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公園三景

糸の切れた凧が、高い枝の先に引っかかっていた。

木登り名人でも歯が立たないような枝の先っちょで、ゆらりと風に吹かれていた。赤い尻尾がひらひらとはためき、解いたばかりの制服のリボンのようだった。

3月も終わるというのに、凧なんて。一体いつからそこにあるのか。再び空を舞うこともなければ、持ち主の元に帰ることもできないのに、妙に清々しい面持ちで、またそよそよと揺れていた。

* * *

昔よく訪れた野っ原のような公園で、なかなか珍しい光景を見た。

ジャグリングの練習をしている、大道芸人と思わしき青年。たしかディアボロというのだったか。砂時計のように真ん中がくびれたコマを、手元のロープを巧みに操って、1つ、2つと宙へ放っていく。

きっと晴れ舞台の日にはそれらしい衣装を纏うのだろうけど、この日の青年は完全オフの出で立ちだった。襟のついたシャツに、スウェットというよりはトレーナーと呼びたくなる服をかっちり重ね着していて、何とも素朴な着こなしとシルエットに好感を持った。

イヤホンから流れる音楽に合わせて、黙々と練習を続ける彼には、小さな観客がいた。

小学生たちが、4つ、5つと高く放たれるコマを、地面に正座して見つめている。

ビビッドな赤と黄緑が、数メートル上空で自転して、公転する。

そんな様を、ちょっぴり口を開けたまま、彼らは小ぶりな頭で仰ぎ見ていた。

* * *

こんなご時世だからか、細かな禁止事項を設ける公園が増えた。

住宅街の狭い公園では、「ほかの利用者に注意。敷地の外にボールが飛び出さないように」という看板に釘を刺されたのか、若いお父さんが遠慮がちにサッカーボールを蹴っていた。

もう少し広い、遊具もない空き地のような公園には、いくらかのんびりとした雰囲気が漂っていた。掲げられているルールは「大きな音の出る花火はやめましょう」がせいぜいのようだった。

サッカーウェアの少年がボールと戯れ、中年のお父さんと、おばあちゃんらしき白髪のご婦人が和やかに見守っている。

と思いきや、おもむろに3人でパス回しを始めたので、驚いた。

老婦人は70代以上に見受けられたけど、なかなか見事な足さばきだった。土踏まずの辺りでしっかりとボールを受け、そのままのフォームで蹴り返す。安心と安定のインサイドキック。

「おばあちゃん。心臓、無理しないでね」と言われても、止まることなくボールを返していく。

親子三代でぐるぐると、芝生に形づくる春の大三角形。

背景にそびえ立つ縞模様の煙突が、なぜか普段より大きく、ちょっと誇らしげな様子に見えた。

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久世じゅん|gemini

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エッセイ・ことば(ミルク)

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