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「今日できないことができる明日」 ホオバル(株)取締役の新城健一さん

ホオバル(株)の取締役をはじめ、現在6つの企業の経営やプロジェクトに参画。
就職したことがなく、個人が個人名のまま社会にコミットする時代がくると約30年言い続け、未来的な働きかたを実践していらっしゃいます。
人と人との関わりの中から、新しい価値を生み出し、世の中に提案し続けている新城さんのお話を伺いました。

【新城健一さんプロフィール】
経歴
家庭用ゲームの設定資料集やノベライズ、ガイドブックを40冊以上上梓、累計部数120万部以上。能楽の国内外への普及、日本の地域産業プロダクトの海外展開、大手家電機器メーカー新製品などのメディア戦略やコンサルテーションなどを経て、情報サイト「AllAbout」起ち上げからナスダック上場まで、プロデューサーとして参画。
2008年日本でのiPhone3G発売を機に、ソフトバンク子会社としてAPPLIYA株式会社を設立、COO(最高執行責任者)就任。
非プログラマーがアプリ制作できる「APPLIYASTUDIO」の企画、サービス設計、開発マネジメント。
500タイトル以上のアプリをリリース。
現在の活動
2011年に株式会社ホオバル取締役に就任し、医療健康・育児・教育サービスなど、大手企業の新規事業開発において世界観設計、サービスデザインなど、協業やコンサルティングにて参画。
2015年より日経BP ICT研究所とともに、センサー×専門家・AI×介入サービスの出会いによるサービスの多様性爆発を生むためのコミュニティイベント「カンブリアナイト」主宰。
共同共創型スタートアップコミュニティ_ミスルトウ株式会社フェロー。
医療VRベンチャー_HoloEyes株式会社取締役兼CSO(最高営業責任者)。
音声感情解析_株式会社Empath Fantasista。
センサー×心理学_株式会社Sollation顧問。
AI時代の教育プロジェクト_東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェローなどを兼務。
著書に『「無料アプリ×広告」成功する24の法則』(アプリヤ共著、日経BP社)『「価値」を伝えるしくみのつくり方』(U-CAN社)など

今日できないことができる明日

記者 今までも、様々な企業やプロジェクトにコンサルタントやプロデューサーとして関わられ、現在は6つの会社やプロジェクトに参加している新城さんですが、このような活動を通して思い描いている夢やビジョンはどのようなものですか?

新城健一さん(以下、新城。敬称略) これはフォーマルな会社概要・ビジョンの中にあげているんですけど、「今日できないことが明日できる」っていうのがすごく大事だと思っています。
僕、離婚、再婚しているんですけど、前の結婚をやめたのは、本当に閉塞感っていう感じたったんですね。
今日できないことはきっとこれからもできないし、今日できることもいずれできなくなっていくんだろうって思ったんですよ。
「今できない、でもやってみたいな」は一生できないし、「今はなんかこのぐらいできるかな」っていうのは、きっといずれできなくなるかな、しかないんですよ。
これって、すごい閉塞感だと思うんですね。
その真逆にあるのが、「今日できないことが明日できる」だと思っていて。
今日できないは、たぶんできるようになるんじゃないかなって、すごい楽しいじゃないですか!
で、明日できるようになるためには、この3つがあれば何とかなるかな、と思っているのが、
自分ひとりでできないことだったら、誰かと手を組めばいいじゃん。
自分の能力でできないことがあったら、道具を使えばいいじゃん。
色々な人と話をしたり、色々なものを使いこなすためには学びも必要だし、自分の視点も上げてかないといけないので、個人も成長する、学んでいく。
これがあれば、たぶん常に、できないことをできる可能性は残されるじゃないかな。
そう思うとワクワクするので、この気持ちで死ぬまで行けたらいいですね。
これって個人も企業も結局そうで、規模の大小に関わらず、みんな当てはまると思っています。
自分自身もそうだし、みんなこうなったらいいなって思います。

記者 みんながこうなる未来が作れた時に、どんな社会になると思いますか?

新城 みんなすげー楽しんでいると思いますよ!
勝手に色々なことやってるんじゃないですか?
すごい楽しいね!って言いながら。
大人になりたくない、って言っている人はゼロになってるとおもいますよ。
だって、子供の方ができないこと一杯あるじゃないですか。
年齢的に行けないところがあったり、金銭的にもなかなかできないことがあったり、不自由ですよね。
だから、むしろ子供達には、「大人じゃなくて、残念でした!」って、「大人はすげー楽しいよ」っていうのを見せるのは、大人の責任だと思うんですね
「いいなあ。早く大人になりたいなあ」
こういうのがいいと思いますよね。

記者 理想の大人ですね。

色々な人たちを巻き込んで、未来を作っていく

記者 お仕事を通して、今までの一番の発見やターニングポイントって、どんなものだったのでしょうか?

新城 2008年から関わった、ソフトバンクの仕事だと思います。
その当時、iPhone日本発売のタイミングだったんですが、孫正義さんから「日本でiPhoneを普及させるプランを考えてこい」ってお題がありました。
プランを考えてプレゼンしたら、「面白いから会社にしろ」とソフトバンクの子会社を作る流れになり、そこでCOO(最高執行責任者。会社で事業運営に関する業務執行を統括する役員)を担当しました。
ただ、2008年2009年って、まだiPhoneが出たばっかりで、アップルストアの中ではほぼ有料アプリって売れない時期で、事業計画の1/10しか売上が立たなかったんですよ。
月に10本というリリースのノルマを達成させ、、結構頑張ってアプリを出していたと思ったんですけど、でも、売上は1/10なんですよ。
あるときの取締役会で、「なるほど。じゃあ、コスト据え置きで10倍出せばいい」みたいになって。
月100本出すのか、どうしたらいいんだろう??
その時考えたのは、今まではプログラム開発会社にアプリ制作をお願いしていたけど、プログラムは書けなくても、絵を描いたり音楽を作っている人たちがいるので、コンテンツを作っている人たちが自分のアプリを出せるようになれば、もっと広がるだろうということ。
テンプレートのプログラムを用意して、画像とかテキストをアップロードすると、自動的にアプリができるっていう仕組みを作ったんですね。
そうしたら、申込がバンバンあって。
仕事が終わって夜に帰って朝起きると、アプリが自動でできているっていう体制ができて、これ結構面白いなと。
その次に考えたのは、企画は考えられるけど、絵も描けないし、音楽も作れない人、プログラムも書けない人たち。
この人たちのアイディアがアプリにできる仕組みを作ってみたら、世界中から申し込みが殺到して、最終的には月に100本を達成することができました。
色々な人たちを巻き込んで作っていけば、こうやってモノって生まれるんですね!
こんな未来ができたらいいな、っていうのは、こうやって作っていけるんだなぁ!っていう面白さを知り、事業を作るということに興味を持ち始めました。

記者 みんなを巻き込んで未来を作っていくことが、仕事になっていくのですね!

相手の心の中でもなく、自分の心の中でもなく、間にこそ価値がある

記者 では、その発見やターニングポイントの背景には、どのようなものがあるのでしょうか?

新城 中学生時代、実は僕、いじめられてたんですよ。
両親もその当時、いろいろあって。
でも、学校や家庭以外に居場所があったのはよかった。
小学生からの夢が漫画家で、中学生の時は出版社に漫画を持ち込みしてたんですが、社会ともそこでつながっていたりしていたので。
学校の中だけじゃなく、世界があるなと思うと、自分の生きる場所っていうのがあるんですよね。
どこか一つのコミュニティにどっぷりではなく、多数のコミュニティで動いていたのは、そこが原点かもしれません。

記者 多数のコミュニティを持つことが、今のお仕事に具体的にどんな形でつながってるんですか?

新城 どこか一個のコミュニティにどっぷり入っていて、その中でなんかやろうっていうのではなく、色々な人と出会っていくなかで、価値は生まれていくと考えています。
相手の心の中でもなく、自分の心の中でもなく、間にこそ価値がある
自分がどう思うのか、とか、相手がどう思っているのかな、ではなく、ここ(自分と相手の間)にあるね、みたいな。
自分一人じゃないんです。
だから、色々な人の間にいろんな関係性があると、それぞれの中に価値が生まれていくので。

一見バラバラなものをつなぎ合わせて、新しい価値を生み出す

新城 世界の本質って、あると思ってるんですよ。
古今東西、あらゆる先人が求めているもの。
到達できないけど、でも、あるなと思ってるんですね。
一見全然つながらないものでも、抽象度を上げていくと、どっかで結び付く瞬間があるんですね。
それが、すごく楽しいんですよ!
たとえば、ウェラブルセンサーとかのプロジェクトに関わっていて、「センサーってどうあるべきか」という議論の時に、かつて関わっていた能楽普及のNPOで、能楽師の囃子方で笛方の重要無形文化財の方から聞いた話がヒントになって、そこで活きてきたりとか。
全然関係なく見えるんだけど、よく見たらつながるじゃん!みたいな。
距離が遠ければ遠いほど、ここの結びつきがものすごく面白かったりするので。
異質なものを組み合わせた時の、本質的な価値を共有しつつ、一見バラバラなものをつなぎ合わせて、そこに新しい価値を生み出すみたいなのも自分の原点になっているかもしれません。

こうなりたいを想い描いて、選び取っていくこと

記者 最後に、AIが活躍する時代に、求められるニーズとはどんなものでしょうか?

新城 こうなりたいって想い描くことじゃないですかね。
ある、グローバルに展開しているAIを提供しているベンチャーに関わっているデータサイエンスの専門家の方と話をさせていただいた時に、「偶然ってありますよね」って話で盛り上がったんですね。
予測されることじゃなくて、偶然ってあるじゃん、みたいな。
僕が再婚した時の状況を、機械学習的に予測をすると、うまくいかない確立が高かったろうと思うんです。
でも、これやりたいよね、やるっていうのは、すごい大事だと思います。
ある意味、失敗しますよって定量的にはじき出せるってことは、そこに因果がみえていて、こうゆう要素で失敗するリスクがある程度見えるってことですが、そのリスクをよけて、やりたいという可能性を広げていくみたいなのは、それはそれであり得ることだと思うんです。
こうなりたいを描き、そこに基づいて選び取るってことが大切ですよね。

記者 新城さん、今日は貴重な時間をいただき、お話しをありがとうございました!

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新城さんの活動、連絡については、こちら
↓↓↓
●株式会社ホオバル
https://www.horbal.jp/
●HoloEyes株式会社
https://holoeyes.jp/
●Cognitive Impact Communityミスルトウ
http://mistletoe.co/
●学芸大学こども未来研究所
https://www.codomode.org/
●株式会社Sollation
https://www.sollation.co.jp/
●株式会社Empath
https://webempath.com/jpn/
●Facebook
https://www.facebook.com/shinjo.kenichi
●COMEMO
https://comemo.io/user/198

【編集後記】
インタビューを担当しました、山田と大藤です。

新城さんが主宰されているカンブリアナイトで、ファシリテーションをされている姿を拝見した時の第一印象は、「すごく楽しそうに仕事をする素敵な人だなあ」でした。
お話しを伺う中で、その楽しさは、数々のお仕事やプロジェクトに一つ一つ向き合う中でつかんだ楽しさであり、その背景には、沢山のチャレンジや涙を伴った深みのある楽しさだということがわかりました。
今回は、本当にお忙しい合間を縫っての取材でしたが、記事には書ききれないほどのたくさんのエピソードや数々の経験から生み出された哲学に触れることができました。
新城さんの益々のご活躍を応援しています!
ありがとうございました。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


薬剤師×教育ベンチャー 子供の頃から、人の身体と心のつながりや仕組みに興味がありました。 インタビューを通して、相手の方の人生のエッセンスと出会うことや、それを多くの方と共有できることが嬉しいです。