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総合経済対策は「85点」!

私は、9月の内閣改造により内閣府の大臣政務官を拝命しましたが、その担当は、金融(金融庁)、経済財政、新しい資本主義、税制、感染症危機管理、スタートアップ推進などです。
このため、11月2日に閣議決定された総合経済対策も、新藤義孝大臣のもとで井林辰憲副大臣とともに立案に携わりました。
その総合経済対策については、いろいろな報道があり、いろいろな評価がきかれていますが、その内容や効果が正確に報道され、国民の皆さんに十分に理解されるまでには至っていないのではないかと思っています。
このnoteでは、総合経済対策を担当する大臣政務官として、私なりの解釈や評価も加えながら、できるだけわかりやすく説明したいと思います。

0.あらかじめ結論=総合経済対策は85点!

・今回の総合経済対策+減税・給付は十分に合格点=85点
・短期的な生活支援・景気対策と、中長期的な賃上げ・成長戦略等のバランスが良い
・特に「減税・給付」は「デフレ脱却」のための切り札になる
・あとは国民に対する「わかりやすい説明」と、政府として「やり切る」こと

1.今回の総合経済対策の位置付け

(1)攻めの経済対策

今回の総合経済対策には、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」という題名がつけられています。
岸田総理は、10月23日の臨時国会冒頭の所信表明演説の中で、
・変化の流れを絶対に逃さない、掴み取る
・30年来続いてきた低物価・低賃金・低成長の「コストカット経済」からの変化
・持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済への変革
・変革を力強く進める「供給力の強化」と、物価高を乗り越える「国民への還元」を2つの「車の両輪」として総合経済対策を取りまとめる
・日本国民が「明日は今日より良くなる」と信じられる時代を実現する
と宣言しました。

今回の総合経済対策は、まさにこの考え方に沿って策定されています。
これは、過去3年間のコロナ禍における「守りの経済対策」ではありません。
日本経済を熱量あふれる新しい経済ステージへと移行させるための、「攻めの経済対策」なのです。

(2)十分に合格点=85点

私は、あえてこの総合経済対策に点数をつけるとすれば「85点」と答えます。
短期間で予算制約もあり、与党内だけでも大変幅広い主張と要望がある中で、「100点満点」の政策はなかなか作れませんが、それでも十分に合格点をいただける総合経済対策になったと考えています。
報道などでは、100点満点までの「残りの15点」の部分ばかりクローズアップされている印象がありますが、しっかりと積み上げた「85点」の部分を国民の皆さんにもっと正確に理解していただきたいと思っています。
この総合経済対策をわかりやすく整理するためには、「短期、中期、長期」のように時間軸を分けて考えると良いと思います。
総合経済対策では、この短期・中期・長期の時間軸が、バランスよく組み合わせられていると考えています。

2.短期の政策=物価高騰対策

第1の柱「物価高から国民生活を守る」

短期の政策としては、何よりも「物価高騰対策」です。
その内容は、第1の柱「物価高から国民生活を守る」にある以下のような政策で、これらの政策によって、物価の継続的な高騰で生活や経営が厳しいと感じている国民の皆さんや中小企業などに対する支援をさらに強化していくものです。
・ガソリン高騰対策、電気・ガスの激変緩和措置(来年4月末まで延長)
・農林水産業者等への燃料油激変緩和措置
・重点支援地方交付金の追加(給食費、プレミアム商品券など、地方自治体の対策用)

3.中期の政策=賃上げと成長戦略

中期の政策は、主に第2の柱「持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する」と、第3の柱「成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する」にある以下のような政策です。
これらによって「コストカット経済」から「成長型の経済」に転換させ、賃金・所得が継続的に増加し、経済全体の供給力を高めて新たな成長軌道に乗せていくことにつながります。

(1)第2の柱「持続的賃上げ、所得向上と地方の成長」

・中堅・中小企業の賃上げ(賃上げ促進税制の強化)
・最低賃金の引き上げとそのための支援
・「年収の壁」突破のための支援
・資産運用立国を通じた資産所得の拡大
・インバウンド対応などの観光振興・オーバーツーリズム対策

(2)第3の柱「成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進」

・省エネ、水素、生成AI、半導体等のGX・DX投資
・核融合、先端医療、量子技術、宇宙等の科学技術・先端分野の振興
・ストックオプション税制、事業成長担保権、グローバル・スタートアップ・キャンパス等のスタートアップ支援

4.長期の政策=人口減少対策と安全・安心

長期の政策は、主に第4の柱「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動・推進」と、第5の柱「国土強靭化、防災・減災など国民の安全・安心の確保」にある以下のような政策で、日本経済が成長を続けていく上での制約要因となる構造的な課題を解決に向かわせていくためのものです。

(1)第4の柱「人口減少などの変化を力にする社会変革」

・デジタル田園都市国家構想
・教育(GIGAスクール等)、交通(自動運転、ドローン等)、介護(ロボット導入等)等の変革
・人手不足対策(物流2024対策、資材価格の転嫁、外国人材活用等)

(2)第5の柱「国土強靭化、防災・減災、安全・安心」

・流域治水、公共施設・通信・交通等インフラの防災
・花粉症対策、感染症対策
・経済安全保障、食料安全保障、サイバーセキュリティ強化

5.減税と給付の位置付け

(1)残されたミッシングピース

上記の政策を積み上げていったときに一つだけ懸念が残りました。
その最後のミッシングピースが「個人消費の弱さ」です。
その背景として、物価の高騰が続く中で実質所得が目減りしている方が多く、それが国民全体の消費マインドの重石になっていると考えました。
このミッシングピースを埋める政策として、「減税と給付」が追加されることになったのです。

去年、今年とかなりの賃上げが行われてきていますが、実はそれが物価の上昇に追いついていないため、消費者のマインドが上向いていかないのではないか、と考えました。
以下の図は、東大の渡辺努先生がダイヤモンド・オンラインの「物価の教室」というコーナーに掲載している図をお借りしてきたものです。
この図が、現状をわかりやすく説明していると思います。

(出展)https://diamond.jp/articles/-/330774

この図によると、物価が継続的に上昇している中では、実質賃金は目減りすることになります。
それを賃上げで埋めようと去年、今年と頑張ってきているわけですが、物価の上昇が先行してしまっているため、ほとんどの時期、実質賃金はマイナス圏で推移しており、賃上げしたタイミングだけ物価の上昇分を埋めてゼロ近傍に戻っていますが、物価の上昇によって実質賃金がすぐにマイナス圏に戻ってしまっています。
そうなると、いつまで経っても賃上げの効果を実感できず、自信を持って消費を増やすことができません。
このままこの状況を放置してしまうと、またデフレに戻ってしまうという懸念が出てきました。
このため、来年の賃上げに合わせて減税を実施するとともに、一番困っている低所得世帯に対しては給付を行うことで実質所得の目減り分をカバーし、所得の増加を物価上昇に先行させることで実質所得をプラス圏で推移させるサイクルに転換させることができると考えました(下図のように実質所得がプラス圏で推移)。
まさにこの政策こそが、「デフレ完全脱却」の切り札になるのです。

(2)減税+給付の評価

なお、減税と給付を組み合わせることについて、色々な意見が出ていますが、
・国民が一番実質所得の増加を実感できる減税を行う(一人当たり4万円程度)
・一番困っている低所得世帯には減税の効果が及ばないため、できる限り早く給付を行う(1世帯当たり7万円〜10万円)
・このどちらにも当てはまらない人たちにも支援が及ぶように丁寧に対応する
・さらに子育て世帯には上乗せで支援する
という方向で、年末までに制度設計が行われることになります。
この制度設計はなかなか大変で、さらに自治体や企業の現場の皆さんには給付や減税に対応するご負担をおかけすることになりますが、この政策をやり切ることで、減税と給付を組み合わせ、さらにそれらが及ばない方や子育て世帯にも丁寧に対応するというきめ細かい画期的な支援策となるはずです。

なお、私の個人的な意見ですが、これらの対策はあらかじめ1年に限定することなく、物価の動向や景気・個人消費の状況を踏まえて翌年以降も継続することを選択肢として残すのがいいのではないかと考えます。
そうして、物価上昇が一服し、上記の経済対策が効果を発揮し、景気や個人消費に力強さが感じられるようになれば、自然に解除できる環境になるのではないかと考えます。

6.経済対策を「100点」にするために

(1)丁寧な説明が必要

85点の総合経済対策も、その成果が発揮できなければ、着地として50点や30点になってしまいます。
逆に、しっかり国民の皆さんがその政策の意味や意図を理解し、それによる将来の経済や景気の回復に自信が持てれば、政策の効果は大きくなり、着地として100点満点に近づけていくことも可能になります。
そのためには、岸田総理だけでなく、我々与党の国会議員が「ワンボイス」で上記のような政策の内容とその狙い、効果を説明し、国民の皆さんにしっかりと理解していただき、協力していただくことが必要になります。

(2)政策効果は高まるはず

特に今回は、デフレではない状況、つまり物価が徐々に上がってきています。
そうなると、減税で手元に残った所得や給付で受け取った支援金を銀行預金に積み上げたり、タンス預金としてしまっているだけでは、物価上昇に負けて実質的に目減りしていくことになります。
買おうと思っている物の値段も、来年には今年よりも数%上がっている可能性が高くなります。
このため、将来のために銀行に預金しておくのではなく、必要なものは早めに買うという選択が合理的になるはずです。
これまで、一時的な給付は政策効果が薄いと指摘されていますが、今回の給付や減税の効果はこれまでよりも高まる可能性が高いと私は考えます。

こうしたことも含めて丁寧に説明し、国民の皆さんにしっかりと理解していただくように努めたいと思います。

(3)「やり切る」

そしてしっかりとこの経済対策を「やり切る」こと。
国民の皆さんがこの経済対策の効果に自信を持っていただき、その信頼に応えるために、政府がしっかりと「やり切る」ことこそが、日本経済を「デフレから完全脱却」させ、日本経済を力強い成長軌道に乗せていくことになるのです。

「明日は今日よりも良くなる」、そう信じられる国・経済を作るよう、私も全力で取り組んで行きます!

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