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FUJI & SUN'22。

2022年5月14日(土)・15日(日)

静岡県富士市「富士山こどもの国」で、「FUJI & SUN'22」。

今年で3回目の開催となる野外フェス「FUJI & SUN」に初めて行ってきた。キャンプフェスに行くのは、2020年9月の「ハイライフ八ヶ岳2020」以来なので、1年8ヶ月ぶり。しかも初めて行くフェスということもあって楽しみにしていたのだが、数日前に天気予報を見ると開催日の土日ともに雨降りマーク。特に土曜は降水確率100%で、それはきついな、大雨降るなかでのテント設営は厳しいなと、だいぶ不安にもなっていたのだった。

がしかし、結果的には、2日目の最後に降られただけ。土曜の朝起きたときには降っていたが、予定よりゆっくりめに家を出て、14時過ぎに会場に着いたときにはもう雨はやんでいた。現地で道案内してくれたスタッフさんによれば、前日(金曜)は嵐のような状態で、夜通しかかったステージ設営が本当に大変だったとか。一時は中止にするべきか、という声もあがったらしい。当日の朝もけっこうな豪雨だったらしく、その影響で開場時間が1時間遅れたほどだ。自分ら(僕と妻)は早い時間のアクトを観ることはできなかったが、降りやんだ時間に会場に入って、濡れることなくテントを立てられたのはラッキーだった。ステージ設営のスタッフの方々には感謝の言葉を送りたい。

去年などはフェスに対する世の中の風当たりがずいぶん厳しかったりもしたが、あれから時間が経ち、一時期に比べれば感染拡大の状況の深刻さもだいぶ和らぎ、人々はマスクをしてライブを楽しむことにも慣れた。この週末は「FUJI & SUN'22」のほかにも秩父で「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL」というジャズフェスが開催され、ようやく日本にもフェスが戻ってきたという感覚がある。去年のフジロックやスーパーソニックは、まだ参加者たちに不安が残り、恐る恐るという感じで過ごしていたものだが、今はマスクをちゃんと着用して、歓声あげたり騒いだりせず、決められたルールを守って楽しめば全然OKというムードになっている。コロナ禍におけるフェスの楽しみ方がだいぶ定着してきたという印象だ。

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今回の「FUJI & SUN'22」でもマスク着用が徹底され、ステージ前のエリアはソーシャルディスタンスを守るべく一定の距離で立ち位置を示す印が埋められてあったが、客たちはみんなそれをストレスに感じることなく守り、笑顔でライブを楽しんでいた。ロックフェスに比べると10代20代の若者が少なく、そもそも大声を出して騒ぐような客層じゃなかったこともあるが、それにしても会場内は終始あたたか&和やかな雰囲気でよかった。自分がよく行くフェスと比べると、小さな子供たちを連れた家族が多かったのも印象的だった。会場の「富士山こどもの国」内には馬や羊やウサギと触れ合えるところがあり、「子供たちが遊びながら生命の貴さや自然の豊かさを学び、夢や冒険心を育むことができる」というテーマを持つゆえ、始めから子供、家族に優しい会場なのだ。

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いいライブもいろいろあった。が、それにも増して今回僕にとって印象的だったのは、たくさんの小さな子供たちが伸び伸び生き生きと過ごしていたことだった。傾斜のある芝生を数人でゴロゴロと下まで転がったり。しゃぼん玉を追いかけて駆けまわったり。ステージの音に合わせて跳ねたり踊ったり。とりわけ忘れられないのが、どんぐりずのライブのときに、横の高台で音に合わせて自由に踊っていた小学生低学年くらいの男の子の姿。見ていてニッコリしてしまったし、なんというか希望そのものだなと思ったりもしたのだった。

また、強風が吹いたり、霧が出たり、太陽が照ったり。シャツでも過ごせるくらいあたたかくなった時間も土曜日にはあったし、重ね着しないと寒くていられない時間もあった。そのように天候と気温が刻一刻と変化する自然のなかで、大好きな音楽が鳴っている。それはやはり大きな喜びを実感できることだった。わけても、やっぱり富士山の存在。日曜日には顔を出してくれなかったが、土曜日の夕方近くに晴れ渡り、すぐそばにその雄大な姿がクッキリ見えたときには気持ちがあがった。朝霧ジャムで見る富士山よりも近くて大きかった。見惚れ、そしてスマホでバシャバシャ写真を撮った。来れてよかったと心底思った。

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14日(土曜)に観たアクトは以下の通り。

(テント設営しながら音だけ)ROTH BART BARON→OLAibi×U-zhaan+大伴良英→フジファブリック(後半数曲)→KIRINJI→青葉市子→渡辺貞夫グループ。

OLAibi×U-zhaan+大伴良英は、即興演奏の楽しさと凄さ、スリルと爆発が混ざっていて惹きつけられた。「あまちゃん」のオープニングテーマなんかもゆるく演奏してくれて楽しかった。

前のほうでしっかり観たKIRINJIは、堀込高樹(vo&g)、千ヶ崎学(b)、シンリズム(g)、So Kanno(from BREIMEN)(dr)、宮川純(Keys)、Maika Loubté (synthe&vo)という布陣。シンガー・ソングライターでもあるMaika Loubtéさんの明るさと歌声のよさに見惚れた&聴き惚れた。

珍しく鍵盤も弾きながら歌った青葉市子さんは、MOON STAGEにぴったり。ちょうど月が出ていて、「おぼろ月がきれいです」とも。また、「こうしてたくさんの人が集まってくれる前で演奏するのが自分の生命線。またこういう場所で歌えるようになってよかった」というようなことも。まさしく実感だろう。

広いSUN STAGEのトリは渡辺貞夫グループ。大昔にライブ・アンダー・ザ・スカイだったかで観たことがあったが、自分が観るのはそれ以来数十年ぶりだったし、しかもこういうフェスで観れることがまず貴重。なんとも懐かしい70年代(または80年代)のトロピカルな曲を多めに演奏し、若かった自分の記憶の景色がよみがえった。グループの演奏はもう素晴らしく(特にパーカッションが凄かった)、いい曲に古いも新しいもないよなぁと、聴きながら思った。ラストで「イマジン」を演奏するあたりには今のナベサダさんの願いを感じたりも。ところで今おいくつなんだろう?とふと思い、ネットで調べてみて驚いた。御年89歳!   それであの演奏っぷりとは凄いなぁ。

テントに戻って、赤ワインやらをぐびぐび。いいライブのあとにキャンプで呑むお酒は最高だ。ってな感じで、ちょっと飲みすぎたが。

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15日(日曜)に観たアクトは以下の通り。

AJATE→踊ってばかりの国(前半数曲)→Hana Hope(後半数曲)→んoon(中盤数曲)→GEZAN→どんぐりず→スチャダラパー→奥田民生(初めの2曲)。

STONE STAGEで初めて観たHana Hope。控えめながらも華があるし、森の妖精のような雰囲気もあった。癒しの成分を含んだ歌声もよく、空と緑にすっと溶け込んでいた。小林うてなさんのスティールパンの音色との相性も実によかった。

MOON STAGEでの、んoonも初めて観た。けっこうな驚き。複雑な変拍子をラクラクと刻むリズム隊のテクが凄い。そこだけ取ればプログレのようだ。が、ヴォーカルのJCの歌はネオソウル感覚。そしてメンバーにはハーピストもいる。珍しい。かなりユニークなメンバー構成であり音構成。ハイエイタイス・カイヨーテあたりに通じるようでもあり、でもなんならもっと個性の強いバンドとも言えるかも。

GEZAN。昨年のフジロック3日間のベストアクトに僕は挙げたが、先頃の日比谷野音ワンマンには行けなかったので、その思いも乗っけながらステージ前のほうで登場を待った。サウンドチェックの段階からもう引き込まれた。そして本番。圧巻だった。「FUJI & SUN!  GEZAN、優勝しに来ました!」と出て来るなりマヒトが叫んだが、実際のところ圧勝だった。とりわけ前半のトライバルでカオティックな展開には理性が吹っ飛んだ。後半に演奏された新しいダンスミュージックナンバーもよかった。また、途中、んoonのJCが呼ばれてステージに。少し意外な交友関係。

去年のフジがデビューとなった若きベーシスト、ヤクモア(19歳!)の、弾いてるときの顔つきがよかった(ちょっとアベフトシを想起させなくもない感じ)。彼はベースだけでなく、途中でなんとディジュリドゥも吹いた。喋る声はちょっと可愛くて、ベース弾いてるときの表情とのギャップもまたいい。彼の加入は間違いなくバンドに新たな色を足した、という意味でとてもよかったと思う。夕方、会場を歩いている彼にたまたま会ったので声をかけたのだが、少し話してますます好感を抱いた。

GEZANを観終えてから、急いでSTONE STAGEへ。大好きなどんぐりず。STONE STAGEでは一番の集客で、入場規制もかかったようだ。GEZANが全身全霊である故のパワーだとしたら、どんぐりずはそれとは真反対のアプローチの仕方で、いい具合に力が抜けている。が、センス抜群でめちゃめちゃお洒落。いい塩梅の力の抜け方ながらも、途中からどんどんあげて、一回チルって、またあげて。という運びがまた上手い。先にも書いたが、横の高台で小さな子供たちが自由に踊っていたのも印象的だった。子供にも好かれるキャラってことだろう。

スチャダラパー。何度もフェスで観てきたが、またしても強く思う。フェスでの限られた時間でどうサービスして何を見せるか。曲の選び方と出すタイミング、全体の構成が本当にうまい。超プロフェッショナル。これで楽しくならないわけがない。飽きない。飽きさせない。長く続くはずだよなと、観る度に必ず思う。

スチャが終わった段階でテントを片付け、最後に奥田民生を観て帰ろう、と思っていたら、雨がぽつぽつ。で、民生登場。「雨降りでも気にしない。富士山見えなくても気にしない」と「マシマロ」を歌いだしたのはいいが、次の「恋のかけら」あたりで本降りに。そして一気に雨脚が強くなる。もう少し観ていたかったが、こりゃダメだと、慌てて出口へ向かった。雨男め。まあでもしょうがない。これもフェス。

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とまあ、そんな2日間。GEZANとどんぐりずは最高だったし、レジェンド渡辺貞夫さんも久しぶりに観れたし。加えて自分にとっては、新しい才能に出会えたのも大きかった。例えばKIRINJIのMaika Loubtéさん。Hana Hopeさん。んoonのJCさん。音源チェックだけでは気づけなかった音楽と才能の個性に気づくこと、出会うことができるのが、僕にとってはフェスのよさでもある。故にやっぱりフェスはなくてはならないもの。NO FESTIVAL, NO LIFE。

次はFFKTだ。

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