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【文字起こし】枝野幸男 2019年6月25日 安倍内閣不信任決議案 趣旨弁明

会期末が近づく2019年6月25日、野党は安倍内閣不信任決議案を提出し、否決された。この趣旨弁明で立憲民主党・枝野代表は不信任理由を約56分にわたって演説。本記事では、この趣旨弁明を文字起こしする。

概要

決議案文

(枝野代表、コップに水を注ぎ、一口飲んだ後、正面を向いて深く一礼して演説を始める)

立憲民主党代表の枝野幸男です。
私は国民民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会保障を立て直す国民会議、社会民主党・市民連合、および立憲民主党・無所属フォーラムを代表し、安倍内閣不信任決議案について、提案の趣旨を説明いたします。
まず、決議の案文を朗読します。
本院は安倍内閣を信任せず、右決議する。

年金100年安心の嘘

安倍内閣が不信任に値する理由は枚挙にいとまがありませんが、初めに指摘しなければならないのは、国民生活に直結する年金と消費税に関する無責任かつ不誠実極まりない姿勢であります。

政府与党は年金問題で「100年安心」と説明してきました。年金支給額を減らすことで人口減少の中でも制度としての年金が100年安心だと過ぎないものをあたかも一人一人の国民にとって年金が100年安心であるかのごとき、印象を与えてきました。一種の印象操作と言わざるを得ません

今般発表された金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書は公的年金だけでは老後資金が2000万円不足するとしています。これまで政府与党が進めてきた印象操作を否定するもので多くの国民が戸惑い、疑念の声を上げたのも当然のことであります。

それだけでも問題である上に、麻生金融担当大臣は自らの意に沿わないので受け取りを拒否するという前代未聞の行動に出ました。

さらに、年金に関しては将来の支給額の指針となる財政検証の隠蔽が続いています。この検証は10年前には2月、5年前は6月に発表されています。ところが今回に限って、発表時期は「検討中」の一点張りでメモさえ示されていません。

厚生労働担当者は「データは揃っている。これまでと同じペースで検討は進んでいる」と答えています。
なのに、なぜ発表されないのでしょうか?
年金の支給額が減額するとの試算もあり、都合の悪いことは国会を閉じた後、あるいは選挙後に先送りする姿勢ではないかと疑わざるを得ません。

統計不正で審議ができないまま、消費税引き上げ強行

消費税に引き上げ問題では、景気の指標となる毎月勤労統計における統計不正問題が発覚しています。単なる不正に止まらず、政権に有利になるよう統計を操作したとの疑惑まで浮上する事態です。
私たちは消費税増税の審議に資するために共通事業所にかかる実質賃金を公表するよう本年2月から求めてきました。
しかし、いまだに安倍政権は理由もなく公表を拒み続けており、消費税増税の可否について実質的な審議ができない状態が続いています。

このように審議会の報告書を受け取らず、年金の財政検証や共通事業所にかかる実質賃金を隠蔽する安倍政権の姿勢は、国会審議を妨害するものであり、民主主義を空洞化させるものであります。
目前に迫る参議院選挙が終わるまで公表しないとの報道まで出ており、それが事実であるならば、国民生活を犠牲にして自らの政権の延命を図るという許しがた暴挙が行われていると厳しく非難せざるを得ません。

この1点のみを以ってしても安倍政権を信任することはできません。

隠蔽、改ざんを繰り返した年金問題

そもそも、年金については、安心ばかりを強調する姿勢そのものが国民の将来不安を高める要因となっています。多くの国民の皆さんは金融審議会の報告書を待つまでもなく、年金だけでは老後の資金が不足するかもしれないという強い不安を持っておられます。
その不安を抱きながらも、なんとかやり繰りして暮らしている高齢者の皆さん、なんとかやり繰りして暮らしていかなければいけないと考えている皆さん、こうした皆さんに対して、制度としての年金が100年安心であることをいくら強調されても、いや、強調すればするほど老後の不安に寄り添っていない政治の姿勢に不信と不満が高まっているのではないでしょうか。

確かに人口構成の変化と長寿化によって、年金支給額の水準を維持する、ましては増額することに対しては大きな困難があります。しかし、だからと言って、報告書の受け取りを拒否したり、制度が100年安心だと強調したりしても、老後の不安が小さくなるわけではありません。多くの高齢者は年金の額にも不安を抱いています。特に、国民年金など年金額が少ない皆さん、厚生年金を受け取っていた配偶者に先立たれた方など、低年金の方の底上げ施策も重要であります。
同時に、多くの高齢者に共通する不安は医療と介護です。健康な間は少ない年金をなんとかやり繰りして暮らしていくことができても、病気になった時にきちんとした医療が受けられるのかどうか。体が不自由になった時に必要な介護が受けられるのかどうか。
この不安が日本社会を覆っています。

こうした不安に応えるため、我々は先日の党首討論で総合合算制度の早期導入を提案しました。医療、介護、保育、障害者福祉にかかる自己負担を所帯単位で合算し、所得に応じて上限を設けるものです。後で述べる介護・医療の質的量的充実と合わせ、老後の不安を少しでも小さくするために導入は不可欠であります。
ところが、総理からは年金給付水準を維持するための他の党首からの提案を含め、党首討論では野党からの建設的提案に何らの言及がありませんでした。
そして、後日テレビ番組で何ら具体的な根拠も示さず、総合合算制度を「意味がない」と仰りました。不誠実極まりないと言わざるを得ません。

将来の不安の本質に寄り添わない、安倍政権の姿勢は不信任に値するものであります。私は、来たる参議院選挙を老後を始めとする暮らし・安心回復選挙にする決意であります。現実を隠蔽、改ざんし、安心を装う今の政権に対して、一人一人の暮らしの安心に寄り添い、真に安心できる社会を目指して、地道に歩みを進める政治へと転換して参ります。

(枝野代表、コップの水を飲む)

企業の内部留保は過去最高の一方、上がらない賃金

安倍政権を信任できない、次の理由は、経済であります。

第二次安倍政権発足以降、確かに株価は大幅に上昇し、輸出企業、大企業を中心とした企業収益は過去最高に達しています。過去の成功体験では膨らんだ収益が賃金や設備投資を通じて国内に循環をし、内需を拡大させ、持続的な経済成長に繋がりました。
徹底した金融緩和、それによる円安、財政出動。確かに景気変動に対する刺激策としては正しい。今回も輸出企業の収益増などの成果は挙がりました。
しかしながら、6年を超えても賃金や個人消費の上昇に繋がらず、企業収益の多くは内部留保されています。

高度成長期とは全く状況が違っています。
平成の初めにバブルが崩壊して以降の日本の経済はいわゆる景気循環における不況とは異なった状況の中にあります。構造的にそれまでの戦後復興から高度成長という社会状況が大きく変化したのであります。

かつて、日本が途上国あるいは新興国であった時代と異なり、先進成熟社会となった日本は他の途上国の成長によって、もはや規格大量生産では稼げない時代に入っています。
このため、輸出を伸ばしても、それによって稼いだ富が国内の雇用や賃金増に繋がるような流れ方をしていきません。

逆に、企業は国際競争を理由として賃金を抑制することで利益を伸ばそうという動きを続けてきました。個別企業の判断としては間違ってはいません。
しかし、ただでさえ人口減少、高齢化という長期にマイナスの社会環境の中にあり、賃金が伸びなければ消費が冷え込むのは当然です。
賃金や家計所得が伸びなければ、経済の6割を占める消費は低迷し、持続的な経済成長には繋がりません。個人消費の拡大による経済の持続的成長には、企業収益を起点とする経済運営から家計所得の底上げを起点とする経済運営へとパラダイムシフトすることこそが必要であります。

安倍政権は経済団体の幹部などに賃上げを求めてきましたが、パフォーマンス以上の意味はありません。個別企業の企業利益の観点からは、可能な限り低賃金で便利な雇用を求めるのが合理的な姿勢です。日本が資本主義国である以上はいくら政治的に圧力をかけても、株主に責任を負っている企業経営者がこれと大きく異なる経営判断をすることは困難であります。
個別企業が個社の利益の観点から賃金を抑制している結果、全体としての所得水準が抑制され、消費を冷え込ませている現状はまさに合成の誤謬(*)です。

*「合成の誤謬」とは、ミクロ視点では正しくてもマクロ視点では意図しない結果が生じること

政治が富の流通を促し、全体としての経済を成長させる必要があります。
この視点の欠けていることが経済の持続的成長をもたらさないことの原因です。
こうした問題意識のない安倍政権は到底信任することができません。

さらに申し上げれば、こうした個人消費が伸びずに消費不況の状況にある中で安倍政権は10月からの消費税増税に踏み切ろうとしています。
消費が冷え込み、しかもそこに大きな心理的要素も背景に横たわっています。
こんな状況の中で消費税を引き上げれば、消費がさらに冷え込み、経済に打撃を与えることは間違いありません。

経済の実態を踏まえず、そして、消費者心理に寄り添おうとせずに消費税増税を断行しようとしている安倍政権はこの点からも信任することができません。

保育士や介護職の低賃金を放置する、トンチンカンな政策

もっとも、富の流通を促すために再分配をすると言っても、単純にバラまくだけのでは財政的に持続可能性がありません。効果的な再配分が必要であります。
少子化による人口減少、超高齢化社会という時代状況を踏まえて、最優先すべきは子育てや老後の安心を高める公的なサービスを充実させるため、低賃金で人手不足の分野において賃金を大幅に引き上げることであります。
介護にしても保育にしても公的に資金がどれくらい流れるかによって、賃金には事実上の上限がかけられています。本来の経済の論理から言えば、人手不足である分野においては賃金が上昇し、そのことによって人を集めてくる。
それが経済のメカニズムでありますが、介護の事業を営む者にとっても、保育所を経営する者にとっても、その資金の大半を国などからの公的な資金に頼っている以上、そこから流れてくる資金に限りがある限りは、いくら人手不足であっても賃金を引き上げることによって人手不足を解消することはできません。
このことが、高齢化がとっくの前から言われている中で、その高齢化の進み具合に対して、介護サービスの充実が追いついていかない大きな要素であり、保育所が不足をしていると言われる中で各自治体が保育所を増やすことに努力をしている中、そのスピードが残念ながらまだまだ十分ではないことの最大の要因であります。

私たちはこうした分野を中心として必要な安心をつくる上で必要な公的サービス分野でそのための財源が公的な資金に頼っている分野、そうした分野の人件費にこそ限られた予算を重点配分して、将来の不安を小さくすると共に、もともと低賃金でありますから消費性向の強い皆さんであります。そうした皆さんの賃金に回した資金はそのままほとんど全額が消費の拡大に繋がるということを指摘をしたいという風に思っております。

これに対して、保育士や介護職員などの賃金にさらに集中的に資金を回すべきという我々の主張を顧みることなく、安倍政権は保育所などの無償化を断行しようとしています。
もともと保育所の保育料は、所得に応じて低所得の人たちは従来から免除をされています
所得の高い人たちにはそれなりの保育料を負担して頂いており、財源にゆとりがあるならば私も一刻も早く無償化すべきと考えますが、こうした財源をまずは保育所の不足という今、喫緊の課題の方に回すべきであり、明らかに優先順位を間違えた使い方と言わざるを得ません。

現場の実態に全く寄り添わない政策であって、いま、人口減少の中で重要視しなければならない子育て支援について、こうしたトンチンカンな政策を進めている一点を以ってしも不信任に値すると言わざるを得ません。

(枝野代表、コップの水を飲む)

農業を始めとする一次産業の切り捨て

所得の再分配政策として、波及効果、二次的効果が大きいものは農業などの第一次産業の経営の安定であります。土、水、空気、そして、地域社会を守る。水産業は国境を守る。一次産業には公的な役割がありますが、その役割はさらに拡大をしております。
一方で、この間、自由貿易が拡大をしていく中で、その代償であるかのように農業経営など一次産業の経営が不安定化しています。
こうした皆さんが安定的に持続的に一次産業を営んでいけるような再分配は公的な役割の観点からもすべきであります。
地方における基盤産業である一次産業の安定化なしにいくら地方創生を叫んでも地域の活力を取り戻すことはあり得ません。

安倍政権は米作農家の経営安定に大きく貢献してきた米の直接支払交付金について、平成30年産米から廃止をしました。農業、林業、水産業など、様々な分野で他の産業と同一視し、経済効率のみを過度に追求する政策を推進してきました。
多面的機能を評価し、一次産業の経営安定を図るべきという方向性に大きく逆行するものであります。こうした一次産業に対する姿勢も不信任に値するものであります。

労働者を便利に安く働かせる、労働法制の改悪

公的役割を持つサービスや一次産業に止まらず、いわゆる民間での企業の労働者の皆さんに対しても適切な再分配がなされなければなりませんが、民間企業に対して国が直接、賃金等をコミットすることはできません。
労働法制などを通じて、間接的に関与するのが資本主義の原則です。
こうした状況の中で安倍政権は高度プロフェッショナル制度を強行をしました。明らかに時代を逆行しています。
労働時間規制が及ばない労働者をつくるという労働法生の本質に反するものであり、それを不適切データをもとに審議し、採決を強行いたしました。
これだけでも不信任に値するものであります。

間接的にしか関与はできませんが、こうした民間企業において賃金の底上げを図るためには、むしろ働いたら賃金を貰えるという当たり前のことを当たり前に実現することです。
そのためにまずやらなければならないのは、サービス残業を許さないことであります。
残業したら、残業代を払う。それは、強行した高度プロフェッショナル制度などを除いて、法律で決められた当たり前のルールであります。
残業しながら残業代が支払われない。
サービス残業は明白な違法行為であります。
その違法行為を厳しく取り締まることだけでも働いている皆さんの賃金の底上げを図ることができます。

もちろん、やり方とやる順番は気をつけなければなりません。
大手企業における労働分配率は低い水準で横ばいです。一方で中小零細企業においては実は労働分配率は非常に高い水準で高止まりをしています。
従いまして、労働分配率が高い中小零細企業において、さらに労働分配を進めることを促せば、それは経営自体が成り立たなくなり、日本経済にとっても大きな打撃となります。
しかし、一方で大手企業の多くは労働分配率の中で内部留保を積み重ねています。
こうした企業において、サービス残業という違法行為を行っていることに対しては、厳しく取り締まりを行う。これは政府の姿勢、方針をしっかり示せば、まさに行政の運営によって、いつでも実現できることであります。

こうした努力をすることもなく、むしろ労働分配率の低い、内部留保をたくさん貯めている大企業から、さらに労働者を便利に安く働かせることができる、そうした方向での労働法制を積み重ねてきた安倍政権は到底信任することはできません。

「我が国固有の領土」と発言すらできなくなった、北方領土問題の大幅な後退

外交についても、やってる振りばかりで成果に結びついていないばかりか、我が国の国益を損ね続けていると言わざるを得ません。

まず、日露関係です。
プーチン大統領と何度も会談を重ね、友好関係を強調してきましたが、プーチン大統領からは「北方4島について一部と言えども返還する意思はない」旨、発信されました。
この間、安倍政権はなぜか一貫して言い続けてきた、「北方領土は我が国固有の領土」という発言をしなくなってしまいました。領土問題について大幅に後退をさせたと言わざるを得ません。
この一点を以ってしても安倍内閣は信任するには到底値しないものであります。

北朝鮮から無視された、完全に蚊帳の外の北朝鮮外交

拉致問題を始めとする北朝鮮との関係で安倍総理や河野外務大臣は最大限の圧力のみを繰り返し唱え続けました。河野外務大臣に至っては、北朝鮮との断交を他国に求める発言までしておりました。
ところが、南北首脳会談、そして、米朝首脳会談が実現し、「前提条件なく会いたい」と180度の方針転換をしたものの、北朝鮮からは事実上無視されている有り様であります。
日本外交に主体的な姿勢は全く見られず、完全に蚊帳の外に置かれる格好となっております。


選挙後まで隠蔽しなければならいほど日本に不利な日米貿易交渉の密約

一方で、日米においては親密な関係が言われていますが、先日のトランプ大統領訪日の際、日米貿易交渉についてトランプ大統領側からは事実上、日本側から大幅な譲歩があったと受け止めざるを得ないような発言があり、なおかつ参議院選挙まで隠しておくという趣旨の発言がありました。
日米で密約が交わされ、選挙のために選挙後まで先送りをしたと受け止められても仕方のない状況でありますが、これに対して政府からは明確な説明はありません。

この点についても安倍内閣を信任することはできません。

(枝野代表、コップの水を飲む)

日本ではなく米国を防衛するためのイージスアショア配備

イージスアショアの配備問題についても申し上げます。
北朝鮮情勢が大きく変化している中で、少なくとも1機1200億円と言われるイージスアショアの配備は本当に必要なのでしょうか?
陸上型、固定型ですから、相手側から攻撃目標にされるのがイージスアショアであります。機動性のあるイージス艦の配備の方がよほど合理的ではないでしょうか。
しかも、防衛省による調査はグーグルアースを使ったいい加減なもので、次々とミスが明らかになっている。AIの時代にグーグルアースを使って調査するのでは、「B29に竹槍」と言われた旧日本軍の体質と変わらないと言われても仕方がないのではないでしょうか。

配備計画が立てられている秋田と山口は、北朝鮮とハワイ、北朝鮮とグアムを結ぶ延長線上にあります。日本防衛のためではなく、米国防衛の目的ではないかとこれまた疑われても仕方がありません。ここまで発言のメモを用意して参りましたが、今日になってさらに防衛省の調査に新たなミスが2箇所も発見されました。
もう、もはやイージスアショアの配備はいったん白紙に戻すしかないと考えます。

アメリカが売りたい欠陥兵器を言いなりに買う、戦闘機1兆円の爆買い

イージスアショアの配備だけではありません。
防衛予算には様々な問題があります。
現実に事故を起こし、安全性に疑問のある、各国が配備を撤回している戦闘機F35。1兆円を超える資金で爆買いをしています。

オスプレイの配備にも安全性の面から疑問があります。
いずもの空母化など表面装備ばかりを爆買いし、防衛予算は過去最大。
しかも、後年度負担というローンまで付けている。
アメリカの対外有償軍事援助、FMSに基づく購入額が増加する中で防衛装備の調達について、日本の安全に何が必要かではなくて、アメリカが売りたいと思っているものをアメリカの言いなりになって買っているのではないかと疑わざるを得ません。

未だに明らかにされていない、自衛隊の日報隠蔽

そもそも、日本の安全保障についてはシビリアンコントロールの観点から大きな問題が生じ続けています。イラク、南スーダンでの「無い」とされていた日報が相次いで発見されながら、今なおその経緯や原因は明らかになっておりません。組織的な隠蔽ではなかったと繰り返していますが、合理的説明はありません。大臣や国会に情報が提示されなければ、文民統制は成り立ちません。
シビリアンコントロールは文民統制と日本では訳されていますが、民主的な統制です。
内閣、大臣や議会に対して、適切な情報開示のなされることがシビリアンコントロールの前提であり、それが成されていません。
いわゆる大本営発表が結果的にいかに日本の国益を損なったのか。
自衛隊、防衛省こそ最も敏感であるべきであります。

残念ながら、そのシビリアンコントロールが十分に働いていない。
そんな状況の中で表面装備ばかり爆買いし、しかもグーグルアースを使った杜撰な調査がなされている。日本の安全保障の観点から安倍政権に委ねるわけにはいかないと考えます。

(枝野代表、コップの水を飲む)

自衛隊違憲論を振りかざす、20年以上も時間が止まった総理の時計

安全保障に関連して、私が特に強い違和感を抱くのは、いまだに総理とその周辺だけが自衛隊違憲論を振り回していることであります。
私たちは集団的自衛権の行使容認について憲法違反と考えます。
しかしながら、個別的自衛権の行使と自衛隊の存在が憲法違反でないことは既に明白であり、定着をしています。

安倍総理は憲法違反かもしれないと思いながら、自衛隊を指揮しているのでありましょうか。
憲法違反かもしれないと思いながら自衛隊予算を計上しているのでしょうか


私を含む、自衛隊予算を含む予算に賛成をしたことのある者は、自衛隊が合憲であるという前提に立たねば論理矛盾となります。
確かに、私が子供の頃には自衛隊が違憲という考え方も少なからず存在しました。
ある時期までは、その当時の野党第一党が自衛隊違憲論に立ち、自衛隊の合憲性が政治の大きなテーマでした。しかし、現在の野党第一党である我々立憲民主党は自衛隊は合憲であるとの明確な立場であります。

安倍総理の周辺では20年以上、時間が止まっているのではないでしょうか

自衛隊の総指揮感でありながら、自ら自衛隊の合憲性について疑義を提起する総理の姿勢は、それだけで不信任に値するものであります。

沖縄の民意に全く寄り添わない、辺野古基地建設問題

去る6月23日、沖縄全戦没者追悼式がとり行わられ、私も参列をいたしました。

知事からの思いのこもった平和宣言がなされ、衆参両議長からも精一杯、沖縄県民の思いに寄り添おうという挨拶がありました。
ところが、総理だけ何ら思いがこもっているとは受け止められない、昨年の挨拶をコピー&ペーストしたと言われても仕方のないような挨拶であったのは、甚だ残念であります。

辺野古基地建設問題はアメリカとの関係という国際問題を含んでいるため、簡単に解決できることでないことは私も十分に分かっています。再び期待だけを高め失望に転じさせるということは決してしてはならないと思っています。しかし、これだけ県民の明確な意思が繰り返し示されているのに、なんら寄り添おうともしない、寄り添おうとする姿勢を示さず、ただただ工事を強行する姿勢は民主主義と地方自治の本旨に反すると言わざるを得ません。
簡単ではない、厳しい道であるかも知れませんが、いったん工事を中断し、辺野古基地建設なき普天間基地の危険性除去に向けて、真摯な日米交渉に入るべきであります。

沖縄の民意に寄り添う意思が微塵も感じられない安倍政権は信任に値しません。

改ざん、隠蔽、覚醒剤。官僚の相次ぐ不祥事

ここまでも一部述べてきておりますが、安倍政権の発足以降、森友問題・加計問題や自衛隊日報の改ざん・隠蔽問題、厚生労働省の働き方データ捏造問題など、省庁横断的に考えられないような不祥事が相次いでいます
さらには残念ながら複数の官庁でキャリア官僚の覚醒剤事案というのも発覚をしています。社会的影響の大きい芸能人の同種事案以上に私は深刻な問題であると思っています。

内閣人事局制度を悪用し、官の世界でも安倍一強体制を築いてきた中での相次ぐ不祥事であり、内閣として責任が無いとは到底言えません。

暴言を繰り返す大臣たちの資質不足

加えて、安倍内閣を構成する大臣の資質にも、ただただ呆れ返るばかりであります。
国民を小馬鹿にしたような暴言、方言を性懲りも無く繰り返す麻生太郎副総理・財務金融担当大臣は言うに及ばず。
適材適所とは言い難い、何人もの大臣が全くもって見当違いの暴言で国民を呆れさせ、海外にまでその恥を晒してきました。
それもこれも森友・加計問題を始めとして、説明責任とは口ばかり。
国会審議からただただ逃げ回る安倍総理を始めとする、内閣全体の不誠実かつ不見識極まる政治姿勢が全ての問題の根源にあることは、改めて指摘するまでもありません。

その責任は免れようもなく、不信任に値するものであります。

(枝野代表、水差しからコップに水を注ぎ、一口飲む)

LGBTQ、障害者を始めとするマイノリティへの差別発言

相次ぐ問題発言の中でも、特に多様性を認める方向に逆行する発言が相次いでいること。これは深刻な問題。
価値観とライフスタイルが多様化する一方で、社会の分断が深刻化する日本社会においては、違いを認め合い、多様性を力にする姿勢こそが求められます。
特に、LGBTQや障害をお持ちの方など少数の立場の人に対して、寄り添う姿勢が全く感じられない発言が相次いだことは甚だ残念であります。

「女性活躍」の掛け声とは裏腹に、選択的夫婦別姓すら進められない政府の時代錯誤

また、女性活躍と言いながら、選択的夫婦別姓すら進められない政府与党は時代錯誤と言わざるを得ません。
こうした状況を放置しているばかりか、むしろ後押ししていると言われても仕方のない安倍内閣の姿勢は到底、信任することができません。

議会制民主主義の破壊

縷々述べてきた通り、立法府軽視の許しがたい行動と傲慢な姿勢によって、我が国の議会制民主主義は根底から破壊されている事態は、これ以上見過ごすことができない段階まで来ています。
公文書の改ざん、隠蔽、破棄、口裏あわせが数え切れないほど横行する中で、今回また麻生副総理による金融審議会ワーキング・グループ報告書の受取り拒否が生じました。
さらなる忖度の拡大を招く重大事態です。

せっかく議論して提案しても政府の意向と異なると受け取ってももらえない。
こんなことを公然と見せつけられたら誰もが忖度に走らざるを得なくなります。

現に、財政制度等審議会の報告書では、原案にあった「年金水準低下」という記述が最終段階で削除されたことも指摘されています。

国会ではこれまでも数々の重要法案について、有無を言わさず強行採決し、総理が繰り返す「丁寧な説明」とは程遠い姿勢が示されてきました。
傍若無人の限りを尽くす姿勢によって議会制民主主義は戦後最大の危機に瀕していると言っても過言ではありません。

150日間の会期中、115日以上も開かれていない予算委員会

そんな中、この国会では内外に重要な諸課題があるにも関わらず、150日間の会期のうち、実に115日以上にわたり予算委員会を開こうとせず、国民に対する説明責任から逃げ回ってきました
見苦しい限りと言わざるを得ません。

(野次が大きくなり、枝野代表、30秒ほど沈黙)

大島理森議長:
発言者、続けてください。ご静粛にお願いします。
「国会のことは国会で」と壊れたレコードのように繰り返しますが、自由民主党総裁である安倍総理が予算委員会で・・

(野次が大きくなり、枝野代表、コップの水を飲む)

大島理森議長:
ご静粛に。発言者、続けてください。
自由民主党総裁である安倍総理が予算委員会で内外の諸課題に全ての大臣と共に丁寧に説明するとの意向を示せば、予算委員会はすぐにでも開くことができます。
総理はいつぞや「常に民意の存するところを考察すべし」と原敬の言葉をうそぶいておられましたが、あれは一体何だったのでしょうか?

内閣の不十分かつ不誠実な対応には行政府としての矜持は微塵も感じられず、国民を小馬鹿にした傲慢あるのみであります。

犠牲者が相次ぐまで無視し続けた児童虐待

異常なこととして、もう一つ指摘しなければならないのは、野党からの建設的提案を無視し続けながら、野党に対する批判ばかりを繰り返す姿勢であります。

(枝野代表、コップの水を飲む)

大島理森議長:
ご静粛に。
先ほど述べた総合合算制度など老後の安心に関する提案を党首討論で無視しただけではありません。
この国会で野党提案を一部受け入れて成立した児童虐待防止についても、野党は昨年から提案していたにも関わらず、犠牲者が相次いで社会問題となるまで政府与党は無視し続けました

審議すべき他法案が無くなっても、原発ゼロ法案の審議には応じない政府

立憲民主党などが昨年提案した、いわゆる原発ゼロ法案は昨年の通常国会で経済産業委員会において審議すべき政府提出法案が無くなったにも関わらず、審議に応じませんでした

わずか3年3ヶ月の民主党政権批判をなぜか批判し続ける安倍長期政権

他方で安倍総理は2009年から3年3ヶ月の非自民政権について「悪夢」と繰り返し非難をしておられます。
2009年政権は有権者の期待に十分お応えることが出来ませんでした。
その一員として、私も改めてご期待頂いた皆さんにお詫びを申し上げます。

しかし、非自民政権3年3ヶ月の後を受けた安倍政権が発足してから、既にその2倍となる6年半が経過しようとしています。

本当に安倍政権が国民生活を向上させる成果を挙げているなら、そのことを繰り返し訴えるだけで十分に国民の支持を得られのではないでしょうか?
大島理森議長:
ご静粛に。質問者、続けてください。失礼、発言者、続けてください。
「何でも反対、批判ばかり」というのはかつて野党につけられたレッテルでした。

(「レッテル」という言葉に反応する野次に対して)
どうも、皆さん、レッテルというのを認めて頂いているようです。自民党の皆さん。

しかし、野党からの提案を無視しながら、自らの成果を誇るのではなく6年以上前の批判ばかりを繰り返す姿勢は与野党が逆転したと言わざるを得ません。

私たちは過去の自らの歩みを謙虚に反省しつつ、そこから得られる教訓を活かし、今度こそ有権者の期待にお応えできるよう準備を進めています。
そして、安倍政権の犯したことには徹底的に反対し、かつ議会としての行政監視機能を十分に果たしながら、これからも建設的な提案を積み重ねて参ります。

衆議院議長による異例の所感
「民主主義の根幹を揺るがす、安倍政権の問題」

昨年の夏、大島理森衆議院議長は安倍政権から発生した森友学園を巡る決済文書の改ざん問題、裁量労働制に関する不適切なデータの提出、自衛隊の海外派遣部隊の日報に関する杜撰な文書管理など、一連の事件を挙げて「民主主義の根幹を揺るがす問題」と断じました
「国民の付託に応えるためには行政から正しい情報が適宜、適切に提供されることが大前提」と安倍内閣の公文書等の隠蔽を指弾し、立法府による行政監視機能の強化に関する、異例の所感を発表したのです。

しかしながら、安倍政権はその後も立法府からの情報の開示、予算委員会の開催要請に対し、政権に都合の悪い情報を隠蔽し続けると共に予算委員会の審議拒否を続け、国民への説明責任を放棄しました。
国権の最高機関であり、行政執行全般を監視する責務と権限を有する国会を蔑ろにする内閣の政治姿勢はもはや異常そのものです。

国民の生活を顧みず、自らの政権の維持と延命のために国民への説明、国会の審議、情報公開を拒否し続ける安倍内閣は国民国家にとって、不誠実極まりないだけではなく危険な存在と成り下がりました

(枝野代表、コップの水を飲む)

他国の戦争に介入しないという歯止めが外された、集団的自衛権の一部容認

さて、今年5月1日、改元されました。
令和という新しい時代、スタートをいたしました。
とはいえ、元号が変わってもそれだけでは国民生活が何ら変わるものではありません。
しかしながら、先人たちはこうした時代の節目に来し方を振り返り、引き継ぐべきものを見極めて引き継ぎ、改めるべきものを改める機会にしてきました。
近代化によって内閣制度が発足してから3度改元がありました。
明治から大正、大正から昭和、昭和から平成。
いずれも改元から半年以内に内閣が変わっているのも偶然ではないと思います。

今、私たちが引き継ぐべきものは、平成30年の平和であります。
平成30年間、我が国は直接に戦争の当事者になることのない、ある意味で平穏な時代を過ごすことが出来ました。
しかし、これは私自身も含めて戦後生まれの人間にとっては当たり前のように感じられますが、決してそうではありません。
近代以降、明治も大正も昭和も我が国は、我が国が当事者となる戦争を行ってきました。初めて、平成の30年間、そうしたことがない平和の時代を過ごしたのであります。

しかしながら、その平成の終わりに立憲主義に反する解釈改憲で集団的自衛権の一部行使容認という暴挙がなされました
他国の戦争に介入しないという大きな歯止めが外されています
一日も早く、安保法制を廃止して、立憲主義を回復させ、我が国の領土・領海を攻撃された時はしっかりと国土を守る。
しかし、それ以外に戦争はしない。
その専守防衛という基本を取り戻さなければなりません。

立憲主義に反し、憲法の平和主義を空洞化させているこの一点を以ってしても安倍内閣を信任することは出来ません。

提言「新たな課題への硬直的な対応からの脱却」

改めるべきもの、それは平成の30年間に直面することになった新たな課題に正面から向き合い対応することであります。

1つに、少子化による急激な人口減少と超高齢社会が現実となります。
2つ目に、格差と貧困が大きな社会問題となるような状況となりました。
3つ目に、個々人の生活環境が多様化し、価値観も多様化する時代を迎えています。
経験したことがない、大きな社会状況の変化にありながら、それを直視することなく、過去の成功体験に基づく硬直的な姿勢で対処をすれば、結果的に客観的な現実に蓋をせざるを得ず、まさに改ざんや隠蔽などのごまかしを続けることになる。
まさに今の安倍政権の姿勢であります


戦争や疫病によって、あるいは一時にたくさんの方が亡くなったことは歴史の中で何度もありました。しかしながら、少子化によって継続的にしかも急激に人口が減っていく社会というのは人類初めての経験であります。そんな中でこれだけの超高齢社会も人類初めての経験であります。

ですから、これまでの常識が通用しない。このことを大前提に取り組んでいかなければなりません。変化に対処しない姿勢はそのこと自体のマイナスに止まらず、政治や行政に対する信頼を損なわさせ、社会のモラルやモチベーションを著しく低下させています。

提言「社会、経済、政治、行政のパラダイムシフト」

私は客観的な時代状況に対応した、社会、経済、政治、行政のパラダイムシフトが不可避であると考えます。

私は1つには、先ほど申しました通り、企業収益の拡大を起点としてきた経済運営から、所得の拡大と安心の増大を起点とし、社会保障と成長戦略を一体不可分のものとするボトムアップ経済へパラダイムシフトを進めるべきと考えます。

2つめに、社会の分断を避け、一人一人の力を最大限発揮するため、違いを認め合い、多様性を力にする社会へのパラダイムシフトを進めていかなければならないと考えます。

3つめに、こうした社会や経済を作り上げていくために一握りの政治家が主導する、いわゆるお任せ民主主義から、一人一人の主権者が主体的・積極的に参加できる参加側民主主義へのパラダイムシフトが必要であると考えます。

こうした大きな3つのパラダイムシフトを主権者・有権者の皆さんと共に作り上げていく、新しい時代にふさわしい、新しい国家ビジョンを掲げて、私は前に進んで行きたいと考えております。

それは、明治における自由民権運動や大正デモクラシーにも匹敵する、民主主義のバージョンアップであります。令和デモクラシーとでも呼ぶべき、一人一人の主権者から始まるムーブメントを私は国民の皆さんに呼びかけたいと思います。

結びの言葉

以上、不信任の理由はまだまだ語り尽くせないほどあります。

残念ながら安倍内閣は民主主義と立憲主義の見地から憲政史上最悪であると言わざるを得ません。安倍内閣が議会制民主主義を根底から破壊している現状をこれ以上見過ごすことは到底出来ません。内政でも外交でも国民を欺き続ける安倍内閣が続くことは、我が国の国民生活や安全保障を破綻の道へと導くことであります。

よって、安倍内閣の即刻の退陣を求め、安倍内閣不信任決議案を提出をいたしました。良識ある議員諸氏が自らの信念と歴史への謙虚な姿勢に基づき、賛同されますことを心からお願いを申し上げ、趣旨の説明といたします。ありがとうございました。

(枝野代表、正面を向いたまま一礼。後ろの議長席を振り返り、一礼。拍手の中、壇上から降りる)

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更新履歴

2019/6/25 20:41
新規作成(開始から約10分まで公開)

2019/6/25 22:21
開始から約23分までを追記

2019/6/25 23:28
開始から約34分までを追記

2019/6/26 23:30
全56分の文字起こしを完了

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