見出し画像

21世紀に響くジャン=フィリップ・ラモー

ラモーブームが継続している。というか、クルレンツィスのラモーにハマってしまっている。だけど一般的には「ラモー」と言っても誰のことなのか、バッハと同年代の18世紀フランスのバロック音楽家はあまり知られていないかと思うので、理解して頂けないことが多い気がする。というわけで、今回はビデオとともにその魅力をご紹介したいと思う。「輝きの音」に収録されている18曲はどれも全て、とても美しく、エネルギーに溢れている。なかでも一番強烈な個性を放つのは、叙情喜劇(コメディ)「プラテー」より「光っていこう!〜アポロンの求愛に」という小アリアだ。タイトルを聞いても内容が全くイメージ出来ず、歌詞を読んでもいまいちわからず、解説を読んでもやっぱり詳細がわからない。アリアを歌うのは「フォリー」という、オペラに度々現れる擬人化された「狂気」。コメディ・オペラのストーリーは主神ジュピテルがカエルの高慢な妖精プラテーを使って妻ジュノンの嫉妬をいさめようと策を練り、最後には成功するというものらしいが、この小アリアがどういうシーンで出てくるのかはよくわからない。しかし、ソリストのナディーヌ・クッチャーの歌唱には脱帽だし、内容が理解できなくても音楽だけでCDの初めから終わりまでハマってしまうのだ。(それはすごいことだ)

CD「輝きの音」に収録されている曲の中で一番のお気に入りは、「優雅なインドの国々」より「大いなる和平のキセルの踊り」である。ラモーの作品の中でも結構有名なものらしく、YouTubeには結構多くの動画があがっているが、クルレンツィス(というかムジカエテルナ)の演奏はキレの良さと優雅さが絶妙で、一度聞いてしまうとこれよりいいと思える演奏がないように思ってしまう。彼らの演奏は残念ながらYouTubeでは見つからなかったけど、代わりにというのかモダンダンスとの面白い組み合わせのものを発見した。パリ国立オペラ創設350年を記念し、昨年オペラバスティーユで上演された際の演出であるらしい。ただし、ムジカエテルナのこの曲の演奏には、ダンス付きビデオから得る印象よりさらに強いパッションがある。

クルレンツィス自身のコメントに、「・・・光があるから、人は呼吸ができ、生きることができ、そして愛することができる。・・・光を一度も見たことがなく、その恩恵をまったく受けたことのない人に、光というものが何であるか、どのように説明すればよいだろうか。私なら、ラモーの音楽を演奏して聞かせようと思う。」とある。彼らの演奏を聴くと、何というか納得させられてしまうところがある。所謂「バロック音楽」という概念はどこかへ消え去り、まるで新しい音楽を聴いているような感覚である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?