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必読のノンフィクション作品 3選 【伊東潤ブックコンシェルジェ】

「伊東潤作品を読んでみたいけど、どれから読んでよいのかわからない..」。

そんなあなたに伊東潤コミュニティメンバーからおくるブックコンシェルジェ。

新たな伊東潤作品の出会いを応援します。

【今回の選者:玉木造(@tamaki39)さん 】

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1. 『歴史作家の城めぐり 増補改訂版』ー現場でその当時にどっぷりつかることが出来る快感


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この本を読んで「作家の強みを意識して、読み物として面白いお城本作りを目指しました。」という伊東さんの一言が良く分かりました。
 
大きく2つあります。
 
1つは実際にこの城を攻めた場合に、守る側は何を考えて設計したかを、この城での戦いのシーンを描写し、実際に自分がその城で戦っているリアリティを感じることができるというストーリー性のある面白さ。これは小説家ならではの城郭描写手法ですね。
もう1つは、この城の歴史的役割、言い換えれば大きな歴史の流れの中で、何を守っていたのかが、歴史小説家的なマクロな視点で描かれているということです。
 
勿論、城廻りの基礎知識も分かりやすく解説してくれていますし、伊東さんご自身の経験から解説してくれる城廻り時の留意点、更に城縄張りのイラストや写真等、この本を持って、ここに書かれた47の城を廻りたくなること間違いないです。
 
私も幾つかこの本の中のお城を廻りましたが、今までの廻り方と違い、現地でこの本を読みながら空堀や土塁、曲輪を確認して廻る以外に、本丸にあったベンチに腰掛け、ついついそのお城の悲喜交々のエピソードを全部読んでしまうという、現場でその当時にどっぷりつかることが出来たのは新鮮な感覚でした。
 
是非、この本片手にお城廻りを試してみてください。面白いですよ。


2. 『幕末雄藩列伝』ー各藩の幕末という激動の中での立ち居振舞いに大いなる説得力がある


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以前から幕末のエピソードって意外と薩長土肥、江戸幕府以外の土地でも沢山あるなあとは思っていました。
それらを幕末の14の“藩”としてまとめたのが、この本です。


勿論幕末だけでなく、その藩のルーツを分かりやすく書いているため、その藩の土地柄を合わせた個性・成り立ちを理解することが出来ます。そしてそれらを知ることで、その藩が幕末という激動の中で、どう立ち居振舞ったのかについて説得力があるのです。単純に、幕末にこれこれの藩でこういうことがあったという断片的なエピソードを集めた歴史本とは、そこが違いますね。面白くかつ分かりやすいです。


藩というのは中世になって武士が「一所懸命(いっしょけんめい)」に土地を切り取りはじめてから、脈々と続いた土地所有の発展した組織体系だと思います。勿論その土地その土地に対するこだわりは現代の我々が想像を絶するものがあるのでしょう。当時「お国」といえば日本国ではなく、各藩だったのですから。


それが幕末に世界に対する日本、「お国」といえば日本国という形でまとまらなければならないとなった時、それまでずっと成熟してきた藩という意識を大きく変えなければならなかったのです。そこに大きな決断、行動、悲劇、喜劇、様々な人間模様が生まれたことは言うまでもありません。
この本ではそこを分かりやすく、私たちに「藩とはなんだったのか?」という視点を与えてくれる興味の尽きない本となっています。是非お読みいただき、幕末を藩という視点で読み解く面白さを体験して頂きたいと思います。


3. 『敗者烈伝』ー25人の歴史上傑出した人物の短編エピソード集に脱帽


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伊東先生には怒られてしまうかもしれませんが、この「敗者烈伝」、私は正直、分析モノとしては読んでいません。25人の歴史上傑出した人物の短編エピソード集として読みました。
 
それでも充分面白いし、勉強になります。
 
まず、短く簡潔に各人物をまとめ上げていますので分かりやすいです。また歴史学的なお勉強本と違い、肩肘張らずに、寝っ転がりながらでも大変面白く読めちゃいます。
 
更に、この25人はどれも有名な人物なので、皆さん多少知識があると思います。ところがこの本は、それらの知識から来る常識を覆すような新しい視点を提供してくれますので、これがまた面白いです。


人は6割知っている史実について、あと4割知らない史実や視点を与えられると「なるほど!」と唸ると言いますが、まさにそんな感じの本ですね。
「勝ち抜く」ためにはどうすれば良いか。それはほんの僅かな「勝ち抜いた人」を分析するよりも、大部分の「負けた人」を分析する方が分かりやすい等の本書に対する書評は沢山あります。勿論、そのような読み方で読んでいただくのは大いに結構ですが、まあ勝ち負け抜きで肩肘張らずにお読みいただいても十分楽しめる本であるということを私は書評とさせていただきたいと思います。

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