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たった一人の熱狂から関係人口は生まれる

移住した「定住人口」ではなく、観光客としての「交流人口」でもない、地域に関わる人々のことを関係人口といいます。総務省では関係人口を地域への新しい入り口と位置づけ、関係人口ポータルサイトも開設。少子高齢化の進む地域と関わる新しい人々が、地域づくりの担い手になるよう情報発信しています。

関係人口ポータルサイト(総務省)

国が注目し、全国の地域でも重視されている関係人口。その考え方やありかたについてお伝えします。

余白がある町

私が代表を務める宮崎県新富町の地域商社「こゆ財団」では、さまざまなイベントや講座、視察研修などを実施。新富町に新しい関係を築いたくれる方が、2017年の設立から2年間でのべ1万人を超えました。

関係人口をどうカウントするかは、地域によってさまざまであり、この数字は絶対的な指標というわけではありません。ただ、人口1万7,000人の町に対して、これだけの新しい関わりが生まれていることは事実です。

地域づくりの情報誌『月刊ソトコト』編集長の指出一正さんも、これからの地域の未来にとって大切だということを発信されています。関係人口が増加する背景には何があるのか。新富町を事例に詳しく見ていきましょう。

大切にしたい2つのこと

新富町は離島や山間地域などとは異なり、県庁所在地である宮崎市の中心部から車で30分程度とアクセスのよい立地にあります。一方、目立った観光地はなく、目的地にはなりにくい状況が続いていました。

ここに2年間で1万人を越す関係人口が生まれた要因としては、2つのことが考えられます。

①ファンづくり

新富町では、20174月に設立したこゆ財団が、町ににぎわいの場を作ろうと毎月第三日曜の朝市開催を企画。2017年5月からスタートし、現在3年目に入っています。農家さんを主役にしたファーマーズマーケットというコンセプトを、半年後に飲食店を軸としたよろず市に転向。毎月異なる趣旨の企画を投入することで、町内外にリピートされるファンが生まれました。

こゆ朝市

②継続しているということ

当初から会場としたかった商店街ではスタートできなかったり、出店者が思うように集まらなかったり、他のイベントと日程が重なってお客様が集まらなかったりなど、継続が危ぶまれる事態は幾度もありました。

単発のイベントをやって終わり、という地域が多い中、それでも2年間続けてきたことが、新たな関係人口を創出する何よりの原動力になっています。

イノベーションは、1人の熱狂から生まれる

起業家のデレク・シヴァーズがTEDで行ったプレゼンテーション「社会運動はたった一人の熱狂から生まれる」をご覧になったことはありますか?

「社会運動はたった一人の熱狂から生まれる」

わずか2分ほどのこの動画で、一人の熱狂からムーブメントが生まれること、熱狂する一人をリーダーに変えるのは最初のフォロワーであること、多くの人が加わるほどリスクは小さくなることなどをデレクが伝えてくれています。とても示唆に富んだ内容です。

新富町の「こゆ朝市」も、一人の熱狂からムーブメントが起きたと言えるでしょう。その一人とは、私たちの仲間である鈴木伸吾さんです。新富町に生まれ育った彼は、自分の町をよりよくすることをミッションとし、閑散としていた商店街がにぎわうイメージを重ねて見ていました。

彼の熱狂は、まず出店者さんに伝播していきました。それは次にお客様に、さらに県外から来る人にまで伝播。今では東京から上場企業の社員が企業研修に訪れるまでになっています。

関係人口というものは、移住でもなく観光でもない、すごく難しい人口だと思います。それだけに、熱狂した誰かがいないとうまくいきません。
新富町の関係人口は、「こゆ朝市」を通じて町をよりよくしたいと踊り始めた、鈴木さんの熱狂から生まれていると思います。

あの北極星を目指そう

「ではどうすれば関係人口が増えるのでしょうか?」「わが町も朝市を始めればいいでしょうか?」という問いもたくさんいただきます。答えはノーです。

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