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【備忘録】INTERPRETERS

2021年5月29日~31日19:00~
ユニークポイント【INTERPRETERS】
構成・演出 山田裕幸

3日間3公演に愛染屋団員の小林とともに受付スタッフとして参加させていただきました。
本番前の通しと大楽を観劇させていただき、言葉のシャワーで溺れかけましたことをここに御報告致します(笑)

本当に凄かったの。
ザムザ オンザ ベッド(備忘録)も【体験】でしたが、こちらも対面の演劇ながら、【INTERPRETERSという体験】でした。

女性2名と男性1名のinterpreter(通訳者)が、とある国際会議の同時通訳をする。
という形の作品。どう体験だったか、と言いますと…膨大な引用を通訳者を演じる俳優を通じて浴びる体験ですね。
およそ45分間の作品中、俳優が【役として発する】言葉より、実在人物の過去の発言を引用した【通訳の言葉】が遥かに多い。なんならほとんど通訳の言葉。

23名の25話にも渡る引用。
演説をほぼ丸々引っぱっているものから、記者会見での一言、学校の校則、などなど。

テレビでいつか聞いたたくさんの言葉達が、発話者の主観が俳優の身体を通って濾過されて、テレビで聞いた時と違う色で降ってくる感覚。
俳優も、【発話者を演じる】のではなく、【通訳者として発語している】ので、俳優の主観も最低限しか含まれておらず、かつて澱んで聞こえた情報が、クリアな黒として聞こえたり、澱んでいたのは自分の耳だったかも、という気付きを得たりしました。

わたしは初めて触れた時からユニークポイントの作・演出を務める山田裕幸さんの紡ぐ言葉のファンで、同じ意味を伝えるとしても、わたしはその表現を思いつかない!でも、そっちの方がわたしの気持ちが含まれてる気がする!すげー!みたいな気持ちになることが多かったりする。それに、深刻な内容をシリアスになり過ぎない【日常的な日本語】で俳優が発話したりするところとかも好き。今回はそんな山田裕幸さんが【リアルワールドから引用】した【実在人物が発語した】言葉達のシャワーを浴びました。凄く勝手ながら、山田さんが観ているこの世の中の色が何となく分かったような気持ちになりましたし、山田さんがこれまで創ってきた作品の解像度が上がったような感覚を得ました。

世の中に溢れかえるたくさんの言説。
自分にとって薬になるのか毒になるのか。
それをしっかり考える時間を、取れてないなぁ。とか。
ただただ受け取るだけの日常に、1つのほんの小さな小石が投げ込まれて、大きな大きな波紋が拡がっていく気持ち。

俳優の皆さんも、【キャラクターを演じる】という【俳優としての心持ち】よりも【身体を他人の言葉が通過していく】様子を見せてくれている感じがして、本当に不思議な時間でした。

これは【お話を観る】演劇ではなく、【日常を省みる時間を与えてくれる】という【劇場を体験】する作品だと思います。
俳優もマスクをして、客席は半分になり、大声で笑ったりリアクションすることも無く、その必要もないのに、確かな高揚感を心に残す、そんな時間。

茨木のり子さんの詩『自分の感受性くらい』が刺さる。

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