だったが、10分を過ぎてからようやく試合が動いた。

ここで佐々木はグラウンドからスタンドに活路を見出す。
佐々木の左ローキックに中村がうめき声を上げる。そこを見逃さなかった佐々木は打撃のラッシュ。ローキックの連打でダウンを奪う。
起き上がった中村。試合は再開。これで中村はロストポイント1。ポイントでも二人は並んだ。

佐々木は打撃を中村に浴びせるが、佐々木の左ミドルキックをキャッチした中村が片逆エビ固めを極めると佐々木はエスケープ。
思えば、この技UWFでは「ジャパニーズ・レッグロック」と呼ばれていた時代があった。また新日本プロレスに参戦していたUWF総大将・前田日明がキックボクサーのドン・中矢・ニールセンとの異種格闘技戦でこの片逆エビ固めでニールセンからギブアップを奪った。UWFの歴史において、片逆エビ固めは思い出深き技のひとつだ。佐々木はこれでロストポイント2。あと3つポイントを失うと佐々木のTKO負けである。

ポイントの奪い合い…どちらも負けられない意地がある

試合再開。すかさず右ミドルキックを放つ中村。互いにバックスピンキックを放つも空を切る。中村は首相撲からボディーへのヒザ蹴りからボディーブロー、そして腕十字に移行。
やはり最後は腕十字で極めたいのかもしれない。だが読んでいた佐々木は逆に反転してサイドポジションを取り、スタンドになると首への低空ドラゴンスクリューを仕掛けるようにグラウンドに移行。
そこから上から体を浴びせて全身を使ってネックロックで絞める佐々木。中村はロープエスケープ。
これで中村はロストポイント2。ポイントの差はなくなった。

中村は右、佐々木は左のミドルキックを打ち合う。次の一手を狙うための駆け引きか。
中村が佐々木のミドルキックをキャッチして足関節技を狙うも、佐々木がアンクルホールド。
しかし中村はヒザ十字からアンクルホールド。体を入れ替えた佐々木がロープ際で腕十字。中村がロープエスケープ。
これで中村はロストポイント3。初めて佐々木がポイント差で中村をリード。

だがすぐに中村の右ハイキックが炸裂し、佐々木がダウン。
起き上がった佐々木。これで佐々木はロストポイント3。両者のポイント差がなくなった。

さらに追い打ちをかえるように掌底ラッシュの中村。だが佐々木も負けずに掌底からヒザ蹴り、左ハイキックで中村からダウンを奪う。

なんとか起き上がった中村。これで中村はロストポイント4で、あと1ポイントを失うとTKO負けとなる。追い込まれた中村は右ミドルキック、ヒザ蹴りで反撃して、佐々木のバックスピンキックをキャッチして脚を取って背後に回ってスリーパーホールドを狙うも、首をつかんでスナップメイヤーで切り返す。そこから得意技である日田丸式パイルドライバー(ゴッチ式パイルドライバー)を狙うも、ディフェンスした中村はバックを取ってジャーマン・スープレックスで投げるが、佐々木が中村の右腕を取ってアームロックを狙う。ブリッジから反転した中村は腕十字。そこからスタンドにいた佐々木の足に絡みついてヒザ十字が極まる。佐々木はロープエスケープ。これで両者ロストポイント4。共に残り1ポイント。

令和で魅せた俺達のU-STYLE

両者はスタンドでの打撃勝負。掌底とキックのラリーが続く。佐々木のジャンピングハイキックが崩れて、中村がサイドポジションを取り、リング中央に持ち込んでからの腕十字。だが佐々木が反転して逆に腕十字。残り時間1分。それでも二人はノンストップで動き続ける。
ヒザ十字を極めようとする中村だが、佐々木はディフェンス。さらにアームロックを狙うも、佐々木が体を逃れて、スタンドに戻す。
キック、掌底、ヒザ蹴り、互いの打撃音が会場に響き渡るも決定打とならず、20分時間切れ。ロストポイントの差もないため(4-4)、この試合は引き分けとなった。ノンストップで動き闘い続けた両者は試合後、マットに倒れ込んだ。すると会場からは拍手が起こり、あの「UWFのテーマ」が流れ、佐々木も康応するようにそのTシャツに指を差した。試合後、中村は自身と佐々木のバックボーンである「U-STYLE」のTシャツを掲げた。

マイクを握った佐々木は 「22年前、あの頑固者に憧れた二人が、U-FILE CAMPでなぜかこいつとペアで練習したんだよ。 今日ここでこいつと、俺らの原点U-STYLEで闘えたことでちょっと自分の中で答えが見えたかなと。 中村大介、こいつ見ての通り本当に強いんです! この前も総合格闘技のタイトルマッチ挑戦して、41歳でまだトップで闘ってるんですよ! こいつの闘いを見てたら、まだまだ負けてらんねえなといつも奮い立たされてるんですよ! 勝って終わりたかったけど、これも俺のUスタイルの道かなと。 絶対このスタイルを進化させて残していく!」 と語った。
そして、二人は握手してから深々と座礼し、健闘を讃え合った。そこには令和の世で、俺達のU-STYLEをリングで魅せた二人の充実感と達成感に満ちていた。
九州発UWF「STARLANE」は実に爽やかに締めくくった。

試合翌日、中村は自身のTwitterで佐々木戦についてこのようなツイートをしている。

「『俺達のU-STYLE』。佐々木さんはやっぱ、強かった。そして楽しかった!『九州プロレスのマンデーナイトよりの使者』でした。師匠に見て欲しいなぁ…。とにかく、火が着きました。また、改めて、U道を追究していきます。また走って行くぞ!」

中村は現在、総合格闘技の世界でもDEEPフェザー級トップランカーとして活躍し、10月24日「RIZIN.31」ぴあアリーナMM大会にも参戦する。またプロレスリング・ノアでは杉浦軍のメンバーとしても活動中。この男、今が全盛期。格闘技でもプロレスでもUWF道を邁進する中村大介に注目したい。


ハードヒット、LIDETUWFに続いて九州の地で誕生した現在進行形のU「STARLANE」のメインイベント・佐々木日田丸VS中村大介。この試合は互いに格闘技、プロレス、UWFをきちんと知っている猛者同志だからこそ名勝負として成立した現在進行形のUバウト。やはり強さを追い求める格闘プロレスUWFに挑むのならば、実際に会得するにしても、鍛錬を積みにしてもどのような形であれ格闘技という存在は避けて通れない。この動きに整合性があるのか、リアルなのか。情報化社会となり、総合格闘技も繁栄してきた令和の世で、UWFを選ぶということはそれ相当の覚悟が必要である。

九州発UWF「STARLANE」が一過性のものではなく、継続させるブランドとなるのならば、やはり選手の育成と人材発掘が必要である。そこはプロデューサーである佐々木の手腕と九州プロレスのバックアップにかかっている。

最後に、現在のUWF戦士が繰り広げた激闘を、二人の師匠であるLIDET UWFプロデューサーである田村潔司はどのように受け止めたのだろうか。彼の視界には届いたのか、それとも届いていないのか、赤いパンツの頑固者と呼ばれる彼の真意はなかなか読めない…。

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