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"作品賞"編:第96回 米アカデミー賞 大予想!!

3月11日(日本時間)に行われる米アカデミー賞。

最高峰の映画の祭典の開催まで、残り2日
そんななかで今回は、オスカー主要6部門の中の一つである作品賞の予想をしたいと思います!

各部門のノミネーション一覧はこちら。

本命:『オッペンハイマー』

大本命は、『オッペンハイマー』。というか、間違いないと思います。

"原爆の父"ロバート・オッペンハイマーの生涯を描く映画。興行収入の面でも、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)を超え、歴代伝記映画史上No.1を記録しました。

芸術性・社会性・興行収入を鑑みた娯楽性…すべてに置いて高い水準をクリアしており、オスカーにとって文句なしの作品です。

その他、助演男優賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞・脚色賞・助演女優賞・作曲賞・美術賞・編集賞・サウンド賞・撮影賞・主演男優賞・監督賞の計13部門にノミネート。助演男優賞・編集賞・サウンド賞・撮影賞・主演男優賞・監督賞は最有力で、おそらく全て獲るでしょう。微妙なのは作曲賞と脚色賞。作曲賞は『哀れなるものたち』と、脚色賞は『アメリカン・フィクション』と『関心領域』との競合になると思います。

対抗:『落下の解剖学』

今回のアカデミー賞は、正直『オッペンハイマー』が頭1つどころか、2つや3つ抜きんでているので、他の作品を検証する必要がなさそうなのですが…強いて私が次点に挙げるとすれば、『落下の解剖学』です。

昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。突然に怪死した夫の殺人容疑で起訴された妻、そしてその裁判を見守る息子。裁判が進むにつれて明らかになるのは「他殺か?自殺か?」ではなく、隠したかった夫婦の秘密…。

空白の多くも、観客を引き込む物語の圧倒的な構成力は素晴らしかったです。

その他、脚本賞・編集賞・主演女優賞・監督賞の計4部門にノミネート。他のノミニーも強いですが、おそらく脚本賞は獲ると思います。また万が一に作品賞の受賞となれば、『パラサイト 半地下の家族』(2019)以来史上4例目となるパルムドールとアカデミー作品賞の2冠となります。

対抗:『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

続いては、マーティン・スコセッシ監督作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

FBI誕生のきっかけとなった"オセージ郡インディアン連続怪死事件"を描いた作品。マーティン・スコセッシ×レオナルド・ディカプリオ×ロバート・デ・ニーロという夢のトリオで、"アメリカ 負の歴史"を紐解きました。

助演男優賞・衣装デザイン賞・歌曲賞・作曲賞・美術賞・編集賞・撮影賞・主演女優賞・監督賞にもノミネート。リリー・グラッドストーンが主演女優賞を受賞することが期待されますが、それ以外の受賞はないと思います。あと、脚色賞にノミネートされてないんですね…。

単穴:『哀れなるものたち』

胎児の脳により蘇った女性の大河物語『哀れなるものたち』

絵画に飛び込んだような奇想天外な世界で、性と生に目覚めた女性の自立を描いた本作は、今回のノミネート作品で一番の芸術作品。芸術性で言えば圧倒的ですが、それゆえに好き嫌いははっきり分かれる作風でもあります。

助演男優賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞・脚色賞・作曲賞・美術賞・編集賞・撮影賞・主演女優賞・監督賞にもノミネート。メイクアップ&ヘアスタイリング賞は最有力。衣装デザイン賞・美術賞は『バービー』と競合ですが、おそらくこっちの方が優勢。作曲賞と主演女優賞は有力ですが、受賞は微妙です。

単穴:『バービー』

昨年の全世界興行収入No.1作品『バービー』。個人的には一番推したい作品です。

バービー人形から女性の自立を描いた物語。『哀れなるものたち』よりもポップに、そしてより馬鹿馬鹿しくフェミニズムを描いた娯楽映画です。ただ如何せん作風が軽すぎるので、オスカーには好かれないかもしれないです。

助演男優賞・衣装デザイン賞・脚色賞・助演女優賞・歌曲賞(”I'M JUST KEN”/”WHAT WAS I MADE FOR?”)・美術賞の6部門7ノミネーションを獲得。確実なのは、歌曲賞にノミネートされているビリー・アイリッシュの”WHAT WAS I MADE FOR?”。グラミー最優秀楽曲賞も獲ってますね。その他、衣装デザイン賞と美術賞も有力ですが、前哨戦では『哀れなるものたち』にことごとく獲られているだけに一矢報いて欲しいです…。

単穴:『関心領域』

昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールの次点であるグランプリを獲得した『関心領域』

アウシュヴィッツ収容所の隣に住む”幸せな”家族の物語。日本では5月24日より劇場公開されます。

アメリカ・イギリス・ポーランド製作でありながら、ドイツ語で作られたためにイギリス代表として出品された本作。国際長編映画賞にイギリス代表という枠があったことがこと自体を初めて知りましたが、なんだか不思議なノミネートですよね。

その国際長編映画賞の受賞は確実。『パラサイト半地下の家族』(2019)、『ドライブ・マイ・カー』(2021)、『西部戦線異状なし』(2022)など、最近は作品賞にもノミネートされている国際長編映画が受賞することが慣例化してきています。今回のイギリス代表や『落下の解剖学』がノミネートされていないことなど、国際長編映画部門の意義が近年おかしくなってきているような気がするのは私だけでしょうか?

その他、脚色賞・サウンド賞・監督賞にもノミネートされています。

穴:『アメリカン・フィクション』

※日本語字幕のないトレーラーです。

日本では2月27日よりAmazonプライムで配信されている『アメリカン・フィクション』

黒人のステレオタイプから脱却しようとする小説家の物語。しかしまったく小説が売れないために、ステレオタイプてんこ盛りの小説を書いたらバカ売れするという、現代社会への皮肉が詰まりに詰まった作品です。

助演男優賞・脚色賞・作曲賞・主演男優賞にもノミネート。個人的には大好物の作品なだけに頑張ってほしいところですが、各部門で他のノミニーが強すぎる…。

穴:『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

※日本語字幕のないトレーラーです。

6月21日に日本公開が決まり、つい先日ようやく正式な邦題も決まりました。『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』がノミネートです。

成績が悪すぎて、冬休みの大学寮に教授とともに幽閉される学生の物語。『ファミリー・ツリー』(2011)や『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)で知られるアレクサンダー・ペイン監督が新たに描くヒューマン・コメディです。

脚本賞・助演女優賞・編集賞・主演男優賞にもノミネート。助演女優賞は確実。主演男優賞もワンチャンあるかも…。

大穴:『パスト ライブス/再会』

いよいよ4月5日から日本公開が始まる『パスト ライブス/再会』

初恋の人との、ニューヨークでの再会。運命を変える7日間のラブストーリーが描かれます。

脚本賞にもノミネートされており、『落下の解剖学』と競合です。昨年の『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2022)もそうでしたが、ノミネーションが少ない作品が脚本賞や脚色賞を獲るケースが意外と多いです。

大穴:『マエストロ その音楽と愛と』

今回唯一となったNetflixオリジナル映画『マエストロ その音楽と愛と』

ブラッドリー・クーパー製作・監督・主演で、伝説の指揮者レナード・バーンスタインの生涯を描きました。ちなみにブラッドリー・クーパーがプロデューサーとして作品賞にノミネートされるのは、今回で5回目 (『アメリカン・スナイパー』,『アリー/ スター誕生』,『ジョーカー』,『ナイトメア・アリー』,本作)です。

メイクアップ&ヘアスタイリング賞・脚本賞・サウンド賞・撮影賞・主演男優賞・主演女優賞にもノミネート。良い作品ですが、どの部門でも受賞は厳しいと思います。ちなみにメイクアップ&ヘアスタイリング賞でノミネートされているのは、日本出身のカズ・ヒロで、『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017)と『スキャンダル』(2019)でオスカーをすでに2回獲っている方です。

前哨戦の結果

●ゴールデングローブ賞
⇒ドラマ部門
『オッペンハイマー』
⇒ミュージカル・コメディ部門
『哀れなるものたち』
⇒非英語作品賞
『落下の解剖学』


●全米映画俳優組合賞(SAG Awards)
キャスト賞
『オッペンハイマー』

●英国アカデミー賞(BAFTA)
⇒作品賞
『オッペンハイマー』
⇒英国作品賞
『関心領域』
⇒非英語作品賞 
『関心領域』

『オッペンハイマー』が前哨戦で総ナメしているので、確実だと思います。ただ作品賞は特有の加点方式なので、番狂わせが起きる可能性はなきにしもあらず・・・・・・・・です。しかし、それでも今回のアカデミー賞で『オッペンハイマー』を1位ないしは上位に選ばないっていうのは、よっぽどのひねくれものだと思うので、たぶんそのまま『オッペンハイマー』で行くと思います。


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