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あのときのとんかつへの執着

 今まで生きてきた中で時々無性に食べたくなるものがある。とんかつもそのひとつだ。だが、薄いとんかつは逆に満足度を削がれてしまう。
 職場の近くにとんかつのお店があるが、そこのとんかつは薄いので、なんだか悲しい気持ちになってしまう。

 そんな中、満足できるとんかつに出会ってしまった。脂感、肉厚感、何をとっても、一瞬で惹き込まれてしまった。揚がるまでの時間が待ち遠しい。そんな食事の時間って、とても幸せなことだと思う。だって、食べることが好きだから。

 とはいえ、今回出会ったとんかつは「マイベスト」ではなかった。「マイベストとんかつ」のお店はもともと店主さんがカレー屋さんを経営されていたが、気づいた時にはとんかつのお店に転向していたのである。
 そこへ自転車でさくっと行って、わくわく食べて、海沿いをサイクリングして自宅へ帰る。単純なとんかつのストーリーは当時の記憶も思い起こさせてくれて、なんだかセンチメンタルになってしまう。でも、それ以上にもう一度あのとんかつが食べたい。あの肉厚なとんかつにかぶりつきたい。ただ単に食欲を満たすわけではなくて、心も幸せにしてくれたあのとんかつ。

 あのときと比べると圧倒的に選択肢が増えて、「悩める幸せ」があるのかもしれないが、食べたいものって、そんなに劇的に増えたりしないので、あの時のとんかつへ圧倒的に執着してしまう。そんなお話。

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