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不世出のレジェンド・内村航平の素顔⑨

長いこと王者として君臨し続けるために、内村選手は毎日どんなスケジュールで練習をしているのかは、誰もが知りたいことではないでしょうか。
内村選手のインタビューは色々とありますが、長期間に渡り何度も取材できた人は、ほとんどいません。(なかなか企画が通らないのです)
ここからは、やっとの思いで通った私の企画で「バース・ディ」(TBS)の撮影が行われた、約5ヶ月間、15回のロケで見た内村選手のお話をしたいと思います。


【内村選手の1日の練習スケジュール】

コナミスポーツ体操競技部は体操をすることが仕事なので、1日中体操ができる恵まれた環境にある。そのスケジュールは、

10:00〜11:30  午前練習 (軽めの練習)
14:00〜17:30  午後練習  

休日:      日曜日。木曜日はマッサージなどの治療。
長期休暇:    お正月の1週間のみ。しかし半数の選手は練習に来ている。

体操をご存知の方であれば言うまでもないことだが、彼らはダンベルやマシンを使ったウエイトトレーニングは一切しない。余計な筋肉が付くからだ。
あの素晴らしい筋肉は、ひとえに練習の賜(たまもの)なのだ。


【キングであり続けるための日常とは?】


私たちの撮影は午後からのことが多く、13時30分には体育館に入っていたが、そこにはいつも黙々と柔軟体操をする内村選手の姿があった。
こんな早い時間に来ているのは、入りたての新人ぐらいのものなのに。

それからチラホラと選手が集まり、14時になると全員が1列に並び、監督やコーチの話があった後、柏手を打つように全員でパンパンと2回手を叩いてから練習開始となる。

その後もまだ柔軟体操を続ける選手が多い中、真っ先に器具練習を始めるのは、いつも内村選手だった。
これは、私が体育館に通った全ての日に同じことが繰り返された。

私は、隣で練習を見守る世界選手権・銀ダメリストの小林研也さんに聞いた。
「1番最初に練習に来るのは誰ですか?」
「航平ですね。いつも航平が一番です」

コナミでは、11時30分に午前練習が終わると各自でお昼を取る。
たまに12時ごろに体育館に行くと、連れ立って近所のお店に食べに行く選手たちと出くわすこともある。(もちろん彼らは礼儀正しいので、笑顔で挨拶をしてくれる!)

さすがに内村選手がお昼休みをどう過ごしていたのかまでは知らないが、彼にとっての練習開始は、器具を使った練習であり、それまでに動ける体にしておくのは当たり前だと考えていたことがわかる。

世界でNO.1の実力者であるにもかかわらず、日頃からこうしたストイックさを持ち続けることができるからこそ、長年キングでいられたのではないかと思う。


【夜中の24時に内村選手が体育館に?】


体育館の入り口には、「来客者の名前」や「体育館の鍵を開けた人」「最後に鍵を閉めて帰った人」の名前と時間を記入する大学ノートが置いてある。
私は自分の名前を書き込みながら、もしかして……と、ノートに書かれた名前を目で追った。
すると、その中に「内村」という名前が何度もあり、その横には体育館を出た時刻が記されていた。
「24:00」

私はてっきり管理人のような人が、体育館の鍵を開けたり、閉めたりしているのだとばかり思っていたが、そうではなかった。

誰もいない体育館の鍵を朝早く来て開けるオリンピック・チャンピオンが……、夜中に真っ暗な体育館の鍵を閉め、自転車で帰るオリンピック・チャンピオンが……一体どこにいるだろう?

コナミや全日本チームに帯同する今井トレーナーから、以前こんな話を聞いたことがある。
「航平は1日の練習が終わると一旦家に帰って、マッサージのためにまた体育館に来ることもあるんですよ」

オリンピック・チャンピオンだからといってマッサージの順番を優先させることなく、みんなと平等というその精神こそが、キングの名に相応しいと思った瞬間だった。


※次回は、ある日の分刻みの細かい練習スケジュールをお伝えします。
 そこにもキングならではの矜持がありました。

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