環境を整えるということ

先日高知県の土佐町にある「あこ」で行われた座談会 下河原忠道 x 瀬戸昌宣 「環境を整えるということ」に参加してきました。

全く予備知識なく、以前からお会いしたかった瀬戸さんにお会いできるのも楽しみに、参加しようと決心したのですが、夕方から始まることと私の住んでいる南国市からとなると1時間弱はかかる。でも道のりも楽しもうと高速には乗らず下道で行きました。

土佐町までに向かう道は山道でしたがこれが正解!疲れた体に今の新緑は本当に気持ちよく、行くまでに少し疲れが癒えました。

さらに初めて入った「あこ」という場所。

窓際や壁側のカウンターテーブルには高校生たちが座り、勉強している。

参加者の中には小さい子供さん連れの方もいたり、アンケート用紙を小学生くらいの子供さんが手伝ってくれていました。

木のぬくもりが感じられる空間に、前方の3列くらいの席はアウトドアブランドのスノーピークのチェアが並べられていました。

なんともほっこりとした空気の流れる場所。

早速環境に影響されたところで、瀬戸さんと下河原さんのお話が始まりました。

下河原さんは自分のことを「起業家です」とおっしゃっていました。次から次へといろんなことをしてみたい。

もとは建築の会社でビジネスとして成功を収めたところ、認知症高齢者の施設をやってみませんかと依頼され、そこから福祉の先進国である北欧やいろんな場所に行き、介護の現場のことを学ばれ、施設を建てました。

その施設の在り方。長い間精神科病院ではたらいていた私が矛盾に感じていた部分を体現化した施設でした。

管理をしない環境づくり。その人ができることをできるだけやってもらう。作業療法士として環境のことを考え仕事をしていた私にとっては当たり前のことのようで、現場ではリスクマネジメントという言葉に代わり、「転倒させてはいけない」「誤嚥させてはいけない」とその人がやりたいことを見守ることが難しかった。管理が必要となる環境で何ができるだろうと模索し、環境は人が作るものでもあると、自分の在り方や、チームでできることを考えた。

仕事を辞めると決めた3年間は「嫌われてもいい」「仕事してないと思われてもいい」と本当に自分がいいと思えることだけに集中して、介護業務には入らず、ただただ対象者のそばに座る、話を聞くなど最低限のグループ活動だけをして作業らしい作業もせずその場で一緒に過ごすことをした。

すると、思っていたような反応は少なく(仕事してないと言われていたかもしれないけど、気にならなかった(笑))どちらかといえば私がしていることに関心を寄せてくれる職員さんが増え、一緒に考えてくれたり、協力してくれる人、看護師さん同士のジャッジし合いの中でも、私に相談してくれる方がいたり。最終的には精神科医療で問題となる身体拘束について、対象者の方も働く職員にとっても人がどう生きたいかを考え、できるだけ外す方向に持っていけるように、ドクターや病院側も一緒に考えてくれるようになったり。

自分ひとりの力ではどうにもならなかったことが、自分の在り方を変えることで本当に変化して、涙が出るほどうれしかったことを思い出した。

医療職の人たちもみんな自分にできることをやろうとしています。でも頑張りすぎてしまい、できないことにばかり目が向いてしまい、やろうと思うことが進まない。疲弊して新しい発想が浮かばず、現状をやり過ごすことになりがちです。

新しいことを始めるにはやはり、熱意と常識を覆す発想。それはやっぱり、全く違う異業種の発想や、今まで当たり前と思ってきたことを疑うこと。

そしてやっぱり、自分自身がほんとうにやりたいこと、やりたくないことにきづくこと。

銀木犀で生活をしている高齢者や周りの地域の人たちのあの笑顔を見たら、ひとは自分のやりたいを叶えたとき、本当にしあわせであんな笑顔を見せるんじゃないかなと思わされました。