黒塗り文書

【正式な議事録と正確な議事録】2018年5月23日衆議院厚労委員会

高度プロフェッショナル制度を含む働き方改革関連法案。
安倍政権は2018年5月23日に同法案の強行採決を狙うのではと目されていたため、同日の衆議院 厚生労働委員会には過労死家族の会から15人以上が傍聴に訪れていた。

質問に立った国民民主党・柚木道義委員は安倍総理に対し、「この質疑の後で過労死家族の会の方々に10分でもいいから面会してもらえないか」と強く要望。
しかし、これに対して安倍総理ではなく加藤大臣が答弁したため、加藤大臣の答弁中に柚木委員は耳をつんざくほどの大声で抗議し続けたが、加藤大臣はその抗議を無視して答弁を続けて議場は騒然となった。
これは筆者が今までに見た国会質疑の中で、最も異常で最もショッキングな質疑であったと言える。

さらに、後日に公開された議事録では柚木委員の抗議の声が全く記載されておらず、あたかも加藤大臣が何事もなく答弁したかのようになっている。
本記事ではこの議事録に焦点を当てて、正式な議事録と正確な議事録を比較する。

✳︎「正式な議事録と正確な議事録」という表現は、2018年8月3日の国会パブリックビューイング第1回シンポジウムでの荻上チキ氏の「正式な議事録と正確な議事録は違う」というコメントから引用

正式な議事録

本記事における「正式な議事録」とは、国会会議録検索システムにて公開された議事録を指す。(下記画像参照)

国会会議録検索システム「平成30年5月23日 衆議院 厚生労働委員会」
(最終閲覧日:2018年8月4日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/196/0097/19605230097022a.html

ちなみに、国会の議事録は通常1ヶ月以内にPDFファイルやTIFFファイルと共に公開されるが、5月23日の厚生労働委員会のPDFやTIFFは2ヶ月以上が経過した8月4日現在でも、なぜか公開されていない(下記画像参照)

正確な議事録

本記事における「正確な議事録」とは、当日の以下動画から筆者が書き起こしたものを指す。

Youtube「2018年5月23日午後 厚生労働委員会」
(最終閲覧日:2018年8月4日)
https://www.youtube.com/watch?v=d8y2OoqoFoY

また、繰り返しになるが、これは筆者が今までに見た国会質疑の中で、最も異常で最もショッキングな質疑である。上記の2分弱の動画(該当部分:1時間02分48秒〜1時間4分21秒)をご覧になり、その異常さを理解した上で、続きを読むことを強くおすすめしたい。

正式な議事録と正確な議事録の比較

左側の正式な議事録、右側の正確な議事録を比較し、差分を色分け(左側のみの記載は赤字、右側のみの記載は青字)した結果が以下画像である。文字が小さいため、画像をクリックして拡大表示して中身を読んで頂きたい。

まず、この質疑の大まかな流れを整理すると以下のようになる

(1)柚木委員が安倍総理に対して、過労死家族の会への面会を求める
(2)答弁を求めた安倍総理ではなく、なぜか加藤大臣が答弁席に立つ
(3)柚木委員が耳をつんざくほどの大声で安倍総理が答弁するように抗議し続ける
(4)加藤大臣は柚木議員の抗議を完全に無視して答弁を続ける

そして、比較結果を見ればわかるとおり、(3)の柚木委員の抗議の大声が左側(正式な議事録)には全く記載されていない
議場全体に響きわたる、耳をつんざくほどの大声だったにも関わらず。
正式な議事録には「発言するものあり」という括弧書きがあるのみで、これでは誰が発言したのかすらわからない。

さらに、(4)の加藤大臣の答弁は柚木委員の大声の抗議にかき消され、ほとんど聞こえない状況だった。しかし、左側(正式な議事録)ではまるで何事もなく加藤大臣が答弁したかのような記載になっている。

この比較によって、以下2点が浮き彫りになったと言える

・正式な議事録と正確な議事録が違うことはあり得る

・正式な議事録では与党に不都合な部分が記載されないことがある

委員長の対応

この極めて異常な質疑の間、高鳥修一委員長(自民党所属、新潟6区)は何をしていたのだろうか?

正式な議事録(下記画像)を確認すると、委員長の発言として残っているのは、赤枠の1行のみ。


以下、抜粋して記載する。

高鳥委員長:ご静粛にお願いします。答弁が聞こえません。

この発言はどう考えても、大声で抗議する柚木委員への注意である。

つまり、事前通告された質問に対して答弁に立たなかった安倍総理関係ない答弁を続けた加藤大臣には一切の注意がなされていない

この後、6月には働き方改革関連法案は与党の強行採決による可決。
さらに、8月4日現在に至っても、過労死家族の会と総理の面会は実現していない。

✳︎本記事は以上になります。内容に価値を感じて頂けた方は任意の金額のサポート(投げ銭)をお願いします。今後の情報発信の充実に活用させて頂きます。

更新履歴

2018年8月4日 18:11新規作成

2021年4月をもって、noteの更新を取りやめました。 現在はtheLetterで情報発信しているので、よろしければ登録をお願いします。 https://juninukai.theletter.jp/