デザイン・設計ってコンピュータに任せるようになるの? | 新しいものづくりの未来

最近、街なかを歩いていると、明らかに人が設計するには難しいような見た目の建物が増えていないだろうか。例えば、ザハ・ハディド氏が提案していた新国立競技場の案も、コンピュータが設計した形が反映されている。そう、最近は、設計も機械が行うようになってきたのである。
前回までは、機械による立体物の造形速度の向上が、人の手作業を遥かに超えているという話で終えた。では設計の工程では、人の役割は完全になくなっているのだろうか。加工の前段階、発想や設計といったフェーズでは、まだ人が行う作業が残されているのではないだろうか。

人の設計をサポートする技術

設計の直感性を向上させるという研究は多くなされてきた。今、3Dプリンタを使って何かを作るときは、コンピュータのモデリングソフトなどを使う。でも本当は粘土細工をする感覚で、設計できたほうが直感的なのではないだろうか。

これに関しては、AR/VR技術を使ったモデリング環境( MicrosoftのMaquetteなど)が提案されている。私も、Unity VR Editorを使って、バーチャル空間で3Dモデリングをやってみたが、これが結構面白い。ルームスケールで巨大なキューブなんかを自在に大きさを変えながら空中に配置するなんて現実ではできないので。

あるいはバーチャルなモデルデータを、現実空間で編集する技術もでている。AR(拡張現実)の考えに近いが、どういうことかというと、例えばMixFabというプロジェクトは、実物体と半透明の映像を重ねながら、バーチャルモデルを設計することができる。たとえば、本物のペンを使って、サイズを確認しながらバーチャルなペン立てを設計できる。

私もMiragePrinterという、立体映像と3Dプリンタを組み合わせたシステムを作ったことがある。これは、実寸大のモデリングに加えて、さらにその場で3D造形ができるようになっている。言ってみれば、3Dプリンタの中でモデリングができるのだ。

このように加工プロセスと設計プロセスをシームレスに繋いで、人がもっと機械による加工に積極的に参加していこうという流れが生まれた。例えば、Interactive Fabricationは機械による加工時に、インタラクティブに人が手を加えることを推奨するコンセプトである。デジタルファブリケーションを、まるで彫刻をつくる手作業のように、素材と対話しながら作れるようにするということである。

ただ、人の作業というのは、効率化を考えると、徐々に減っていく印象はある。正直、面倒な作業は減らしたいと考えている人は多い。

機械による自動設計

その中で、最近は設計をコンピュータが自動的に行う流れがある。
たとえばAutodeskは、開発している設計ソフトに、ジェネレーティブデザインの導入を進めている。これは一見するとエイリアンの宇宙船のような、有機的なデザインであり、目を引く見た目である。
ジェネレーティブデザインは、最適なモデルを自動で作ってくれるツールである。ユーザの希望する最低限の要件を指定すると、それを満たすような設計案を自動で計算してモデルを生成する。最適化の結果、このような有機的なデザインになるというのも興味深い。Autodesk CTOのKowalski氏は、設計者は不要になるわけではなく、関係者や顧客とのコミュニケーションをより緊密に取って的確にニーズを把握して何が必要かを考えるなど、本質的な活動に専念してほしいと述べている。

ジェネレーティブデザインは、すでに色々な設計ソフトウェアに導入されている。私も最近は、CADソフトRhinocerosの追加アドオンであるGrasshopperを使ったりしている。ユーザがパラメータをいじると、最適な形を自動的に作ってくれるようなプログラムをつくることができる。最低限担保してほしい要件だけをクリアすれば、あとの形状はユーザに任せるなんてこともできる。

これが加速すれば、ユーザが希望するものを、機械が自動的にデザインして作ってくれる、なんて未来が来る。それはスタートレックに登場するレプリケーターに近い。これは、作り出してほしいものを音声入力すると、材料となる分子とデータをもとに、短時間で物体を構築し、提供してくれるマシンである。(レプリケータが普及することで貨幣経済が衰退するらしいが、その辺りの話も面白い)

これに今、近い方法が、Deep Learning のGAN(Generative Adversarial Network)などで、訓練データをもとに新しい形を生成してくれるアルゴリズムである。例えば大量のとあるブランドの服を学習させると、それっぽい服を新たに作ってくれる。まだソフトウェアベースだが、3Dモデルを作って3Dプリンタで作るなど、ハードウェアの自動生成に繋がっていくだろう。

結局、設計における人と機械の役割は?

人の作業は機械の教師?

そうすると、現状の人の作業というのは、機械が賢くなるように、データを教えているという、いわば教師のような存在なのだろうか。
国際会議SIGGRAPH 2012で発表された"How Do Humans Sketch Objects?"では、スケッチ認識システムを作るために、Amazon Mechanical Turkを使って、沢山の人に手書きの絵を書いてもらって、2万個の手書きの絵を集めていた。また伝統工芸などでも、職人の技をセンサなどを使って残して、スキル習得に活かそうという動きもある。
人はまだまだ機械に覚えさせる仕事は残されているが、人の役割というのが、学習データを作るためだけというのも悲しい気もする。

手作りに価値が生まれる?

人が設計しなければいけないシーンというのも考えてみる。なんとなく機械が設計データを全部作ってしてしまうのは、悲しい感じもする。一方で一つ、明るい未来として、人が作った設計データに対して価値が生まれるかもしれない。
例えば、マインクラフト上でも千と千尋の神隠しの建築物を作ったしまった強者など、誰かが作ったモデルデータに価値が生まれるということである。出力されたフィジカルなものではなく、バーチャルなデータに価値が生まれる。有名デザイナーの作ったデータが高値で売れる。作るプロセスにストーリーが伴い価値が生まれるのである。
しかし、GANのようなアルゴリズムにより、誰が作ったかも曖昧になってしまうと難しいのかもしれない。でもブロックチェーンなどデータに対して信頼があるとよいかもしれない。

人はみな機械に指示出す存在に?

一方で、現状では機械も何か作業を始めるキーになるものがないと動けない。機械は手を動かすのは得意になるだろうが、一体何のために作っているのかというのを考えるのはあまり得意ではない。
機械に対して、作って欲しいものの希望を伝える、そして提案してもらった選択肢から、最適な解を選び出す。
製造、設計に関わる仕事は機械に投げて、人は総合的なディレクションにまわる。一人ひとりがディレクターとなり、ビジョンを決めて、多品種の商品を企画、製造するようになるだろう。

おそらく楽になるのではなく、求められるスキルは増えるし、俯瞰した視点、複数のプロジェクトを同時に一人で回す必要がある。仕事量は増えるだろうが、分野横断的なアイデアも生まれやすい気はする。

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山岡 潤一

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