信号機写真_国会前_

【信号無視話法】 VS石橋議員 2018年6月26日 参議院 厚労委員会(働き方改革関連法案成立3日前)

2018年6月29日に可決された、働き方改革関連法案
その3日前の6月26日に安倍総理も出席した参議院 厚労委員会では、野党から高度プロフェッショナル制度などの審議が不十分であるとの声が多く挙がった。

この日、立憲民主党・石橋議員は「これまでの総理答弁は繰り返さないでほしい」と事前に何度も念を押した上で質問をしたが、安倍総理は事前に用意された原稿用紙を読み上げるだけの答弁に終始した。

本記事では、この安倍総理の答弁を直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメで視覚化する。

✳︎質疑内容は当日の速記録から引用
✳︎当日の動画はリンク先で視聴可能(42分20秒〜51分25秒)

Q1 高プロは本当は働く者でなく、企業のための制度。立法の必要性は無いと認め、法案を撤回しますか?

まず、石橋議員の1問目の質問は以下の通り。

 これまでの総理答弁をここで繰り返されるのでは意味がないんです。そのことを総理、重ねてお願いをして、是非繰り返さないでください。これまでの審議を受けての問題点を指摘をさせていただきますので、総理の、総理としての御答弁をお願いしておきたいと思います。
 最初に、これ、高プロについて幾つか確認していきます、総理。
 これ、本当、誰のための制度なんですか。誰に要望されて誰のために設計された制度なのか、総理、この委員会でも明らかになりました。元々、産業競争力会議からの提案ですと。長谷川さんや竹中平蔵さんですよ、あの方々が提案した制度なんだと、これは加藤大臣も認められたわけです、この場で。昨日の予算委員会でも、総理、それ認められておりますね。びっくりしました。ということは、これまで総理が言ってきた、これは働く者のための制度なんだ、自由でやりがいがある働き方なんだ、誰がそんなこと言ったんですか。企業のための企業による、そういう制度なんだ、総理、そのことをもし認められるのであれば、これまでの説明はうそです。であれば、立法事実、根拠がありません。是非、それを認めるのであれば、ここで撤回してください。総理、いかがですか。

この問いに対する総理答弁を視覚化した結果。

冒頭は真っ赤(=質問と関係のない内容)。中盤から黄色(=質問の背景や経緯を無駄に丁寧に説明)が続く中、青が2行ほど入り込むという構成。

回答にあたる青は「高プロは働く方の意見を十分に伺いながら検討してきた」と述べているが、2017年8月30日の労働政策審議会で労働者代表が高プロに反対した事実を伏せて答弁している。その事実については、下記の記事で確認できる。

毎日新聞「高プロ導入反対を訴え 労働者代表」2017年8月31日更新
(最終閲覧日:2018年7月7日)
https://mainichi.jp/articles/20170831/k00/00m/040/057000c

この総理答弁を受けて、石橋議員は語気を強めて、このように述べている。

 だから、安倍総理、これまでの答弁をただ棒読みして繰り返すだけなら、このタイミングで総理にここに来ていただく意味がないんですよ。繰り返さないでください、総理。だからここでお聞きしているんです、総理。いや、笑っている場合じゃないですよ、総理。真摯に答えてください、我々の、この国民の疑問に。
 いいですか、総理、今何だかんだおっしゃられましたけど、竹中平蔵さん、これ昨日の伊藤委員も取り上げておられましたが、こうやっておっしゃっていますね。この制度、何で必要なのか。生産性の低い人に残業代、補助金出すのも一般論としておかしいと堂々とおっしゃっていますね。要は、残業代出したくない、残業代出さなくていいようにする制度なんだ。安倍総理、そうおっしゃっていますよ、提案者が。
 であれば、総理、そのことをお認めになるのであれば、今総理が言われたことも、結局は、これまで働く者のための制度だと言っていたこと、全く根拠がなかったということを、この場で総理も改めて確認を、追認をされたということだと思います。全く話になりません。

Q2 総理の「高プロは成果で処遇」は虚偽答弁。本当に成果で処遇するには措置が必要では?

石橋議員の2問目の質問は以下の通り。

 安倍総理、法案にはどこにも成果で処遇されるとは書いてありませんし、頑張った人が二倍、三倍の成果出しても、それ処遇する制度に全くなっていないことは、これも加藤大臣が答弁されてしまいました。安倍総理、成果で処遇される制度ではありません。単に労働者の労働時間規制を撤廃するだけの制度です。総理、虚偽答弁ですね。
 虚偽であるのであれば、何らかのこれ法制度上の措置を講じない限りは成果では処遇されません。総理、どうするんですか。

この問いに対する総理答弁を視覚化した結果。

冒頭から最後まで全て真っ赤(=虚偽答弁の疑い)。

総理は高プロが成果で処遇されることの根拠として、労働基準法41条の2の改正案を挙げている。しかし、この改正案は成果で処遇することを担保していないため、虚偽答弁の疑いがある。

具体的には、「高度の専門的知識等を必要」とする業務が不明確。その対象業務は「厚生労働省令で定める」ため、国会審議を通さずに対象範囲が広がる恐れもある。

また、最終段落で「具体的報酬は企業の労使で決まる」と答弁している通り、報酬が企業の労使の労働契約で決まるため、成果で処遇されることは担保されていない

この総理答弁を受けての石橋議員のコメント。

いや、総理、最後だけ正しいんです。結局、現場なんですよ。任されているんです、現場の労使で決めてくださいと。そこは政府は関知しません。じゃ、うそじゃないですか。成果で処遇されるんだ、されなければならない。そんなことありません。現場の労使の労働契約で決まっちゃうんです。そうでない制度も可能なんです。虚偽はやめてください、総理。だから国民を惑わす制度だというふうに言っているんです。

Q3  年収要件1075万円はあらゆる手当を含むため、実際は年収700万円以下に適用可と知ってましたか?

石橋議員の3問目は以下の通り。

 総理、年収要件についても、これお聞きになっていますか、総理。総理は、じゃ、1075万円という数字、一体どういう年収要件なのか聞いておられますか。我々もびっくりしました。あたかも基本給レベルで、純粋手取りレベルでそれだけの、高い高い、さっき総理言っていましたね、年収が著しく高いこと、交渉力があって、高度に高度な、これ政府がずっと言ってきた言葉ですよ。いや、僕らもそういうふうに、国民そういうふうに理解していましたよ。びっくりしましたよ。いや、1075万円は、決まって支払われるという要件さえ満たせば、通勤手当、家族手当、住居手当、あらゆる手当が入り得る。業績手当すら、決まって払われるので入り得る。総理、これまともに計算したら、基本給でいけば800万以下、いや、場合によっては700万以下でも適用可能通勤手当、家族手当、住居手当、あらゆる手当が入り得る。業績手当すら、決まって払われるので入り得るです。
 総理、それ御存じで言っていたんですか。御存じでそれを言っていたんだとすれば、うそっぱちです。総理、御存じでしたか。

この問いに対する総理答弁を視覚化した結果。

冒頭は真っ赤(=質問と関係のない内容)。中盤は黄色(=質問の背景や経緯を無駄に丁寧に説明)。最後は再び赤(=質問と関係のない内容)という構成。

特に最終段落は論点のすり替えも行っている。
石橋議員の質問:年収700万円以下に適用可と知っていたか
安倍総理の答弁:年収要件の算出方法

この総理答弁を受けての石橋議員のコメント。

総理、重ねて、質問に答えてくださいね。そのために今日、総理、わざわざここに貴重な時間おいでをいただいているわけです。重ねて、これまでの答弁繰り返し棒読みされるのであれば、何のために今日、貴重な総理の時間いただいているのか分かりません
 総理、いろんなことをおっしゃいますけどね、全部これまでの審議を踏まえない従来どおりの答弁だから、全く審議が深まらないわけです。

参考記事

上西充子氏「高プロ制度 きほんのき(2)」2018年6月7日更新
(最終閲覧日:2018年7月7日)
https://news.yahoo.co.jp/byline/uenishimitsuko/20180607-00085940/

東洋経済「高度プロフェッショナル制度に隠された罠」2018年6月3日更新
(最終閲覧日:2018年7月7日)
https://toyokeizai.net/articles/-/223205?page=4

更新履歴

2018/7/8 0:30公開

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