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接吻担任

3年生になって「ご褒美が接吻」という女傑が担任になった。あらゆる成績がキスマークに換算され、ぼくらは年間の接吻王者を競わされることとなった。

漢字テストは大相撲番付が適用され、番付があがるとほっぺにキスマークというご祝儀がもらえた。

つまらない世をおもしろく、という先生の哲学だったと思う。真面目しか取り柄のなかったぼくはいつしかトップ争いに食い込むようになっていた。それまで黙々とノートに正解を綴っていただけの僕は転機をむかえることとなる。

そこでは頑張ってもご褒美が厚化粧のキスマークという罰ゲームゆえに、周りの目を気にせずに優等生を邁進することができた。手を挙げて正解してもキスされるので笑われるのだ。

僕は挙手をして発言するようになった。学級委員に立候補するようになった。今まで一度も人前で発言したことのないしょんべんたらしがだ。

少しだけ世界は変えられるかもしれないと思いはじめる

恥ずかしさ脱いでしまおう蝉の声

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