「彼女」とのインタビューが「インサイト」とは何かを教えてくれた。

このnoteの目的
インサイトについて学んだことの整理、およびその共有→色々なマーケターの方がインサイトって面白いなって思っていただけたら幸いです。

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こんにちは。中村です。

前回のnoteで人は無意識に決断するということを書かせていただきました。このnoteも近いですが。個人的にマーケティングをする上でとても大事にしている「インサイト」についての学びについて少しまとめてみました。
いつも通り自分のメモのつもりで、でもお役に立てるように書いてみますので、よろしければ最後までお付き合いください。

そもそも「インサイト」って何?なんでマーケティング上必要と言われているの?

ネットで「インサイト」検索すると大体同じように定義がされています。キーワードとしては「消費者自身も気づいていない」「無意識」「購買意欲・消費行動の鍵」あたりでしょうか?

インサイトという言葉の辞書的な意味は、「洞察」「物事の本質を直観的につかむこと」などであるが、消費者インサイトという用語は一般に、「消費者自身も気づいていない隠れた動機やホンネ」というような意味合いで使われる。
「なぜ」を掘り下げると見えてくる消費者インサイトの活用法より
「インサイト」とは、直訳すると「洞察力、見識」「視野に入る」という意味。マーケティングにおける「インサイト」とは、相手の視点に立って相手のことを考えたときに相手がどのように思っているのかという視点のことを意味している。特に「インサイト」という言葉は、コンシューマ・インサイトといった「消費者の視点、心理」という意味合いで使用されることが多い。消費者の隠れたニーズや潜在的意識を消費行動に引き出すために、どのようにしたら良いのか?と考える際に用いられているのだ。
マーケティング用語として知っておきたい「インサイト」の基礎知識より


実際、P&G時代には氷塊の写真をよく見せられてました。
水上の部分は実は一部だけで水面下に大部分が隠れている。
同様に人に普通に聞いて答えてくれる部分ってこの絵でいう水上の部分だ毛で、何故を理解することが重要って教わりました。無意識下の部分は本人もわかっていないから投影法(いわゆる写真等を使ったメタファー等の手法)とかいっぱい学びました。直近では脳科学なんかも使って消費者理解していましたね。(この辺の手法のお話はまた別の機会でまとめてみたいです)
さすがConsumer is Bossの会社です。


マーケターとして大事なのは「肌感」

大先輩の伊東正明さんもおっしゃっていますが、P&Gではそのために非常に濃い密度で消費者の方に実際にお会いします。お宅訪問も無意識レベルを理解するための一つのやり方でよく使っていました。

私は、P&Gで洗濯洗剤に関する質的調査のために、800名以上の主婦の方にお会いし、120~130のお宅を訪問しました。この調査は、入社から3年半の間に行ったものですが、最後の方には、玄関を開けた瞬間に自社製品のユーザーかどうかわかるようになっていました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000111.000004729.html

私自身もヘアケアの時はほぼ毎週10人くらいお会いしていたんで、1年で数百人規模でしたね。最初は結構ちんぷんかんぷんだったんですが、だんだんわかってくるんですよね、肌感が出てくるというか。ヘアケアの場合はもちろん髪型や好きなファッション、当時は読んでいるファッション雑誌でかなりわかりましたが、実は結構靴とかカバンがポイントでした。インタビュー始まったら何よりもまず先に靴とカバンチェックしてましたねー。

当時はヘアケアカテゴリーのポートフォリオ戦略(カテゴリとしてのターゲットセグメンテーション)とかも担当していたので各ブランドの違いみるのも非常に楽しかったし、勉強になりました。1回量的調査で血液型とか見ているTV番組も聞いたのですが、あるブランドはA型の方が多く(しかも統計的有意差込み)見ている番組が当時流行っていた「あいのり」、別のブランドはO型が多く「恋のから騒ぎ」だった時は非常にいろんなことが一瞬で繋がったのを記憶しています笑。なぜあの新製品がダメだったとかあの競合さんのTVCMがうまくいったんだとか。何れにしても、うん、年バレますねw。

「肌感」って結構マーケターとしては大事な気がしますね(immersion)。後、色々なビジネス結果が「肌感」を通して繋がるっていう感覚(connect the dots)。いろんな肌感ありますが、データだけでは消費者・ユーザーの肌感まではわからないと思います。

後、お互いに影響してしまうフォーカスグループインタビュー(FGI)や、いわゆるアンケート調査だけではユーザー・消費者はわかったことにならないというのもかなりP&Gに学びました。FGIやアンケート調査は「インサイト」のためではなくあくまで既に持っている仮説の検証用なんですよね。もし今やってらっしゃってるのがその調査手法でリサーチって役に立たないなと思ってらっしゃったらまずはやり方を変えたほうがいいです。


そしてユーザーインタビューでの「彼女」との出会いが「インサイト」とは何かを教えてくれた。

そんなヘアケアで働いていた2006年のある日のことでした。毎週水曜日ルーティーンになっていたユーザーインタビューのために大阪のインタビュールームにいった時のことです。
その時はVidal Sassoon(下のパッケージ↓)のインタビューでした。
ターゲットは独身女性の方だったのでインタビューは夜が多く、大体2部構成で①19時ー20時半②15分休憩③20時45分ー22時15分、それから④チームの皆でインタビューの振り返りアクション考えて解散、みたいなスケジュールでした。



ビジネス状況はあまり良くなく、当時は花王さんからAsience、資生堂さんからTsubakiが新商品として投入され、黒髪・日本人用のヘアケアが売れていて、海外や外人のイメージが強かったVSにとってはとてもビジネスが苦しい時期でした。
そんな中毎週のようにコンセプトやパッケージ、TVCMについての調査をしていて、この日はいわゆる新商品のコンセプトテストでした。4ー6個くらいのコンセプトをお見せして実際にユーザーさんから反応を取る調査です。すごく深いインサイトを取る、というよりは反応を取り仮説を検証するという場面だったのでこの時はあえてFGIの手法を使っていました。

その日参加したのはVidal Sassoonのマーケティングチームから確か5−6人、それと代理店の方がビデオ会議で参加されてました。チームの半分くらいがターゲットに近い女性です。彼女たちとはよく帰りに当日あったユーザーやブランドについて車の中で話していました。代理店の方は確かアカウントとストプラの女性2名、あと男性1名だったと記憶しています。

私はこのブランドの消費者インサイトのリーダーだったので、その日のインタビューの調査設計、マーケティング上の仮説出し、実際のインタビュー(いわゆるモデレーター業)、そしてインタビューの振り返りとアクションを決めることがこのインタビューにおける役割でした。

当時は特に肌感つけるために基本は自分でモデレーターをするようにしていました。別に独身女性だからではないですよ笑。チームで交換して担当することもありましたが、私は実際のユーザーさんの反応を見て判断したかったのでなるべくインタビューに出る時は自分でモデレーターをするようにしていました。(おかげで今では人が喋るときに嘘をついてるかどうかやどれくらいの熱量があるのかがだいぶわかるようになってしまいました)

当日用意していたコンセプトは4本。今内容は細かく覚えていませんが、当時はロジカルに説得するルートが良いのか、それとも今でいうエモいコンセプトにするかが一つの論点だったのでその違うルートで用意していたのを覚えています。

1グループ目。4名の独身女性がいらっしゃいました。右に2名、左に2名座ってらっしゃいます。まずは靴とカバンをチェック。3名の方はいわゆるVSのユーザーの方でしたが、1名右奥にいらっしゃる女性は靴が少しスニーカー寄り、カバンを見てもあまりターゲットの方とはかぶりません。残り3名の方はまぁドンピシャ。

まずは自己紹介から入り、職業を聞いて今使っているブランドをお伺いする。その後各ブランドのイメージを簡単にとって、コンセプトを見せます。最初のコンセプト。2枚目、3枚目、4枚目。可もなく不可もなく。どれも反応はそこそこだけど必ずしも熱量感じない感じです。あ、答えはみなさん「多分買って見るだろう」だったんですけどね。その理由はバラバラ。特に右奥の方はまぁ予想通り好きなコンセプトとか理由が少し違う。もう少し論理的な感じ。やっぱりそうなりますよね。。でもなー、ターゲットには一応入っているんだよなー。

そんなこんなで無事終わり、「本日はありがとうございました」とご挨拶。皆様帰る準備をなさり一人、また一人と帰っていかれます。私は次のインタビューのために15分の休憩使って少し片付け。「インサイトはやっぱりFGIだと取れにくいけどまぁなんとなく仮説検証はできたかな」と思いながら席を立ち、仲間のいる控え室に行こうと部屋を出ようとしたときでした。

ドアを開けたらそこに一人の女性が立っていました。お互いに目を合わせ「あれ?」という表情。なんとなく知っている顔。。んー。。あっ!!、えっ!!?、ちょっと待て!!、マジで?????

元カノでした。

彼女はヘアケアの前に私が柔軟剤レノア担当だった時の2年以上前に付き合ってた方です。性格がおもしろキャラ&積極性の強い女性だったのですが、お互いに大阪ー神戸と少し離れていたのと、すれ違いがあり、どちらともなく疎遠になり別れていました。

元カノ「あれ?何してんの?」

私「いや、ユーザーリサーチがあってさー(軽くパニック中)」

元カノ「あー、レノア? 私次ヘアケアのリサーチなんだー」(彼女はヘアケアに移ったことを知らない)

私「あ、ああ、そうなんだ。そっかー。そうだよねー。レノアなんだよー。頑張ってねー」(支離滅裂)

元カノ「じゃーねー」 私「じゃーねー」

そして控え室に入る私。頭パニック。でもわかってる。次のインタビューは危険で棄権。「無理、絶対無理、インタビューなんかできない、代わってください!!!」と当時のチームメンバーに泣いて頼み込む。幸いチームメンバーは皆優しく、一人の方が代わってくれてインタビューをすることになりました。(今でも感謝してます、ありがとう!!)

これ嘘のような本当の話です。何百人下手すると4桁の方にインタビューさせていただきましたが、こんな経験はこの時だけです。


さて、本題に戻ります。インサイトとは何か。それはこの元カノによって教えてもらいました。この後何が起きたのか。想像ついてらっしゃる方も多いかもしれません。結論から言うと、彼女の選ぶコンセプトどころかその理由も全て答える前にわかったのです。

そりゃまぁそうかもしれません。だって言っても何年も一緒にいたし、彼女の好みわかってますし。喋り方もわかるし、考え方もわかる。肌感すごいあります。どうやればこのブランドのファンに彼女になってもらえるかだってわかります。

しかも面白かったのは、そのインタビュー後にほぼほぼのチームメンバー・代理店の方が「元カノさん左前に座ってらっしゃった方じゃないですか?」ってあててくださったんですよね。本人知らないのに私のことを知っていたらなんとなくでわかってくださったんですよね。

この経験は私にとってはターニングポイントになりました。

「インサイトって今のニーズを理解することではない。買う理由を聞くことでも買わない理由を聞くことでもない。無意識レベルまで理解する方法はいっぱいあるしそれは必要なステップである。でもそれより何より、インサイトの目的って、ユーザー・消費者の反応が予測ができるようになることである」

その感覚を伝えるために最後にもう一つ例を出して見ます。
皆様ご自身がよく知っている人にプレゼントをあげるときを思い浮かべてください。彼氏・彼女・奥様・旦那様もしかしたらお子様や親友の方かもしれません。質問です。そのプレゼント、本人に聞かないと選べないでしょうか?なんとなく欲しいものと欲しくないものわかりませんか?何かを上げた時の反応予測できませんか?それが私が行き着いたインサイトがわかるっていう状態です。そして直接聞いたものをあげるのではないからこそ、そこに驚きがあり(surprise)、それが喜び(Delight)につながるのだと思います。

もちろん簡単じゃないです。だからP&Gでは多くのデータがあるにもかかわらず、実際にユーザーに会うことを非常に重要視していたのです。だからP&Gを卒業したマーケターは消費者を第一に考えるのです。だからCMK(消費者市場戦略本部)なんて部署わざわざ独立組織で作ってるんです。全部を知ることはできないから選択と集中でビジネスにとって必要なものだけのインサイトを探すんです。(この部署何って思ったら是非下を見てみてください。最近は中途採用もしているみたいですのでご興味あれば是非。皆いい子たちですよー)


このnoteを読んで、皆様がマーケターとして、インフルエンサー/アンバサダーとして、データサイエンティストとして現実に戻った時、(ユーザー・ファン・消費者・読者の)インサイトもっと知りたいな、そのやり方ももっと知りたいなと思っていただければ幸いです。アイデア作るのにリサーチなんかいらない、って思われてた方が一人でも変わってくださると嬉しいです。

本日も長文を読んでいただきありがとうございました。
(追伸:今回はテストの一巻でちょっと文章のトーンを今までと変えてみました。コメントや反応いただけたら嬉しいです(^^) )

まとめ
インサイトとは?
消費者・ユーザー・ファン・読者の「なんとなく」がわかる肌感を身に付けることで、彼・彼女たちの反応を予測できるようになること。そのためには専門性が必要で一朝一夕でできるようなものではなく、日頃から消費者・ユーザー・ファン・読者ファーストでいることが重要。



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Junichi Nakamura

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コメント1件

最近、無意識(潜在意識、寝てるとか気絶している訳ではないので)について考えており、文章を書こうと思っております。こちらの書き込みも参考にさせていただければと思っております。
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