ロペテギ

『 今シーズン追いかけて観たい2チームの対戦』 ラ・リーガ 19-20 第3節 セヴィージャvsセルタ


新戦力の多くをスタメン起用しながら、開幕2連勝で好発進したセヴィージャ。新たな指揮官に昨シーズンレアル・マドリードを途中解任されたロペテギが就任。その手腕に今シーズンは注目が集まる。
対するセルタは開幕戦でレアル・マドリード相手に敗れたもののバレンシアに競り勝ち、1勝1敗と上々の滑り出しで今節を迎えた。また、バルセロナからデニス・スアレスが加わり、ロボツカ、ブライス・メンデス、ベルトランという将来が楽しみな若手と組む中盤は非常に魅力的で、個人的に最も期待するチームだ。 

タイトル画像 : goal.com参照

スターティングメンバー 


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セヴィージャのフォーメーションは4-3-3の表記であるが、攻撃時は両SBが上がり、アンカーのフェルナンドがディフェンスラインに下がる3-4-3を基本としている。メンバーは右WGのオカンポスに変えてムニルを起用している以外は前節と変わらない布陣である。

一方のセルタも前節と変わらないメンバー構成だ。基本フォーメーションは4-4-2だが、中盤の4枚が守備時はフラットなブロックを作り、攻撃時はD.スアレスとB.メンデスが中に絞ってボックス型に形を変えている。

両チームともに攻撃的なチーム同士ということもあり、攻撃に目が行きがちになるが、どのように強力な攻撃を封じるかというのも注意して見ていきたい。

前半

試合開始からホームのセヴィージャが一方的にボールを支配する展開に。

ビルドアップでは2CBとDFラインに下がってきたフェルナンドの3枚が最後方で回す形。
対するセルタは前線からのプレスが緩く、セヴィージャは難しくない状況で2列目のバネガやジョルダンに繋ぐことが出来た。セルタはそれでも中盤のラインを崩して飛び込むことなく、DF4枚と中盤4枚のブロックをコンパクトに保ち、セヴィージャの3トップにボールを受ける隙を与えなかった。

中央を固められたセヴィージャは開始直後の数分間で空いたサイドを徹底的に狙っていく。
両SBが大外で幅を取り、中盤の低い位置でフリーになるバネガが左へ右へと長短織り交ぜたパスで両サイドを突いた。
右のナバス、左のレギロンと幾度となく送り込まれるクロスはいつ決まってもおかしくない状況を作り出した。
中央で待つデ・ヨングのシュートや、クロスのこぼれたところをジョルダンが狙うなど、惜しいシーンがあったが中央を固めるセルタの守備を前半の内に崩すことはできなかった。

逆にセルタは思うように攻撃することが出来ない。
ビルドアップに対するセヴィージャのプレスが激しく、リスクを避けて前線のフェルナンデスへロングキックを送るが、この攻撃からチャンスをつくることはなかった。
数少ない形ではあるが、D.スアレスがサイドから中にドリブルで持ち出し、FWのアスパスと絡むシーンはゴールへの最短距離を進み可能性を感じさせるものであった。その点ではセヴィージャが幾度となくサイドからチャンスをつくり、得点に結びつかないのとは対照的で効率の良い攻めだ。

セヴィージャが最後のところでセルタの守備を崩しきれず、という構図は変わらないまま前半を終える。
『0-0』で前半を終えることは、攻め続けたチームと耐え続けたチームにとってまったく違った意味を持つことになった。

後半

後半開始早々、前半と同じように前線からプレッシャーをかけるセヴィージャがセルタのビルドアップを奪いチャンスをつくる。このチャンスを活かすことは出来なかったが、後半も高い位置からのプレスでセルタにボールを持たせない狙いは変わらなそうだ。

対するセルタは、最初のビルドアップで危ない場面を作ってしまうも、簡単にはロングキックを蹴らずに後方から繋ごうという意図が見えた。
例外として、セヴィージャのSB裏のスペースがあるときにはロングキックでアスパスを走りこませるということは何度かあったが、後半からは耐え忍ぶだけでなく、攻撃への比重を高めていく。
これが守備の変化にも表れる。前線からプレスをかけていき、それに連動して中盤もブロックを崩して前に奪いに行く形に変化させた。
高い位置でボールを奪ってチャンスという直接的な結果は出なかったが、これで両チームともに動きが出て攻守の攻防が激しくなっていく。

後半も引いた位置からチャンスメイクをするバネガがチャンスをつくる。
後半5分、バネガからパスを受けたレギロンがノリートとのワンツーで裏に抜けだす。エリア内から決定的なクロスを送るも、これはGKのルベンに抑えられてしまう。
前半には見られなかったコンビネーションから裏に抜けるという形で早速チャンスをつくったセヴィージャだが、それに対してセルタも守備を変えていく。
中央を固め3トップに自由を与えない代わりに、クロスは許容する形になっていたサイドの守備を、SHのD.スアレスとB.メンデスがついて行き、サイドを自由にさせない守備に変えてきたのだ。
これは前半からのクロスを警戒してというよりも、レギロンが裏に抜けたシーンのようなサイドを起点にして中央を崩されるのを防ぐことに効果があったように見えた。
もちろん薄くなった中央ではあるが、FWのアスパスもボールを奪いに行くなど、4-5-1や5-4-1の形で中央から崩させることもさせなかった。

3人づつ選手交代を行い、ファールも増えだすとなかなかボールが収まらず落ちつかない展開になってきた後半36分、バネガのFKから途中交代のバスケスが頭で合わせて先制点を上げる。
先制点のみならずこの日の活躍を見ると、セヴィージャにはべてベテランのバネガがまだまだ必要だ。

なんとか無失点に抑えていたセルタ。意気消沈するかと思いきや3分後に追いつく。
中盤でD.スアレスとロボツカのパス交換から、前線の途中出場したサンティ・ミナに楔をうつと、そのまま走りこみ裏に抜けたD.スアレスに繋がりあっという間に同点に。
数少ないチャンスをものにした攻撃は見事で、中盤の技術の高さを活かした素晴らしい連携からのゴールとなった。

その後勢いに乗りたいセルタだが、SBオラサが負傷退場により10人で劣勢に。なんとかセヴィージャの猛攻をしのぎ、1-1のドローでタイムアップ。

ホームで積極的に攻撃を仕掛け続けるも悔しいドローのセヴィージャ。
アウェイのセルタは逆にセットプレーのみの失点に抑えた守備と、一瞬の隙を突いた攻撃で勝ち点1は上出来だ。


最後に

自分自身のアウトプットとして、この試合の戦術的な狙いなどを考察してみた。

セルタの守備はペナルティエリア幅で中央を固めるDFラインと、3トップにスペースを与えない中盤の4枚のブロックがコンパクトに保たれていた。
これによりサイドの高い位置やセンターライン付近は割と自由に使わせていたが、ある程度はここからの攻撃は許容しており、最後の場面で人数をかけて守る形にしていた。相手の2列目のバネガとジョルダンを高い位置で働かせないというメリットもあったように思う。


一方セヴィージャの攻撃は、空いたサイドにSBを走りこませ執拗にクロスを入れ続けた。これで得点を取れていれば問題はないのだが、結果としてとれていないので問題になる。
まず、セルタの守備が許容しておりプレッシャーがかからず自由に持てるエリアがあるが、余裕がある中で攻撃のパターンがサイドからのクロス一辺倒では物足りなさを感じる。
サイドを使ってもセルタのDFラインが間延びしないのならば、クロスだけではなく、2、3人の連携で相手を動かすような工夫が欲しかった。
それが後半5分、SBのレギロンとFWのノリートのワンツーの場面である。
これもすぐにセルタの守備陣形によって対応させれるが、前半の早い時間帯でこれが出来ると、クーリングタイムやハーフタイムに新たなパターンをチームで共有できたのではないかと思う。


始まったばかりのシーズン、ロペテギ新監督のセヴィージャは新メンバーが多数いると思えないくらいフィットしているので、あとは監督の手腕でどのような戦いをしていくのか楽しみである。
またセルタも攻撃的なメンバーを多く擁し守備に不安があるが、この試合のように辛抱強く守り抜けることが出来れば、上位を狙えるチームになるような期待感を持てた。

まだまだ始まったばかり、両チームの動向を楽しみましょう!!


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